十何年もむかし、アメリカ人の友達があっさり言ったこの言葉に、いたく納得したことがあった。
国の印象は悪いけど、その国の友達は好き。
ほんとだ、そうだなあ。
人が集まって国ができているはずなのに、その人たちを代表する入れ物になると、好感が持てなくなることは往々にしてある。
アメリカにいたその頃、道でいきなり、見知らぬ若者が、勢いよくぶつかってきて、そのまま走り去ったことがあった。
ぼんやり歩いていた私は、あまりの勢いに尻餅を付いた。
とっさのことに状況はつかめないものの、ぶつかり具合は故意。
なにより事故だったら、少なくとも「すみません」の一言は、必至だろう。
後で、思いあたった。
12月8日、真珠湾攻撃の日だったのだ。
「倒されたままじゃ悔しいから、とっさに日本語で『バカ!』と怒鳴った」と、翌日その友達に話すと、真顔になって「ちょっと来て」と、部屋に連れて行かれ、英語のレッスンが始まった。
「ファッ○ユー」「ソンオブア○○○」・・・。
友達の英語に付いて、練習していると、隣の部屋から
「○○(←私の名前)になんて英語を教えてるんだ!」と声が。
今度は先生が2人になった。
私にはここにいい友達がたくさんいるから、この若者に悪意をもたれたくらいで、この国を嫌いになることはない。
とげをおったてながら生きていくのはつらいもの。
でも、あの、若者には、きっと日本人の友達はいなかったんだろうなあ。
だから、彼が持った日本の印象は、マスコミや映画から受ける印象に限られ
てしまったのだろうなあ。
多分、ぶつかったのも正義からだろう。
全ての国に友達を作るなんてことは、普通できないんだから、それも仕方がないのかも知れない。
でも、友達がたくさん集まった国としてみるか、ただの入れ物としての国を見るか、って、下手したら、国同士の争いにまで影響するような、大変なことのような気がする。
国と人とは違う、これって、意味深いよなあ。

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