今回のブログ、かなり長いので、長いの嫌な方はスルーして下さいね。
6月の中頃に父が他界し、しばらくの間釣りから遠ざかっていたが、約2ヶ月振りに釣行した。
いつもの様に夜勤の終わった後、車を一路山田に向け走らせた。車中ではラジオに耳を傾け、深夜のドライブを楽しむ。高速には、やたら安全運転でとろとろ走る車や、逆に追い越し車線をハイビームで他車を蹴散らしながら走る輩やら様々だが、うまくかわして流に乗って行く。
7月に始まった地上デジタル放送、自宅のTVは以前から地デジ対応していたが、車のチューナーはほったらかしで、これを機に車の中では専らラジオ派になった。これまでのブログの中でも何度か触れてきたが、ちょうどこの時間には、NHKでラジオ深夜便というのをやっており、これを聞くのが好きだ。
今日の2時台のロマンティックコンサートは、1975年アメリカヒット曲特集で、グレンキャンベル、ニールセダカ、テンシーシー、イーグルス等々の懐かしい曲に耳を傾けた。続いて3時台は歌謡曲、がらっと変わって五月みどり・こまどり姉妹特集。
『好きなら来てね』『一週間で十日来い』ってたまには、こんな曲も良し。
好きだから来ましたよ山田ダム。できれば一週間で十日来れる身分になりたいものだが、実際のところは2ヶ月振り。百ヶ日が済むまでは殺生につながる釣りは、してはいけないとも聞くが…
『四十九日も初盆も終わったし、それに何といっても、へらぶな釣りはキャッチアンドリリースやし、罰は当たらんやろ。』と勝手な理屈をつけ、やって来ましたダムサイト。
『うん?釣れているのか?』人気ポイントは満員御礼。仕方なくスロープ下左手に釣り座を構えるが、ここもけっして悪いポイントではない。過去に私もここで尺半を釣っている。ただ工事があってから以降、スロープに併設された階段横は水深が少し浅くなっているので、竿を出す方向に注意が必要だ。
対岸3番ポイントを向いて、釣り台をセットする。アルミの釣り台を組み立てる時の、ガチャガチャ・コンコンという音が私は好きだ。台木に万力を取り付け、竿掛けをセットするこの準備の時間も楽しい。大物との出会いを、まだ夢見られる時間だからだろうか。
事前にメールで“黒シャツさん”から『長い竿がいいよ』と聞いていたので、21尺を出す。『21尺って、こんなに長かったっけ?』念の為、床計りすると、チョウチンでも底が取れない。やっぱり、この向きで正解だった。ウキの立つ位置も山影になり見やすい。
準備も整い釣りを開始。しばらくすると、左隣のステージ左下岩盤の釣り台の主が現れた。“かっちゃん”だった。期せずして、並んで釣りをする事になり、今日は楽しい釣りになりそうだ。
“かっちゃん”の『ブルーギルのアタリとか出ますか?』との問いに、『まだ3投目ですから…』と答える私。しかしながら実のところ、ウキのナジミが悪いなと思っていたのだった。今日のウキは、先日“山さん”から頂いた盛夏用のニューバージョンの“山口作”。“山口作”と言えば、シズは食わないが、エサはしっかり背負うというのが売りなのだが、今回のは従来物より、3倍シズを食う。
全9節のトップの根本から1節と2節の間に、エサ落ち目盛を設定した。自分としては、トップ2節を残して深ナジミし、その後ジワジワと上げて欲しいのだが、4節も5節も残してしまう。
エサはいつものマッシュと麩エサのブレンド。いつもより余計に練りを入れ、ナジませ様とするが、うまく行かない。タナは2本半からスタート。ボウル3分の1程エサ打ちすると、サワリが出始めアタリに変わった。何度かカラツンを食らった後、最初に竿を曲げたのは、40近いマブナだった。
早朝の間は涼しく、快適に釣りをしていたが、太陽が昇るとさすがに暑い。そろそろパラソルを出そうと思っていたが、サワリやアタリがあるので、今はタイミングが悪い。“かっちゃん”の『対岸1番“S野さん”かけましたよ』の声にも、上目使いに一瞬チラッと見ただけで、『あーハイ』と気の無い返事をし、自分のウキに集中してしまう。
直後に、今までのアタリとは違うスピード感のあるアタリで、先程のマブがかかって来たという訳だ。40近くあるマブだと結構引く。両手で竿を支え拝む私の姿に、対岸3番の“源氏平家さん”も『オッーやっさんかけてるやん!』と声をかけてくれるが、上がって来たのは残念なヤツだった。
その後、今度は“かっちゃん”が竿をしぼる。上がって来たのは、40上の立派なヘラ。『ウーン、先を越されてしまったワイ…』
パラソルをたてるとだいぶ過ごしやすくなる。湖面を渡って来る風は、涼しくて気持ち良い。湖面の緑、山の緑、空の青、雲の白いずれもが鮮やかな色で夏だ!
