100名近くの死者と行方不明者を出し、各地に大きな爪痕を残した台風12号。これほどの被害をもたらす台風はそうはない。今年は自然の猛威の前に、ひれ伏さされる。
人の力ではどうにもならない物の前で、崩壊してしまった原子力安全神話。これまで原子力発電の安全性を信じ、そして今でもその恩恵に与っている立場の者としては、ひじょうに居心地が悪い。
居心地が悪いと言えば、2年前の総選挙で、政権交代によって、日本での2大政党制が幕開けする事を期待して、民主党に一票を投じた者としては、その後の2年間は当にそうだった。
新総理が誕生し、どこかでまた裏切られるのかとの不安な気持ちを持ちつつも、今度こそなんとかして欲しいと他力本願してみる。
そんな現実から逃げるかの様に、心の癒しを求めてやって来たのは、紀北の準山上湖“山田ダム”普段のおとなしい時の自然は、こんなにも美しいのに…
あっ!言い忘れてました。今回はボウズ釣行記です。期待しないで下さい。
誰も期待しとらん、期待しとったんはお前やろ!
そうそうそう、雑炊後はいいってね。
増水やろ!そいでボウズ食らったんやろっ!
そんな固いのたべれませんわ。それに私、長髪ですねん。
増水を期待して、やっては来たものの、あまり変化がない。かなり放水したのだろうか、前回来た時とあまり代わり映えしない。
満水であれば、みかん畑上手で16尺底でヘチに寄ってくる巨ベラを狙ってやろうと思っていたのだが、一気にテンションが下がってしまった。釣人も少なく、ほとんどのポインントが空いている。もう慌てる事もないと、いったん車に戻って夜明けまで仮眠を取った。
目が覚めると、時刻は6時半。再び水辺に下りて行くと、最初は暗くて分からなかったのだが、湖面はかなりの濁りが入っている。いつものグリーンティを連想させる水色がまるでコーヒー牛乳だ。
2007年7月18日、私が初めて山田ダムを訪れた日、あの時も台風通過直後だったが、満水になってはいたものの、水はもっときれいだった。そして忘れもしない、あの日“ビックホーンさん”が523を上げた。その時のポイントと釣り方こそが、前述のものという訳だ。
私が山田の虜になったのは、他ならぬこの人のせいです。
さて今日はどうしたものか、ヘラの気持ちになって考えてみよう…って分っかりませーん!直感で、橋下土管前で対岸石碑下を向いて、21尺で深いタナを狙ってみる事にした。
ダムサイト周辺には、私以外に4人のヘラ師がいて、その全員が2本半前後のタナで宙を釣っている。私は、今日みたいな日、どうせ釣れないんだったら、最後は冒険してやろうと思っていた。
この濁りで、ジャミ達はどうしてるだろうか?ちょっとは、おとなしくしてくれるのだろうか?分からないが、今日は狙うタナが深いので、“山口作盛夏用”のウキを選択する。大きな段差を付け、2本半のタナからスタートしたが、釣り開始早々は、ウキがなかなかなじまない。それにただでさえ振り込みが下手な私は、風に邪魔されて投餌ポイントが毎回ずれる。おまけに大きな段差を付けているせいか、上バリだけエサ落ちする事が度々。これじゃ釣れる分けがない。釣りになってない。
水の濁りでエサの沈下スピードが確認出来ないので、水汲み手洗い用のボウルの中に丸めたエサを放り込んでみる。かなり軽そうだ、これじゃなじみが出る訳がない。かなり練りを加えて重みをつけてやると、なじんでくれた。
だが、今度はウキの返りが悪すぎる。水中に2個のエサがぶら下がったまんまで、周りには魚の気配がないという感じだ。タナを、3本にしてみても変化はない。今日は、麩エサを持参していない。マッシュ単品で、適度な重さと柔らかさとバラケの3つを兼ね備えるのは難しい。
ウキを、シズの乗りが約3分の1の物に変更し、さらに手尻を約15cm縮めて、タナを3本半に深くした。すると、先程のエサより少ない練り回数で、しっかりナジミが出て、風に負けずに振り込みが出来た。ウキの返りもジワジワといい感じだ。やっと釣りらしくなって来た。
お昼前、エサが残り少なくなっていたが、これがなくなったら休憩にしようと思っていた。もしかしてと思って、さらにタナを深くする。たぶん下バリだけが床についていたと思うが、第1投にドン!すかさず合わせるが乗らない。
あっー、なんで乗らへんのぉ!
とりあえずエサを作る。出来立てのエサを落ち着かせる時間を利用して、そのまま釣り台の上で、コンビニで買った親子丼と冷麺をかっ食らい缶ビールで仕上げる。あっー幸せ!
私が用意してあげた菓子パンはどうしたのよ!
来る途中で食べちゃいました。
なんとまぁー!
食事していると、様子を見に“ご意見番”が登場!『“やっさん”今日はこりゃあかんぞぉ!』『ですよねぇー』今年、山田で“ご意見番”の釣り姿を見る事がなかったが、お元気そうで何よりだ。
さて、食事を終わり再開。ウキから、魚信は伝わっては来ない。しかし、なんか魚の気配を感じる。当然見える訳ないのだが、エサの周りを遠巻きにして魚が泳いでいる様な…勝手な想像をしてみる。
今度のエサ、タナまでしっかり届いてくれるが、エサ溶けが悪い。2〜3度、強く誘って強制的にバラケさせて、投餌のリズムを作ってみるが、長続きしない。
希望がなくなりかけ、ほとんど機械的に回収作業をしかけたとたん、何かひっかかかる感じと共に重みを感じた。あっれっー、ええ感じでやりとりして、魚を掬ったが、残念ながらハリはお口ではなく、鼻にかかっていた。
お前は、アユかぁー! 36cm程の銀色のきれいなヘラ、残念やなぁー…
しかし、やっぱおるんや、深いタナでいいんや、でもどうしたらいいんやろ。5年前なら、迷わずオカメ一発の段差釣りに手を出すところだが、山田教に宗旨替えした。
あらためて床計りする。下ハリだけ底に着いていたのを、段差を詰めて上バリトントンに、そしてエサを柔らかくする。
それから5投もしなかったと思うが、なじみきった直後にドン。慌てて合したが、また乗らない。ほんまにもーう、なんで乗らへんねん!
この後、もうドラマは起きなかった。
今年9回目の釣行だったが、まともなヘラを手にしたのはまだ3回、その内、尺半は1枚だけ、サッカーなら予選落ちだね。
先行き不安の多い社会。息が詰まりそうな中で、いつも一息つかせてくれるのはスポーツの世界、特にサッカーの国際試合。男女共に健闘している。
震災の時、何の暴動も起こす事なく、公共のマナーを守って行動している市民の姿を海外メディアは賞賛し、日本人としての誉れを感じた。
しかし、その後の復旧・復興のスピードは国民の期待に及ばない。何が阻害しているのか?与野党もっと協力してこの国難に当たって欲しい。

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