2011/11/30  23:24 | 投稿者: minmax

[国王の真意]
魔法力テストの結果に魔女たちは、一抹の不安を覚えた。
成績の良かったものは、その能力を武器に恐ろしいことをさせられるのではないか。
成績の悪かったものは、ひどい仕打ちを受けるのではないか。
帰るあてのない彼女たちにはそんな不安が頭をよぎった。
成績発表に立ち会った国王が、魔女たちに呼びかけた。
「みんな、御苦労であった」
国王の声を聞くのはこれが初めてであった。
濁りのない澄んだ声が響きわたった。
彼女たちは深々と頭を下げた。
「今回のテストは、みんな合格とする。したがってこのまま城に残り仕えてもらいたい。おまえたちは、これまで魔女と呼ばれさまざまな苦労をしてきたと思う。ここにいれば、平穏な暮らしが保証されよう。今回、魔法力のテストを行ったが、それはお前たちの実力を測るというより、本当に魔法力を持っているのか確かめるためであり、魔女としての評価のためではない。それに、魔法力を十分にコントロールできていないことも分かった」
魔女たちは、国王の若々しく、凛とした顔をじっと見つめながら聞いていた。
国王は、ゆっくり静かに続けた。
「ここで生きていくうえで、守ってもらいたいことがある。
それは、魔法を使ってはならないということだ。
今、この平穏な国には、魔法の力を使ってまで守らなければならないものはない。
私が使うように指示しない限りその能力を使うことは許さない。
皆は、これまで魔法の力で阻害されてきたと思う。
魔法は人間には必要ない能力だ。
魔法を使わないで城の中の与えられた用務をこなしてもらいたい」
魔女たちは、驚いた。
お城に呼ばれたのは、魔法を使って城のために何かをやるのだと皆が思っていたからである。彼女たちは、ようやく国王が考えていたことが分かったのだ。国王は、魔女と呼ばれてつらい思いをしてきた彼女たちを助けたかっただけだということが。そして、両親も娘がお城に仕えることになることによって、周囲から穿った目で見られることがなくなることも考慮していたということが。

翌日からは、彼女たちは、普通の女として、城の掃除、洗濯、料理、着物の仕立てなどの職を与えられた。
ヨウは主に掃除をまかなうこととなった。
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2011/11/29  21:14 | 投稿者: minmax

[魔法力テスト]
国王は、集まった魔女たちに魔法のテストを行った。魔女以外のものが入り込んでいないか確認するつもりであった。
テストは、3つの方法で行われた。
一つ目は、予知する力
二つ目は、手を触れないで物を動かす力
三つ目は、物を透視する力
を試すためであった。
彼女たちの能力には差が大きかった。
また、魔女といっても好んでその能力を使うものは一人もおらず、自分の本当の力を知らない者ばかりであり、なにより、人にはない自分の能力が嫌いだった。
国王が用意したそれぞれのテストは極めて単純な方法で行われた。

一つ目の予知する力のテストがまず行われた。
使われたのは、縦横約4メートルの大きな板に10万本くぎを規則的に打ち込んだもので、その板は、斜めに立てかけてあり、板の下の方には700の記号が書かれていた。
テストは、斜めに立てかけられた板の上から黄金の玉を落とし、板の下の700の記号のうちどの記号に落ちるか予測するというものであった。くぎは寸分の狂いなく一定の規則により打ち込まれており、玉の軌道を予測することは、ほとんど不可能であった。
試しに、大臣が100回玉を落としてみたが、大臣が予想したところに落ちることは全くなかった。
このテストは、一人10回試された。
その結果、すべて的中させたものが4人おり、その一人にヨウがいた。
ほかの者も、7回的中が5人いるなど、みな3回は的中させた。

二つ目の手を触れずに物を動かすテストは、重さの違うものを横に並べておいて、どのくらいの重さの物を触れずに押し動かせるかというものであった。
このテストは、かなり体力というか魔法力を必要とするようで、気力を使い果たし倒れる者もでた。
このテストでは、一気にすべての物を動かしてしまう者も数人いて、中にはすべての物を空中に1分間浮かせて、その後力尽きて気を失う者もいた。
ヨウには真ん中にあるおよそ1キロの重さの物を動かすので精いっぱいであった。