ダムの周りの山々では、いろんな種類のセミが好き勝手に鳴いている。ヒグラシ・アブラ・クマ・ニイニイ…とてもハーモニーが取れてる鳴き方ではないが、これもまた良し。
マブナをさらに1枚追加したところで、エサがなくなった。今度は麩エサをブレンドせず、マッシュだけで作ってみる。するとナジミがよくなった。深ナジミしジワジワとエサ溶けし、一定の間隔でコンスタントにエサ打ちするいいリズムが出来た。しかし、サワリとアタリは極端に減った。
たまにアタリがあって合わせるが、カラツンになる。10時半頃、タナをウキ1本深くし、下ハリだけエサを小さくして、指先だけ水に濡らしてエサ付けした後の1投目、なじんで間もなくドン。『これはヘラです』と“かっちゃん”にドヤ顔で報告。腹パンだったので実際より大きく見えたが、検寸すると43センチ。でも大満足。
昼前にタイミングよくエサが無くなり、そのまま14時近くまで休憩。休憩後トウフ下の“福ちゃん”の様子を見に。『よう釣ってはりますね』と声をかけると、『この間の1回きりで、今年はよくないわ』と謙遜されていた。
釣座に戻り、パラソルの角度を調整し、エサを作り、ハリス新しく括り直す。気のせいか昼過ぎてからの方が暑い。嫁サンが用意してくれた、ペットボトルに入れて凍らした麦茶・アイスコーヒーを首の後ろやおでこにあてて、熱中症対策。
午後からは、タナを2本半に戻しスタート。しばらく打ったら、また3本にして、2枚目を狙おうという魂胆だ。この魂胆見事にはまったと思える瞬間があった。3本にした直後、ウキが消し込んだのだ。ところがどっこいその正体は、モンスター鯉でした。“かっちゃん”に道糸を取ってもらい助けてもらった。
私が初めて釣りをしたのは、父に連れられて行ったマブナ釣り。私の実家は長崎の佐世保にある。リアス式海岸で囲まれた海には、数多くの小島が点在し、九十九島西海国立公園に指定されている。42年間市役所に勤務した父は、職場の同僚に誘われ船を仕立てて海釣りに行く事があったが、何度か私も連れていってくれた。
進学で関西に出て来た私は、卒業後そのまま外資系のサービス業に就職した。仕事の忙しさにかまけて、なかなか帰省しなかった。数年前に転職してからは、結構自由の利く職場という事もあり、父が倒れてからのこの2年程はちょくちょく帰っていた。しかし意識が戻ってからも、痴呆の進んだ父は私を息子と認識できないでいた。
ところが、他界する前々回の時、私をはっきり息子と認識して、会話が出来た。『僕を釣りに連れて行ってくれた事をおぼえているか?』『おぼえている』『元気になったらまた行こう!』『うん、じゃあこれから竿を買いに行こう!』『えっ!その体で今から?』
『目立たない所でも、コツコツ努力しなさい。見てくれてる人は必ずいて、認めてくれる。』父の口癖だった。
16時を回ると、結構日も傾き、パラソルで西日を遮ると過ごしやすくなった。隣の“かっちゃん”はすでに5枚目を上げているが、『みんな同じ位のサイズや、大きいの欲しい』と型に不満そう。そんな“かっちゃん”が『対岸にいるの“ささやん”じゃないですか?』と聞いて来た。『えー、あのシルエットは間違いなく“ささやん”です』巨鯉に翻弄される“源氏平家さん”の助っ人を買って出ていた。どうして平日なのに今ここに居るのかと思っていたが、二人の会話で疑問が解けた。『今日の仕事は会議だけで、それが思ったより早く終った』と、なるほどね。ほどなくこちら側に回って来てた“ささやん”がボトルコーヒーの差し入れをくれた。家から持って来た3本のペットボトルを飲み干し、ちょうど欲しかったところだったので、ありがたかった。“かっちゃん”からもらったアリナミンと2本並べて置いた。
最近の釣況を聞きながらであったが、二人の視線は私のウキにあった。あれはヘラのさわりやな おっフキが出た。が、なかなか落とさない。
17時前から怪しい雲行きになっていた。17時半には釣りを終え、18時にはダムを後にするつもりでいたので、それまでは持つと思っていた。ところが、周りは青空なのに、山田ダムの上空だけが黒く掻き曇って来た。そしてポツリポツリと雨粒が落ちて来た。車に避難する“ささやん”。ウキは今にも落としそうなのに…。パラソルの角度を雨対応に変え、竿ケースと釣りバックのファスナーを急いで閉め、トイレに立ちたいのも我慢し、再度エサ打ち。そしてやっぱり来たぁー!2節残してナジミ切った後のドン!合わせた、乗った!しかし、またもやマブ。ガーン!上がりベラとは行かなかった。
雨足は次第に強くなり、道具を片付けるのが大変。釣り台の上で胡坐をかいたままの状態で、極力雨で体が濡れない様にして片付けて行く。トイレに立ちたいのも我慢し、釣り台とパラソルだけを残し、段差ザブトンをバックに仕舞おうと胡坐を崩そうとした瞬間、足がつった。イテッー!我慢して続ける。
車と釣り座の間を、3往復して道具を運び終える。ズボンは膝から下がビショ濡れ。スニーカーはもちろんの事。車の中でTシャツに着替え、ソックスを脱ぎサンダルに履き替える。元々1泊の予定なら、着替えを一式持って来るのだが、今日は日帰りの予定だった。
パンツが濡れなかったので、助かった。スラックスは速乾性の生地だったので運転中にかなり乾いた。でも何でこーなるの!
『お父ちゃん、百日、我慢しなかったのを怒ってるんかぁー』
でも
あーおもろかった!

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