今日は明後日行われる女子薬剤師会の移動セミナーにて講演する内容を特別に掲載します。当日参加できない方はこの要旨をお読みくださればポイントはつかめます。
では始まり始まり・・・(
ちなみに新聞記事になりました^^)
「在宅医療における薬剤師の役割とは何ですか?」−こう質問されたら、ほとんどすべての薬剤師の先生方は「通院困難な方への訪問薬剤(居宅療養)管理指導」と思われるのではないでしょうか?もちろん正解ですが、それでは65点の回答です。実は入院していない方はすべて在宅患者さんです。通院されていて薬局まで処方箋を持ってこられる方も一般薬の購入に来られる方もみなさん実は「在宅療養中」ですから、これらの方々のことも含めて「在宅医療における薬剤師の役割」を考えなければ100点にはなりません。
そうは言いましても、「訪問」が最もウエイトが大きい役割であるのは事実です。だからこそ訪問するにあたっての理念だけはしっかり持っておく必要があります。
薬剤師の訪問の目的
「薬剤師が訪問をすると患者(利用者)にとって何がどうよくなるのか?」その目標や目的を明確にせず、ただ回数だけを重ねるような訪問にはほとんど意味がありません。単なるお薬宅配業者という位置づけにしか思ってもらえないでしょうね。ではその踏まえるべき「目標や目的」とは何なのでしょう。
(目標・目的その1)治療効果の促進と自立した服薬管理
「服用状況が改善すれば治療効果は促進される」―このことは誰もが容易に理解できると思いますが、それに加えて「介護状態の悪化防止と自立の支援」という目的があることを忘れないようにしてください。在宅治療(療養)は医療保険と介護保険の両面からアプローチする必要があります。治療促進のために服用状況の改善だけを目的とするのであれば、全ての薬剤を一包化し日付を書き入れ、患者はただその袋を破って飲むだけにしてしまえばいいのですが、これをやりすぎると自立度を下げてしまうことになります。つまり薬剤師に依存してしまい、全く自己管理ができなくなるのです。
介護保険制度の理念上、自立度を下げるサービス提供などありえませんが、医療の側面から見ると自立度を下げてでも治療を優先しないといけないときもあり、そこには少なからず矛盾が生じます。だからこそ服薬管理においては、治療優先期間から自立度向上期間への移行を手助けする役目を薬剤師が果たさなければなりません。
(目標・目的その2)薬とADL、QOLの関係を踏まえた服薬管理
訪問の目的その2は「薬と暮らしを切り離さない視点で行う生活機能チェック」です。想像してみてください。利尿薬を夜にのみ間違え、夜通しトイレに通い昼夜逆転が起こった患者。肩こりのため筋弛緩作用を服用したところ全身の脱力感でベッドから起き上がることができなくなった患者。これらはADL(日常生活動作)、QOL(生活の質)が、薬により悪化している可能性が高い症例です。薬剤師が訪問していてこの部分を見落としたとしたら恥ですね。(ただしこのような症例を目の当たりにした際、薬剤師の判断で勝手に休薬を指示するわけにはいかない。きちんと主治医への報告をし、判断を仰いで欲しい)
このチェックは継続して行い、時系列に記録していけばかなり有用です。着眼点として先ず「食事、排泄、睡眠、運動」の4つの生活機能をあげると取り組みやすいのでやってみてください。薬によりこれらが悪影響を受けていないか、あるいは薬により状態が好転しているかどうか・・・これらの事項は専門職の寄り合うカンファレンスでも重要な情報となります。薬剤師が地域のチーム医療(介護)の一員として存在する意味(意義)は、これらの情報を持ってくるかどうかにかかっていると言っても過言ではありません。
またこのことは在宅に訪問しなくても薬剤師が当然持っておくべき観点であり、この観点が備われば通院できる方や一般薬購入の方の状態もしっかりつかむことができるようになるのです。

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