三つ目の透視するテストは、お城の最上階から金塊を保管しておく地下室にある文字を読み取るという方法で行われた。
このテストの結果は一人を除いて良くなかった。
最上階から地下室までの距離はおよそ50メートルあった。
地下室には10種類の記号が大小さまざまな大きさで書かれていた。その記号を最上階にいる魔女が読み取って紙に書くというものであった。
記号の大きさはさまざまだったが、大きな記号ほど読み取れるというものではなかった。
小さな記号を読み取れても、大きなものは間違えるという者が多かった。
ヨウを含む5人の魔女は全く読み取れなかった。
ただ一人全部読み取れたのは、最年長の25歳のレミだった。
レミによれば、距離や大きさは関係ないとのことであった。
レミは、このお城に来てからもいつも、300キロ離れた家族の様子をみているという。
しかし、この能力は彼女にとって時には苦痛であった。人の苦しんでいる姿も見えてしまうからである。このため、いつもは、片目をつむっていることが多いという。

国王の立会のもと、三つのテストが終わり、成績が発表された。
結果として、全く魔女の能力を持っていない者はいなかった。
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2011/11/28  23:11 | 投稿者: minmax

[お城に集まった魔女たち]
島に魔女は何人いたのか定かではないが、おふれが出されてから、ひと月半後、お城には15人の魔女が集まった。
いずれも、若く、年齢は15歳から25歳で聡明な顔立ちの女性が多かったが、身なりは、ひどいものであった。それまで計り知れない苦労を重ねてきたことが一目瞭然であった。
その中でヨウが一番若く、ヨウだけは、きちんとした身なりをしていた。
15人の魔女たちは一様にお城のきらびやかさに戸惑った。
壁には金箔が貼られ、見たことのない宝石や装飾品が飾られており、それらを避けるように魔女たちは大きな部屋の中心にいつの間にか集まっていた。
新しい服を与えられ、しばらくはこれまで食べたことのないごちそうを食べ、それだけで幸せを感じていた。
しかし、数日が過ぎた頃には、ただごちそうを食べるだけで、何もしない生活に飽き始めていた。
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2011/11/27  19:33 | 投稿者: minmax

[魔女から女官へ]
国王は、ちょうどこのころ、島の村々に魔女を城に仕えさせるよう呼びかけた。
このおふれは、島中に届いた。
しかし、詳細は一切伝えられなかった。
魔女がいる村では、魔女を厄介者扱いしていたため、喜んで城に送り込んだ。
今回の国王の決断に対し、人々の中には、城が魔女に滅ぼされると心配した者もいた。
魔女と呼ばれてきた女たちは、一様に不安がったが、淡い期待を持って、城へ急いだ。
ヨウの村の村長にもそのおふれが届いた。
さっそくサキに伝えに行った。
サキは、戸惑った。かわいい娘を手元から離すことはやはり苦痛であった。
しかし、このままヨウを村に置くことも許してもらえていない。
夫とも十分に話し合い、国王を信じようと心に決めた。
ヨウ本人は、お城の生活に期待を抱いた。
お城に仕えることは、本人にとって夢のようなことであった。
しかし、国王は魔女としての私を必要としている。
どんなことをさせられるのか。
もしかしたら、とんでもない仕打ちを受けるのではないか。
命の保証はあるのかと不安にもかられた。
もうひとつ、気がかりなのは、両親やケンに一生会えなくなるのではないかということだった。
考え抜いた末、国王は、やさしいお方、信じて行ってみようと思った。
何かあったら、魔法を駆使して逃げだせばいい。
もしかしたら、たまには両親のもとに返してくれるかも知れないと思うことにした。
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2011/11/26  20:11 | 投稿者: minmax

[村を追われるとき]
リクの足の骨は折れていた。
片足を引きずりながら、ようやく自宅に戻り、祖父の村長にヨウの不思議な力によりやられたことを話した。
村長は、自分の孫がやられたことに腹が立ったが、それよりも、ヨウが不思議な力をもつこと、すなわち魔女であることを知って、血相を変えてすぐさまヨウの家に向かった。
ヨウは、ケンの家に行き傷の手当てをしてやり、しばらく様子を見ていた。
このため、ヨウの家には、母親のサキしかいなかった。
村長は、サキにヨウは魔力を持こと、魔女は災いをもたらすため、この村から追い出さなければならないことを話した。
サキは、ヨウを村に残すよう村長に懇願した。
しかし、村長はそれを認めようとはしなかった。
サキがいくら頼んでも、村長の孫を大けがさせてしまってはどうしようもないことだった。
それでも、村長は1か月の猶予をくれ、ちょうど1か月後にはこの村を出るように通告した。
これが約1年前の出来事であった。
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