さて前回の続き。ステロイド=治療。これが今回のポイント。
そもそもステロイドは体内に誰もが持っている(副腎から分泌される)ものなので決して危険なものではない。怖い怖い、という思い込みはマスコミの過剰報道によって作られたものと言っても過言ではない。もちろん使いすぎるとよくないのは事実。内服であれ、外用であれ、外から補充しすぎると副腎はこう考えるらしい。「そうかそうか外から来るのなら、おいらは不要なんですね。ならば私は存在を消します。」というわけで副腎は縮小し始め、あまりにも過剰なステロイドが外から補充され続けるとついには副腎は消失しその機能を失ってしまう。繰り返すが、これは投与量が過剰中の過剰の場合の話。
使用量をこころえた医師の指示に基づいて使用をした場合、まず上述のような「副腎消失」は起こらない。むしろ、適切な量のステロイドはまさに魔法の薬と言えるほどよく効く。
花粉症のかたの目や鼻粘膜はボコボコに荒れている。こういう状態の粘膜は「切って捨てたい」という表現がぴったりくるような症状を引き起こし、悪化症状は際限なく続く。ここにステロイドが補充されると、劇的に効果を発揮する。ボコボコに盛り上がり荒れてしまった粘膜は本来のきれいな(正常な)状態を取り戻す。こうなるともはや花粉は用意に体内に進入できなくなる。結果アレルギー反応も起こらない。しかも、この「いい状態」が長く続くと次第にアレルギー反応が起こらない体に戻っていくことを知っていただきたい。一度「いい状態」に戻すことこそ治療の第一歩なのだ。(このことは実はアレルギー疾患のひとつである喘息治療にもあてはまる。)
ステロイドの薬は「点鼻」「点眼」「内服」「吸入」「塗布」「貼付」と様々な剤形があり、自分の症状に応じた薬剤を医師に選んでもらえばいい。使用時の注意は薬剤師に理解(&納得)できるまでしっかり聞くことも大切。勝手に使用量や回数を自分で決めることだけはおやめいただきたい。
ステロイド治療を否定する医師もいる。医師が治療を勧めても拒否し続ける患者さんも少なくない。あくまでも選択は自由であり、押し付ける気はない。ただ、「うまく使えば決して怖くない」という主張は、誰がなんと言おうと引き下げる気はない。実際喘息も花粉症も驚くほど楽になった患者さんを山のように知っているわけで、対症療法(一時的に抑える治療)が「治療」だと思っている人の再発率を見ていると、出口のないトンネルを歩いているようにさえ思ってしまう。

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