2015/1/31  23:37 | 投稿者: min

まだ、わたくしが小さい頃のお話です。

わたくしの家の回りには多くの田んぼが広がっていましたが、ほとんどが他人の田んぼでした。
わたくしの家は農家ではありませんでしたが、それでも少しの田んぼを持っておりました。
100%農業で生計を立てている人を「百姓」と呼ぶとしたら、わたくしの家は「十姓」以下といったところでしょうか。

ある晴れた日のことです。
季節は秋、稲刈りも終わり農家はひと段落したころです。
保育園から帰ったわたくしは、ひとつのたくらみを実行に移しました。
その頃のわたくしは、気は小さいけれどいたずら好きで、よく小さな悪さをして楽しんでいたものです。もっとも、保育園に通っている年頃ですから大それた悪事はできるはずもありませんが。

わたくしは、両親が家の茶箪笥の引き出しに数本の線香花火を隠しているのを知っていました。それは、お盆に楽しんだ花火の残りです。わたくしの両親が幼い子供がいたずらをすると悪いと思い茶箪笥の中に線香花火を隠しておいたのですが、その花火をやりたくなったのです。

あのちろちろと燃える線香花火は幼い子供にとって不思議で魅力的な遊びでした。わたくしは花火遊びをやりたいという衝動を抑えきれずに、母親の目を盗みその花火をこっそり持ち出して数百メートル離れた友人のところに向かったのです。

友人の家まで行って同い年の友人を呼び出して、「花火しよう」と呼びかけると友人も即座に賛同いたしました。
問題はどうやって火をつけるかです。わたくしはそれまでマッチを擦ったことはありませんでしたし、家ではわたくしの手の届かないところにマッチが置いてあったので友人のところには当然花火しか持ってきておりませんでした。
友人に花火はあるけど火がつけられないと話しますと、「マッチなら家にあるから持って行く」というのです。この時の心の高まりは忘れられないものでした。

その日の空は青く澄み渡り、空の一部には羊雲が出ておりました。
友人の家の近くに広がる田んぼには、天空の太陽の光が澄んだ空気の中を突き抜けて、稲の切り株を輝かせておりました。
遠くでは雀たちが落ち穂をついばむ姿が見えました。

当時、秋の稲刈りを終えた田んぼは、子供たちの格好の遊び場でした。良く昆虫を探したりしたものです。わたくしたちは、乾いた田んぼの中に入り、切り株をわざと踏みながら進んで行きました。切り株を踏みしめたときに出る「がさがさ」という音が心を躍らせるのでした。

田んぼの中ほどにくると、そこは誰も邪魔する人のいない自分達だけの世界に感じたものです。そこで二人は手に握りしめた数本の線香花火を地面に置き、友人が持ってきたマッチ箱からマッチ棒を1本取り出して擦って火をつけました。ジュワーという音がして火がついたのもつかの間、風がマッチ棒の火を吹き消しました。友人がマッチをするのを見て、普段母親にマッチを触ってはダメといわれていることをすっかり忘れ、好奇心の赴くままに自分も火をつけるという行動に挑みました。わたくしが初めてつけた火を線香花火に移すと無事に火がつきましたが風が吹いていたためか火玉はすぐに地面に落ちてしまいました。それでも、恍惚の境地に私は入り込みぼんやりしていました。その頃、いつの間にか友人はいなくなっていたのですが、わたくしが気付くことはありませんでした。

当時の田んぼには「にお」が所々にありました。におとは「藁にお」のことで、稲を刈り取った後に藁を円柱状に積み上げたものです。高さは2メートル位だったでしょうか。しかし、保育園の子供にはもっともっと大きく見えたでしょう。

わたくしは、しばらくしてから友人がいないことに気付きました。回りを見ても姿が見えません。あたりに見えるのはいくつかの「にお」だけです。そのうちの一つの「にお」からかすかに煙が上がっています。
そこから友人がゆっくりと歩いて私のところにまいりました。わたくしは我に帰りました。
「にお」に火が移っていたのです。
友人は風をよけるために「にお」の陰に隠れて火をつけていて、それが藁に移ったのだと思います。
その煙は徐々に大きくなっていきます。
とっさに友人と逃げることに決めました。友人をうながし、私の家まで逃げてまいりました。その時は事の重大さなどということは深く考えるわけもありません。
友人は気付いていませんでしたが、彼の頭をみると前髪がわずかに燃えて白く縮れています。それをわたしは、手でかきとって何事もなかったかのように装いました。

そのあとのことはどうなったのか良くわかりません。
実際には、消防車が消火活動を行い、我々の両親はお咎めを受けたのでしょう。

それ以来、大好きな花火は禁止となり親からは花火というものを買ってもらったことはありません。
近所ではお盆に花火を子供がやっているとうらやましく見学にいったものです。

この反動で、わたくしは、今でも夏には花火がやりたくなるのです。

作文の練習
これもしばらくしたら削除予定です。
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