2005/9/21
いまそこにある歴史(第1.95回):割り箸とホワイトバンド編
学術

こないだ自転車で不忍池の横を通りかかったとき、大学生のサークルっぽい集団がいてね。

はいはい。

ちらっと通りかかっただけだから文脈はよくわからないんだけど、集団の前に立ってた男子が「割り箸の使用を止めていきます」みたいなことを演説してたんだよ。おそらく環境保護かなんかの趣旨だったんじゃないかと思う。

それがどうかしたんですか?

いまどき「割り箸を使わなければ森林を守れる」なんてプロパガンダを信じてるらしいのが大変おめでたいなと。いっときはマスコミに踊らされて個人用の箸を持ち歩いてる人もいたけど、最近見ないしね。

え?割り箸って木を使ってるわけですし、使わなければ森は減らないんじゃないんですか?

単純すぎるね。割り箸はおもに木の端材で作られる。国産の割り箸の消費が増えれば国内林業が潤う。森林を管理・再生産できるのは林業だけだからね。

でも、そもそも木を使わないようにすれば森は自然のまま残る気がするんですけど。

本当にそのまま残るならそれでもいいかもしれないが、木が伐れない森には経済的価値がないだろう?結局開拓されて農地や牧地になったり観光開発されたりすれば、森は二度と元には戻らない。森を守るためには人間の手で管理する必要もあるってことさ。しかしながら、現状では日本の林業はそうとう衰退しているらしい。詳しくは
こことかを参照したまえ。

う〜ん、難しいんですねえ。

で、よく見ると、割り箸演説の男子を含めた数人が腕にホワイトバンドをしてるんです。そこでまたぶち切れですよ。

吉野家ネタはもう古いですよ。で、ホワイトバンドって何ですか?

白いシリコン製のリストバンドで、日本では300円で売られている。これをつけてると世界の貧困をなくす意思表示になるんだそうな。中田英寿、北島康介、藤原紀香なんかがCMに起用された影響でファッションとしてブレイクし、日本国内で200万本売り上げたらしい。ホームページは
こちら。

へえ〜、これが何か問題なんですか?

まず、このバンド代の300円は一銭たりとも貧しい人たちに直接送られるわけではないこと。
7割が原価と流通費用、残りの3割が貧困をなくす活動をしているというNGO団体の活動費用に回される。このあたりのことは
マスコミも取り上げはじめている。

えっと、つまり、寄付じゃないってことですか。

そう。しかしながら、その点はホームページでも明記されている。「ホワイトバンドは貧困をなくす政策を選択していくというアピールである」ってことらしい。街頭募金や托鉢僧のかなりの割合が詐欺師であることを考えれば、たいした問題じゃない気もするね。寄付だと思って買っちゃったやつが間抜けなんだよ。

ひどい言い様ですね……。でもじゃあ、それがわかっていればいいじゃないですか。貧困国の負債を帳消しにしようとしてるんでしょ?

まさにそこが問題だ。日本はアフリカに対して数十億ドルの債権を持っている。当然これはもともと日本国民の税金なんだが、国民がアフリカのためにそれを放棄するという選択をするならまあ仕方ない。だが、債権放棄の結果アフリカ諸国の財政に余裕ができたとき、本当に貧困が解消されるのか?

されないんですか?

内政に充てる国もあるだろう。だが、アフリカの現状を鑑みれば、その余裕を武器輸入に割いて内戦を激化させる国も少なからずある。そうなれば必然的に大量の難民が生まれ、貧困はさらに加速するかもしれない。そんなアフリカに武器を輸出しているのは、アメリカ、中国、そしてホワイトバンド運動発祥の地であるイギリスを始めとするEU諸国だ。

……

世の中は単純じゃない。ただ金があるだけで問題が解決するわけじゃないんだ。金の使い方が大事なのさ。そういう意味では、現地でまったく使われないような施設を作ってまわっているODA事業のほうがホワイトバンドよりまだマシかもしれない。

人間社会って怖いですね……

だからこそ面白いんだけどね。そうそうODAといえば、日本から毎年もらってるODAのことを国民には知らせず、勝手によその国への援助金にしたり、こっそり軍事費にまわして日本や台湾を仮想敵国にした軍事演習をやったりしてる国があってね、日本で流通してるホワイトバンドはこの国が作ってるんだ。

もう今日はお腹いっぱいです。

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