2009/5/7

小津とシナリオとジャンプカット  映画

昨日書き忘れたことがあって、それは『戸田家の兄妹』のことだが、シナリオでは佐分利は上の妹である綾子を呼びつけ、座らせると「いきなり頬を打」つことになっているが、そのアクションはフィルム上にはない。へんな詮索をするようで心苦しいけれど、あさましい私はそこの部分を何度か見直した。周囲のリアクションなどあるかと思ったのだが、そうではなく、引き画で座った瞬間にカットが横位置のミドルに入り、ちょっとジャンプカット気味に、綾子役の坪内美子がやや体を自分の右に倒しているところから起こしているのだ。つまりおそらく平手打ちは撮影では行われたのに、どういう事情でか本篇ではカットされているのだ。もっともシナリオからの改変はこれにとどまらず、カットもあれば足された場面、台詞も多くある。そういえば、終幕近くの例の結婚云々の場面に入るとき、佐分利の部屋にすでに高峰がやってきている箇所もジャンプっぽい。しっかり手続きを踏む小津では異例のあり方か。
どちらかといえば小津はシナリオどおりにやっていると思いこんでいたがそれは思いこみにすぎず、撮影中も編集でも進化を続けているのだ。あるいはもしかすると戦時下という事情がなんらか影響しているかもしれないが。この場合、池田忠雄単独のクレジットだが、野田高梧とのコンビ時代などはどうなのか、ちょっと検証してみたくなる。
というわけで『淑女は何を忘れたか』。平手打ちといえばこれ。再びシナリオ片手に通して見てみたが、これはほとんど改変なし。伏見晁とゼームス槇の共同脚本だからということもあるか。「殴る」はもちろん、驚くべきことに「新聞を指に立て、バランスを取りながら部屋に這入る」やラストのほとんどナンセンスな斎藤達雄の行ったり来たりさえシナリオにあって、笑える。
それにしても痛快な作品。こういう洒脱さというのは真似したくても簡単にできるもんじゃない。
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