『朝日新聞』土曜日版be に連載されている
I教授の「備える歴史学」
日本史上に残る様々な自然災害から将来への備えを考えようという、なかなか良いコラムで、私もよく目を留めるんだけれども。
今回「佐賀の高潮被害 3」[2014.05.03]
これはちょっとまずいな。
いや、1828年の巨大台風による佐賀藩への津波・大被害に言及してるのは良い。
問題なのは佐賀藩が危機に直面した
1808年の「フェートン号事件」
当時、オランダと対立していたイギリスのフェートン号が長崎に侵入し、長崎警備の佐賀藩と衝突、、、いや日本側の軍事力が弱過ぎてマトモな反撃すらできなかった。
その反省から肥前佐賀藩は殖産興業に励み、新式武装して明治維新の主要軍事力になった、というのはもっともな歴史の流れ。
ただし、I氏のコラムで問題なのは。事件が起こったのが、
>1808年旧暦8月15日
...
>イギリスは情報戦にたけた国。わざと日本のお盆休みを狙ったのかもしれない。
>太平の世にあって、佐賀藩は警備人数を減らしており、お盆休みで警備兵の多くは佐賀に帰っていた。それで日本側はなすすべがなかった。
↑おかしいだろう!これはまるで。
もしかすると現代日本では、これのどこがおかしいか、気付かない人が多数派かもしれない。
お盆というのは本来、7月15日 のことなんです。
江戸時代までの日本人は、旧暦(当時の暦)の7月15日(の時期)にお盆の行事をやっていた。
それが明治改暦後、新暦の7月15日にお盆をやろうか!、と思っても。
どうも季節感が合わない、あるいはその時期は農作業が忙しいといった事情もあるらしい。
そこで、
・ 旧暦の7月15日のままでお盆をやり続ける(←沖縄など) もあるけれども、
農村部では月遅れにして
・ 新暦の8月15日をお盆とした
ケースが全国的に圧倒的。ただ農作業と関係ない東京都市部などでは例外的に
・ 新暦の7月15日のお盆
が定着している。
その証拠に2014年現在東京で、うちの地元のお寺は7月15日のお盆が当たり前。
ところが、特にTV報道の発達で「新暦8月15日お盆」が全国に普及してしまった。
wikipediaを挙げれば、こう
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%8A%E7%9B%86
だからねえ、江戸時代の佐賀・長崎の人が
旧暦の8月15日にお盆をすることはありえない。
日本史の大学教授(1970年生まれ)も当たり前のこととして見過ごしてるし、さらには朝日新聞でもそれに気付く人がいなかったんだなあ。
ちなみに
まーくのフィットネス情報 2004年7月15日 参照。
【追記】
さすがにこれは外部からの指摘が入ったそうで。2週間後、5月17日付のコラムで著者自身が取り消し・訂正をしていました。