
27日。今日はまず午前中に「Clitical Care Systems」という在宅輸液(Drip Infusion)療法専門の施設を訪問。

真ん中のデミームーアに似ている女性が社長。ナースです。

地域で連携をとっている病院一覧。
地図の上に旗を立てています。
多くの病院、医院から輸液のオーダーが来るわけですが、この施設の仕事内容のポイントを以下に挙げておきます。
Point1)医師のオーダーはFAXやEmailで来る。薬剤師はそれをまず投与量の処方監査する。この際、すべての病院のプロトコルを把握していなければいけない。患者の状態によってはオーダーの修正を薬剤師が行うこともある。
Point2)薬剤師の判断として投与方法のオーダーも重要。安くて使いやすい投与経路を考えるのは薬剤師の仕事。その選択肢はたくさんある(フラッシュ用生食Orヘパリンはとても安価で約10セント≒13円弱)
Point3)薬剤をそろえるのはテクニシャンの仕事。混注もなんとテクニシャン。ただしこれはかなりの研修を経て初めてやらせてもらえるとのこと。「どの薬剤を、それだけ使用して輸液を作ったのか?」は、きちんと監査できるシステムにもなっていますけど。最終監査はもちろん薬剤師。「テクニシャンがミスをしないか」という心配が日本では先に出てきますが、アメリカでは調剤ミスをしないテクニシャンを育てる(教育)するのも薬剤師の仕事とのこと。
Point4)できた輸液は宅配便で運ぶ。薬剤師が訪問することはないが週1回以上必ず患者に電話をして状態を聴取&把握している。つまり薬剤師はブレインであり、訪問はナースやヘルパーの仕事という役割分担がはっきりしている。ちなみに医師が往診することもほとんど無いらしい。今日の施設は訪問看護も行っている。
Point5)薬剤師の勤務は月〜金で朝8時〜夕方5時。まず残業はない。それ以後の時間は3名の薬剤師が交代で携帯電話を持って24時間対応。
Point6)あくまでもこの施設は輸液専門の在宅機関であり、内服薬はない。(参考:内服は処方箋に基づいて街の薬局でもらうことが基本。本人が薬局に行けない場合、代理人がとりに行くこともある。)
(まとめ)
要するに、アメリカにおいて在宅医療を考えるとき、日本のように医師と薬剤師が訪問する姿を想像してはいけないということ。アメリカはご存知のように入院には莫大なお金がかかるから1日でも早く退院したいと皆思っている。そうすると「退院=在宅医療」という単純明快な流れの中で一番問題となる患者は輸液管理の必要な患者。これがクリアできれば入院は短くて済む。日本の現状を考えても、家で点滴さえ受けられれば退院できるひとはたくさんいる。その薬液とナーシングさえしっかり出来ていれば問題ないわけで、それを担うのが今日訪問した施設ということ。
日本でももちろんこの流れは出来てきつつある。一昔前なら入院しなければならなかったような患者も、今は往診医、訪問看護、薬剤師の配達&管理のおかげで自宅療養が出来ている。違いはその自宅療養に移る時間が米国が格段に早いということ。
今日のような施設が日本に出来てもまったくおかしくないように思う。訪問看護とセットになった薬局。なるほどこれはおもしろい。少し考えてみる余地はある。ただし、日本は薬剤師が薬を直接患者に渡すことが基本となっている。宅配だけの施設ではいくら週一回電話で状態をチェックしても厚生労働省は認めないかもしれない。

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