2008/12/2

パリいってこい。  ツアー

原稿を終えて以来、へんにぼんやりしてからだからちからが抜けてきている。月曜に今井と呑んだときはまだ風邪がひどくて咳がひどかったが、翌日に文學界の鼎談を終えてゴールデン街から下北沢まで独りでのんびり呑んでまわったときはもう復調していた。昨日一昨日と日本のフォーク出身のロック歌手たちの最近のライヴを見ていたが、忌野清志郎氏の完全復活(という言葉は実に痛々しいが)武道館ライヴというのはさすがに感動するところがあった。相変わらず仲井戸氏はへただけどチャーミングなギターを弾くなあ、とか小さな歓びはさておき、忌野氏のある時期の作詞作曲能力には天才的なものがあり、やはり〈多摩蘭坂〉あたりはそのアレンジの豪華さも含めてあらためて名曲と呼ぶことを躊躇させない。それとこれはどのアルバムに入っているのか知らないが〈激しい雨〉という自己言及的な曲を今回初めて聴いて、ちょっと驚いた。喉の調子もアクションも後半に行くにしたがって、かつての勢いを取り戻すような感じがした。
しかし実ははじめあまり好きでなかったバンドが、いつのまにかそれを聴いていた頃の自分を思い出させるようになっていることにへんな気分がする。RCサクセションだってボガンボスだってニューエストモデルだって最初はそれほど好きではなかったのだ。そもそも日本のロックなんて好きではなかったのだ。だが周囲がおもしろがっているうちに自分もそこへ巻き込まれた感じだ。しかしそれならYMOやフリッパーズ・ギターやコーネリアスでもありえたはずなのにそうではないところが結局、私という個を規定しているのだろう。光石さんに教えてもらわなければいまだに知らないままだったかもしれないクレイジー・ケン・バンドも、十年もすれば四十代前半を思い出すときにその音が記憶の後ろで鳴り響くようになっているだろう。

と、ここまで書いた後の三日間はさらに風邪で寝込んでしまい、記憶も曖昧で、土曜辺りにようやく恢復し、そうして日曜日にパリへ出発した。ぼんやりしたままの一週間だったと言ってもいい。映画も二本だけしか見なかった。ガレルの新作とジェームズ・グレイの新作。どちらもいい。殊にガレルは、ローラ・スメットが『石の微笑』よりもさらによくて、激しく面食らう。この女優、本物だ。グレイのほうは、グィネスにちょっと乗り切れない。もっかいエヴァ・メンデスという方向はなかったんだろうか。妻の希望でフレンチをほぼ食さず、何度かの例外(二度のホームパーティなど)を除いてヴェトナム料理ばかり毎日食べた。健康的ではあったが、その裏ではワインもえらく呑んだ。最終日は懐かしのベルヴィルで北京ダックを満喫。
肝心のジュ・ド・ポームでのレトロスペクティヴだが、平日の昼こそ半分程度だったものの金曜あたりからはほぼ満席、週末は座れなくて帰ってしまったお客さんもいるほど盛況だったんで、まあ、とりあえずホッとした。
そんなこんなで先ほど帰国。疲れた。
行きの飛行機で『ウォンテッド』と『Xファイル』を見たけれど、どちらもピンと来ず。韓国からの帰りに見逃していたラスト30分をようやく見ることのできた『ハンコック』には少なからず得心するものがあったが。で、帰りは二本の日本映画を……こういう機会でもないかぎり見ないので……見て、いよいよ日本映画はマジでダメなんじゃないか、と本気で危惧しつつも、ケヴィン・コスナーの新作『スイング・ヴォート』でその二本の日本映画の記憶を抹消した。腐ってもコスナー。
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