24時間おくすり相談電話(私の携帯)が先日も夜遅く鳴った。
「4歳の子供。熱が高い。1年前にもらったアンヒバ坐剤200mgがあるが使っていいだろうか?袋には1回に2/3個使用と書いてあるが・・・」
大人子供を問わず、流感の時期はこの手の質問がダントツに多い。
いい機会なのでまとめてみようと思う。

【使用量】
上記の質問を例にとって考えてみる。
現在は体重が17kgあるとのことなので200mgの坐剤を約3/4個切って使用するのが適当。小さいお子さんの場合、体重に応じて使用量は違う。アンヒバ坐剤(成分名:アセトアミノフェン)は10kg≒100mgで考えておくとだいたいの目安になる。
かと言って大人で体重70kgの人が、1回に700mg分のアセトアミノフェンを使用するというわけではない。15歳以上で体重が50kg以上なら1回に500mgくらい、それより軽めなら1回400mgくらいの使用量でいける。
もちろん熱さましはアセトアミノフェンだけではない。いろいろな成分があるので、使用量はその都度医師、薬剤師に確認しておくこと。
【有効期限】
だいたいの薬品が製造日から3年〜4年の有効期限がある。うちの薬局の場合いつも新しいものを仕入れているから、患者さんにお渡ししてから2年はまず大丈夫。ただし保存状態にもよる。坐剤なら冷蔵庫。内服薬なら缶などの気密容器に入れておけばベスト。直射日光、高温多湿の条件下では、変色や成分の分離分解で1ヶ月で使用不能になる場合もある。お菓子や海苔の空き缶は乾燥剤付きで捨てずに残しておくと薬の保存用に最適だ。(乾燥剤は調剤を多く手がける薬局では山のように余っていることが多い。申し出てみるといい。ただでもらえる。)
【熱VSバイキンマン】
有効期限や使用量が問題ないとしても、使用のタイミングは難しい。第4回の記事にも書いたが、熱によってウイルスや細菌は死滅していくのだから、むやみやたらに熱を下げようとするのは完治を遅らせてしまう場合がある。私が子供の頃、看護婦だった母は熱さましを使用せず、いつも私にこう語りかけた。
「今、熱が出ているのは体の中の細菌を殺すためよ。体がわざとに出しているの。細菌は熱に弱いから、きっと明日の朝には細菌がほとんど死んでしまう。そしたら体は熱を出す必要がなくなるから勝手に下がるよ。だから今晩はたくさん汗をかきなさい。汗が出るたびに『風邪の菌が死んでいっている証拠。熱が出てるから早く治る』と思えばいいからね。」
母の言葉にはみょうに説得力があり、高い熱にうなされながらも安心できたことを覚えている。思い返してみると、汗びっしょりの下着の交換、水分補給、氷枕の交換などを夜通しでやってくれたからこそ安心できたのであり、翌朝熱は下がったのだろう。言葉だけのほったらかしではなかった。今更ながら感謝したくなる。
39度くらい熱が出ると、天変地異のようにあわてふためく親を時折見かけるが、まあそうあわてずにいて欲しい。子供は、あわてふためく親の姿を見て、自分に何か大変なことがおこったのだろうか・・・と不安になり泣き始めるのだ。しんどくて泣くよりも不安感で泣くことの方が絶対多い。
親たるもの、まずはどっしり構えるべし。そして
「大丈夫だよ。きっとよくなるから。熱さんが今体の中でバイキンマンと戦っているから。熱さんがんばれ、って応援しよう。バイキンマンが死んだら熱さんは自然に下がるからね。」
と言ってあげ、優しく微笑んであげるだけで子供は安心するものだ。
(もちろん小学3年生にもなればバイキンマンとは言えないわけだが・・・)
また、よく「39度〜40度の熱が何時間も続くと脳細胞が死滅していくのでは?」と聞かれる。40度のお風呂に1時間入ればのぼせてしまうわけで、それが数時間続くとなると心配な気持ちはわかるが、人間の体はそうやわにはできていないようで、簡単に脳細胞が死滅することはまずない。
【使う必要がある場合】
熱さましを使わないほうが早く治ることが多いのは事実だが、やはり使わないといけない場合もある。私はポイントとして以下の3点をいつもお伝えしている。
1)ふだん熱があっても活発な子が、今回はぐったりしている。目線があわない。声をかけても反応が鈍い。食欲なし。水分摂取も少ない。
2)高熱なのに寒い寒いと言い、がたがた震えている。ほっぺは赤くなく、むしろ顔が青ざめている。
3)熱性けいれんを起こしたことがある。
どれかひとつにでも当てはまれば使用したうえで、できるだけ早い受診をお勧めする。
言い換えればこの3点に当てはまらない場合が熱さましを使う必要が無いと考えてもらうといい。食欲があり、しっかりした受け答えができている場合は「熱VS菌」を選択してもらうと、意外と早く治ってくる。39度あっても部屋中を走り回る元気がある子供さんもたまにいる。この場合なども状態の変化は見守りつつ、無理はさせないのが基本だが「38.5度以上は熱さまし」という公式を安易に選択する必要はない。
【使用間隔】
解熱薬(熱さまし)のほとんどが5〜6時間で体からほとんどぬけていく。つまり最低5〜6時間はあけないといけないということ。2時間ごとに使用したとすると急な体温低下でショック症状をおこすことがあるので要注意。そして1日に最大3回まで。できれば2回までにしておく。上述の3点のどれかにあてはまり、熱さましを2回使ってもすぐにあがってくる場合はやはり再度医師の診察をお勧めしたい。
【熱の場合必要なもの】
1)水分確保(イオン飲料に塩をひとつまみ加えると点滴により近くなる)
2)汗をかいて濡れた下着の交換。(濡れた下着で体が冷えて、より状態が悪化することがある。)
【蛇足】
実はまだまだ書き足らないのだが、もう夜中の2時なのでこのへんで区切っておく。ちゃんと寝なかったがために今晩から発熱・・・なんてことになったらもはやお笑いだしね。

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