朝4時半起床、レースが7時半スタートなのでちょうど3時間
前だ。
なんといっても普通の街中で行われるレースと違って天候が悪
いと5合目までで終わることもあるという山岳レース、ホテル
の窓からすぐ富士山を見た。富士山全貌がはっきり見える。雲
はほとんど見えない、ほんとに綺麗な姿の富士山だ。
これからあのはるか彼方に見える3776メートルの富士山頂
を目指すと思うと緊張してきたし、ほんとにあんなに遠くそし
て高い場所にあるゴールに、4時間半でいけるのかという不安
で心が押しつぶされそうになった。
朝ご飯を食べるのだが、制限時間は正午(12時)ということ
で、スタートしてからはさすがの僕もエイドでゆっくり何か補
給食を取れる時間はそうないだろうと予測できたので、ほんと
にたくさん食べた。まずはカツ丼の半分、パン、バナナ、バウ
ムクーヘン、とありとあらゆるものを食べて、スターと地点に
はエネルギーゼリーを持って行った。
そして6時半にスタート地点に着いた。いつものレースだと知
り合いと話したりしていることも多いが、もう周りの方々の眼
差しがとても真剣で、知り合いを見つけてもどうも大声では話
しにくい。靴紐を入念にチェックしている方、補給食を時計を
見ながら取っている方、入念にストレッチをする方など様々だ
。
時計が7時を指そうとする時には、もうすでにスタートに並び
かける方の多いこと、少しでも前からスタートしたいと思う一
心だろう。僕も7時にはスタートの自分のブロックのところに
並び、号砲を待つ。
午前7時半に近づくと次々とセレモニーが始まり、「エイエイ
オー」の掛け声まで出る。みなこの一年にかける意気込みはす
ごい。
そして号砲が鳴る。僕は初出場と言うこともあり、すこし後ろ
のブロックからのスタートなので、スタート地点まで40秒程
かかった。しかし最初から絶対あわてて抜きにかからないと心
に決めていたので、段々とペースが落ち着くまではすこしづつ
右から前に出て行った。最初の左に曲がったところから道路が
広くなり、最初にダッシュして失速してきた人たちを抜きにか
かった。曲がったところからは、登りになっていて、1キロも
行っていないのにそこからゴールまでは下りがいっさいない過
酷なコース。徐々に前に出て行った。
最初のチェックポイント、馬返しまではほぼアスファルトなど
整備された道路なので走りやすい。ほぼ11キロ地点で、58
分45秒、完走の出来るペースでの通過。ここからは、登りが
一段ときつくなってきているが、まだまだ自分としては余裕が
ある。すこしでも平坦だと、小走りに走り出す人も多く、すこ
しずつ遅れた人をかわしていく。
だが5合目に近づいてくると、道も細くなっていくし、階段の
ような厳しい登りも多くなり、歩きがほとんどになっていく。
仕方ないと思うし、周りもほとんど歩いている。そして段々雲
の中に入っていくという感じで視界が白くなっていく。
5合目の大きなエイドステーション、チェックポイントを通過
する。時間は1時間49分ちょうどだ。ここはバス、車などで
大勢の方が応援するポイントだ。かなり激が飛んでる方も周り
にいた。そして僕もラン友が「速いよ〜」と声をかけてくれる
。大きく手を振って応えた。他の方々も口々に「さぁこれから
ですよ〜」の声だ。
5合目を過ぎて、登山道に入るといきなり歩きだ、しかもここ
ら辺りからは、踏みしめても、ズルッと滑るようになって走り
にくいし、ダメージが大きい。一歩一歩乳酸がたまる感じだ。
ここから7合目辺りまでは非常に長く感じられた。岩場もあり
、何ヶ所かは這いつくばるように歩いていかなければならない
。富士登山らしいのか、自分の気に入った位置取りで生き生き
と登ってるように見える方も多い。僕の方は、そこまでの登り
練習はしていないので、横のロープを持ったりと苦労しながら
登っていく。
8合目はまだかまだかと思いながら登っていたが、8合目の山
小屋は何ヶ所もあるので、なかなかチェックポイントは来ない
。そしてやっと大きな山小屋でエイドとチェックポイントだ。
「ピッ」という音とともに、3時間15分12秒。
今回GTメールを利用してのあるわかちゃんの掲示板で実況中
継している。掲示板で僕のタイムが通過と同時に書き込まれて
ると思うと、苦しくても勇気が出てくる。ここまではどこのチ
ェックポイントも、がんばってるよ〜のメッセージを送ってる
感覚だったが、ここまで来ると、目標としていた4時間切りが
確実に見えてきた。
さぁ最後の300メートル(高低差)ぐらいだろうか、ここか
らは一段とズルッと足が沈む。1人、2人と足が痙攣して座り
込んでいる人がいる。細心の注意を払って、足を進める。そし
て今度は、這いつくばって上がらなければならない岩場が続く
。
上を見上げると鳥居が見えてきた、ゴールだ!9合目辺りだろ
うか。しかしここからものすごいことになってきた。
手を見てびっくりした。手首から先が、手の甲も含めて真黄色
になっている。おまけに顔がむくんできた感じだ。そして動悸
が激しくなって苦しい。所謂高山病か?何度か立ち止まって、
何人も先に行ってもらい、ゆっくりゴールを目指す。
隣で見ていた私設のエイドの方も、「もう時間的には大丈夫、
ゆっくりあがって下さい」と声をかけてくださった。
最後の階段状の登りを登りきったところで、たくさんのスタッ
フの方が、「ゴールはすぐそこです、ラスト、ファイト!」の
大声が。
最期の力を振り絞り、鳥居を越えて、ゴールゲートへ。もう感
動だ。日本で一番高いところへ、4時間を切る、自分では出来
すぎたぐらいの好タイムでゴール。拳を握り締めてのゴール。
ここまでやれたのは、やっぱり応援のおかげが大きい。今回は
、GTメールでの実況中継で、みなさんが離れたところでも応
援してくれてると思うと自然と力が入る。
そして、地道に筋力トレーニングを毎日やってきた成果がでた
んだろう。8合目までは、けっこうダメージがすくなくてすん
だし、最後まで痙攣せずにすんだ。
ゴール後、残念ながら富士山頂からの絶景は望めなかったが、
感動を胸に下りを自分の足で5合目まで降りていった。


0