映画化されたらどんな脚色がなされるか興味がある
文春文庫から昨年末に刊行された上下巻で、親本は2007年に出ているらしく、その年に大好評を博したようです。買ってから気付いたのですが、「リンカーン・ライム」シリーズで、その第一作は映画「ボーン・コレクター」の原作でした。
ストーリーです。被害者の脇にクラシックな時計を置く、ウォッチメイカーを名乗る連続殺人魔がニューヨークに現れます。同様の時計が既に10個売られており、さらに8人の殺人が起こることが懸念され、警察は天才鑑識員のライムに事件を持ち込みます。ライム自身は過去の事故のために身体の自由がききませんが、相棒である女性鑑識員サックスたちを自在に使い、ウォッチメイカーの正体を探っていきます。その一方、サックスは自らが中心になって別の殺人事件を追っているのですが、次第にウォッチメイカー事件との関連性が見えてきます。相手に一歩先んじて惨劇を防いだはずのライムとサックスだったのですが・・・
上下巻ですが、上巻ではなかなか話が動かず、事件の焦点がどこにあるかが見えてきません。ただ皮肉屋のライムと他の警官たちとのやりとりに気がきいており、だれることなく読むことができます。そして、下巻の半ばあたりで急にストーリーが動きます。読者にとっては、まだページがかなり残っていることがわかりますので、ここで素直に収束するわけがないことは自明なんですが、偏執的とも言えるような入れ子構造が明らかとなっていきます。
さらに、ディーヴァーの別のシリーズの主人公であるらしいダンスも登場しますが、これが非常に強力な操作手段を提供してくれます。最初その効果を疑問視していたライムが、次第に彼女がもたらす情報も参考にしていく過程は、唯我独尊のライムだけに味わい豊かです。
途中、あざといまでのどんでん返しが多数見られ、ある意味映像的な小説に思えました。となると、「ボーン・コレクター」と同様に映画化された場合、どのような料理が加えられるか、とても興味があります。

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