日本の景気回復について、目から鱗が落ちるような大変な論説を発見。
利上げ見送りで
賃金はさらに下降
「超」整理日記351
野口悠紀雄.氏 『週刊ダイヤモンド』[2007.02.10]
記録に留めておきます。
まず今回の日本の景気回復。それが在来型の 「
重厚長大産業に牽引されたもの」 だというのは衆目の一致するところ。
例えばエコノミストの
長谷川慶太郎.氏は、19世紀後半〜20世紀初めの経済史と同様、世界的なデフレ傾向が数十年〜百年単位で続く、と予測。
世界中で「
産業インフラの整備が進む」。
そしてそれに世界一、
応えられるのが、素材産業など日本の重厚長大工業だ。
ならば重厚長大産業主導で、日本が景気回復・経済成長するのは理の当然。まことに慶賀すべきこと、という意見。
まーくも、これはかなり賛成。
ところが、野口悠紀雄.氏。知識集約型の新産業が育たず、在来型の工業に頼り切る日本の景気回復・産業構造に危惧を。
でもさあ、まーくに言わせれば。どんな産業であれ、景気を引っ張り、雇用を増やし・賃金を上げ、税金を払い、株主に配当までくれれば、それが世のため国のため。
古かろうと新しかろうと、ネズミを捕るのが良い猫さ、と思ってきました。
(その意見に基本的に変わりなし)
ところが、そこにはとんでもない落とし穴があるのを、野口.氏が同論説で解説。
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うーんと、以下は理論的になるんで、まーくも「文字」あるいは「簡単な数式」でblogに書ける内容じゃなくなります。詳しくは、同誌さらに専門書を参照。
例えば、日本に
装置産業と
知識産業の二つがあり、
資本と
労働力を投入して生産をしてる、とします。「二財、二要素モデル」。
ここで、例えばBRICsの成長にともない、鉄鋼価格が上昇した、とします。(極めて現実的な仮定だな)
もちろん、装置産業は生産を増やします。ならば、
資本の収益率は大きく上昇、一方、
労働力の収益率(=賃金)は小さく上昇、すると思ったんだ、俺も。
それなら、BRICsの発展にともなって、日本の労働者もハッピーになれるよね!
しかし実は、ここにとんでもない
パラドクスが。
日本国内の資本も労働力も、その量は一定。資本を装置産業に吸い取られた場合、
知識産業は生産を減らすことに。しかし装置産業は多くの労働力を吸収しない。すると、
→ 労働力が余ってしまう
これは「
失業」ということだし、もし資本も労働力も完全雇用を前提とするなら、
→ 賃金切り下げ だあ!
実際には、資本の収益率が上がり、労働力の収益率(=賃金)が下がったところで、新しい均衡が生まれることになる。
つまり、
BRICsが経済発展して、日本の重厚長大産業が栄えると、日本人の賃金が下落する方向に!
うぉー、なんて恐ろしい分析なんだ。
(注:繰り返しますが、このblog上の文字で説明するのは限界があります。納得できない方は、専門書をどうぞ)
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実は野口.氏、これに続けて現実的な政策論を。例えば現在の低金利政策。これが継続することで、設備投資をともなう重厚長大産業が「
今までより有利になった」、と市場に判断されると。
資本が重厚長大産業にシフトすることになる。それは、
↑のメカニズムと同様、
賃金の下落を招く ことに。
景気回復とはいえ、まだまだ格差がひどく、労働者の賃金は上がっていない。
景気刺激策として、金利上昇は控えるべきだ!
っていうのが、
正論としてまかり通っていますが、下手をすると、
金利上昇見送ったから、賃金が下落する
って可能性もあることを示した、実に重要な論説でした。