病院に来られる患者さんの中には、お一人では来られないので、ご家族が付き添ってこられている方も、たくさんいらっしゃいます。
ある車いすの女性患者さん(約同世代)は、ご主人が、送迎に来られます。
絶対手伝ってくれないそうで、「旦那が厳しい」と、こぼされることがあり、彼女に同情して、時には、「ご主人くしゃみしてるかもね〜」「いいわ、させとけば」と、愚痴にあわせることもあります。
彼女のちょっとした楽しみは、診察後のお買い物。
診察が終わると、診察室に迎えに行き、ご主人に迎えに来てもらうように電話ボックスで電話をかけ、それから、ちょっと遠慮がちに「売店に連れていってもらっていい?」ときかれます。
ほんとは、そのぶん他の患者さんのお手伝いができなくなるので、お断りしたほうがいいのでしょうが、病院だからって、楽しいことを我慢する必要はないよねと、私は思ってます。
でも、この1〜2ヶ月ほど、ご主人の姿が見えなくなりました。
代わりにプロの介護の方が付き添いに来られてます。
ご主人が迎えに来られる時には、ちゃんと入り口で待ってないと怒られる、と、ちょっとぴりぴりしてらっしゃったので、それがなくなって、さぞかしのびのびしてらっしゃるかと思いきや、逆、御元気がなさそうなんです。
声をかけると、いつものようににこにこと受け答えされますが、うなだれて車いすに坐ってらっしゃる姿が、いつもより気弱で寂しそう。
夫婦(家族)ってわからないもんですねえ。
端から見てどうこう言うのって、ほんとにあてにならない。
どんなに普段は愚痴ることがあっても、端からは大丈夫か?と思われそうでも、肝心なところはちゃんとつながってるんですね。
どんな他人にも理解できないものが、長い年月かかって培われているんです。
それは、優しくて、行き届いてる介護のプロにもできないこと。
今、改めて、彼女とご主人の絆みたいなものを見ているようです。

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