江戸時代から続く邪馬台国論争。北九州か、畿内にあったのか?
しかし最近はどうにも畿内説の分が良い。大和(奈良盆地)にあったことでほぼ決まりなんじゃないか?箸墓古墳が卑弥呼の墳墓の可能性あり。炭素の同位体、C14年代測定でもそれを肯定している。例えば松木武彦(岡山大教授)などの主張。(以下、本記事中では敬称略)
と、私も思ってきました。
ところがちょっと待ったをかけたのが、安本美典(数理歴史学者と自称してるね)。いえ、安本の著作は大昔からいくつか読んでいたもので、ちょっと目を留めてみた。
『文藝春秋』2013年11月号に、統計学者の松原望(東大名誉教授)との共同研究が触れられている。「邪馬台国を統計学で突き止めた」 これがなんと、
ベイズ統計学から見た、邪馬台国の位置
結論としては「福岡県」で決まり
いやいや、あくまで確率論だな、99.9%の確率で福岡県だというのだ。佐賀県が0.1%、奈良県は0.05%未満だというのだ。
もう少し条件を緩めても北九州が99.7%、近畿が0.3%とのこと。
ベイズ推論というのは、これだよね。まーくが
G[2009.04.10]の記事で解説したようなもの。
今回は、卑弥呼時代の遺物として「鏡」「鉄の鏃」「勾玉」「絹」に注目。それが各県内の遺跡からいくつ出土したか?のデータを元にする。
これらの出土数は福岡県が奈良県を圧倒している。
さらに「鉄刀」のデータも加えたかったけど奈良からの出土は0(ゼロ)。
で、こっから先は、まーくのおおざっぱな推論だけど。
「邪馬台国がもし福岡にあったら、福岡からの出土数が奈良を圧倒する」
という確率(条件付き確率)を推定するんでしょう。これをベイズの公式に基づいて、
「福岡からの出土数が奈良を圧倒しているなら、邪馬台国が福岡にあった確率は?」
という形で条件付き確率をひっくり返す。
しかも4種類のデータがあるから、それぞれベイズ改訂を行うたびに、福岡にあった確率が圧倒的に高くなっていく、と。
またベイズ統計学とは無関係だが、箸墓古墳のC14年代測定は間違いだ、とも主張している。
おそらく畿内説論者に言わせれば、安本・松原が使った
「邪馬台国がもし福岡にあったら、福岡から出土する、さらには奈良を圧倒する」確率
の数字にイチャモンがあるだろう。
私にはネエ、これ以上は正直言って、全然分からない。
(このblogコメント欄で学術論争ふっかけるのは止めてね)
けれども安本の主張に一定の説得力はあると思う。少なくとも畿内論者も統計学的な反論は必要だね。
だけどさ、この議論がまーくにとって今いち分からないのは。
そもそもこの出典の『文藝春秋』に、
おおざっぱなものも含めて、計算式が全く載っていない
からなんだよ。どういう計算したのか分からなくて、結果の数字だけ見せられても評価しようがない。いや、安本による他テーマの著作では各種の統計数字と計算式まで載ってたよ。今回は『文藝春秋』編集部が必要ない・載せない方が良い、と判断したのかね。
あのさあ、『文藝春秋』と言えば一応は、大学文系卒の知的読者の読む雑誌でしょ?
なんか政治・経済の専門書が「数式1つ入れるたびに売り上げが1割減る」→だから極力、数式は入れない、って話もあったけどさ。このへんの「タコツボ」さはいただけないよねえ。