「今から帰るよ」
「女神さんには会えたん?」
「会える訳ないやん…」
「ところで広島大変ね!」
「何、それ?」
帰宅して、ニュースを見るとTVは、ゲリラ豪雨がもたらした大規模な土砂崩れの模様を映し出していた。『これは、ひどい…』 建物や橋・道路等の構造物は、やがて時が経てば復旧/再建されるだろうが、かけがえのないものは2度と戻って来ない。
水害や地震等の自然災害は、日本列島の上で生活する以上、いつ我が身に起こっても不思議ではない。なんだか毎年の様に『今年は天候不順だ』と言っている様な気がするが、特にこの8月はおかしい。8月と言えば、カンカン照りが続くというイメージが強いのだが、今年はなんと雨や曇の日が多い事か…
が、今回釣行した8月19・20日は、まさに盛夏。満水に近い水位で、かかり場が限られるダムサイトは顔馴染みのメンバーで満員御礼。朝陽が昇ると、その容赦ない陽射しを避ける為、角度を付けたパラソルの花が咲く。出来るだけ体がすっぽり影に入る様に調整するのだが、それでも湖面に反射した日光が、鼻の頭や頬を焼く。
釣り人達の背後からは、くまゼミ・あぶらゼミ・みんみんゼミ・つくつくぼうしの鳴き声が入り乱れ不協和音となって襲って来る。その音に押されてエサを振り込むと、2つの白い玉はエメラルドグリーンの湖面に飲み込まれる。そして、それほど間を置かず起き上ったウキは、不思議とジャミに邪魔される事なく、ゆっくりと馴染んで行く。
その動作を何度も繰り返す内、ほんとならサワリが出て来てしかるべきなのだが、出て来たのはトンボだった。UFOの様に(見た事ないが)上下左右に瞬間移動していたかと思えば、次にヘリコプターのホバリングの様に停止し、やがてウキのトップに乗っかった。
この日の目立った釣果は、“赤鬼さん”が昼時合いで46上、“法師様”がナイターで48上を出された事だった。

その日の夜、釣友に誘われて“アル中友の会”の宴会に参加した。参加者は私も含めて5人。話題の中心はもちろん釣りの事だが、時折、それ以外の体験談や人生観も上がって来る。するとその人の人柄がより浮き彫りになる。皆、愛すべき人達だ。
この5人、もとはと言えば、見ず知らずの間柄だったが、山田ダムでへら釣りをする中で、互いが知り合いとなった。そのきっかけに、自分のブログが一役買えた事が光栄だ。
興が乗って来ると、自然と歌が飛び出して来た。♪好きよあなた、今でも、今でも…♪ ♪津軽平野に 雪降る頃はよ おどう一人で出稼ぎ仕度♪ ♪白樺青空南風 こぶし咲く あの北国の 北国の春♪
焼酎やビール片手に、こぶしを回す。全く利害関係の無い、同好の士の集まり。大方現役を退いた今、多くを語らずとも互いの人生に山あり谷ありだった事は察しが付く。友の釣果を我が事の様に喜び、また、自分の釣果を自慢する。釣り人の楽園、ここにあり。
次、生まれて来る時は、アルコールに強くありたいもんだ。酒に弱いと人生の何分の一か損している気がする。でも、帰る日は飲まないでね。私から、かけがえのないものを、奪わないで下さい!
ところで、あなたの釣果は?
だから…
また来たらえーやん!

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