「フィラデルフィア」を見ました。
既にご存じと思いますが、エイズにかかった弁護士(トム・ハンクス演じるアンドリュー)が、弁護士・ミラーを相棒に、自分をエイズのためにクビにした事務所と裁判で戦う映画です。
ミラーは、最初からアンドリューの味方だったわけではなく、ゲイは大嫌いでエイズへの理解もなく、握手さえ不安げです。アンドリューの気持ちに触れることを拒んだり、受け入れたり、また拒んだり・・それを繰り返しながら、やがてアンドリューを弁護する強力な味方となり、最後には良き理解者ともなりますが、その過程に、昔の女友だちのことを思いだしていました。
弁護士のミラーが、明日の尋問の練習をしようと、用意した質問をする場面で、アンドリューは、それに答えず、大好きなオペラをかけ、その世界に浸っていきます。
不快ではないが理解もできないアンドリューの態度と言葉に、ミラーは、返す言葉もなく、練習も中止し、苦笑しながら帰っていきます。
前にも書きましたが、昔、ボストンにいた頃、彼女に「結婚したい彼女がいる」とうち明けられたとき、私は、うわべだけは平静を装っていましたが、内心は、動揺しました。
彼女といると、私もミラーのように、それまでいた自分の世界と違う世界に突然入り込んだ困惑を感じていました。
彼女は、「ねえ、この世で一番力のあるものはなんだと思う?」なんて、いつもと変わらないにこにこ顔で、よく、突拍子のない話を仕掛けて来ることがありました。
飾りは要らない、本質だけを求めて生きているような彼女に、私はいつも、ミラーのようにとまどっていたんだと思います。
彼女のほうはアンドリューと同じで、そんな私のとまどいをいつも見抜いて、それでも黙って待っていてくれたんだと思います。
そんな難しい思いをして(でもにこにこ顔でしたが)、どうして彼女が、自分の思っていること感じることを、私に伝え続けようとしたのか、分かりません。
「I made it!(やったよ!)」
映画でアンドリューが、裁判に勝ったけど病に倒れて亡くなる前に言った「I'm ready」と似たような言葉を、彼女は、周囲に残して旅立ちました。
彼女は、今は分かってもらえなくても、いつか、言ったことを理解してくれるだろうと思ってくれてたんだと思います。
限られた時間だと知ってか知らずか、彼女が、強烈で忘れられない存在と影響を残してくれたのは確か。
十年以上もたってこの映画を見て、やっとそこまで(=ほんの入り口まで!)たどり着いた気がしました。
残してくれたものが大きければ大きいほど、それを消化するには時間がかかるものなんですね。
消化力悪いし・・。

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