小説とはもちろん虚構の世界だ。私小説なんて分野もあるが、リアリティを損なわないよう実際の場所を特定できない様に背景を書く人も多い。ただ、中には逆手に取って『あ、あれか』と言いたくなるような場面を描く人もいる。初めてそう思ったのは野坂昭如氏の『火垂るの墓』だった。
西宮にある実家の近所にニテコ池という水源池がある。14歳の清太と妹の節子が暮らしていたと決めつけている壕が実際にまだ存在する。文中では防空壕となっているので、真偽のほどは不明であるが、その穴のすぐ上で著者が若い頃、写真を撮っていたこともあり、勝手にそこと認定した。僕が小さい頃は草ボウボウで、たまに猫が死んでたりもしていてなかなかスリルのある遊び場だった。
本来はフィクションを現実に結び付けようというのは野暮な行いかもしれない。が、物語に入れ込むとついやってしまうんだな、これが。まさかこの歳でまたやるとは(笑)。見て回ったのは大泉学園近辺。越谷オサム氏のファンタジー
『陽だまりの彼女』に出てくるあたりを散策してみた。
本については以前、
ここに書いた通り。甘くてちょっと切ない恋愛小説なんだけど、洒落た味付けがしてあって一時は所謂マイブームと化した。我ながらなんて単純(笑)。
主人公、奥田浩介が昔住んでいたアパートの近く、石神井公園。真緒と散歩しているのはこの辺りか。
たまに遠出する善福寺公園。真緒はすぐ裏の大学(東京女子大かな)に通っていたという。
真緒が『終の棲家』と謎の発言をする大泉学園。大手スーパーの前にある八百屋でしょっちゅう買い物をするのだが、スーパーでなく小売店が似合う街だ。今はシャッターが閉じられてしまった所が以前は八百屋だった(多分)。
二人が肩を並べて帰って行った、練馬西税務署の先
この信号の角を曲がったところのアパート4階に彼らの部屋がある…はずなのだが
・・・実際は両方ともこんな感じで、4階を超す建物は存在しない。ま、そこまであってもねぇ。
話題になってから1年以上経ったけど、まだお勧めデス。『陽だまりの彼女』一部感のいい人にはネタばらしをしてしまったことをお詫びする。

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