日本航空の経営破綻が確実となり、会社更生法の適用を申請するに至りました。だけど今日は、日航そのものの話じゃなくて。
これらの大企業病・大組織の問題点について、大前研一.氏が分析してるので記録しておこう。(以下、敬称略)
ソース、参照元は、、、えぇと、ネット上どこかで見たんだけど、忘れちゃったな。
そもそも、企業を起業したときには、(注:「企業」という漢語には、元来「起業する」というニュアンスも含まれるらしいけど)。
必要な人材・人数もいないので、それこそ誰もが一人三役も五役もこなす。それで何とか会社が回っていく。ベンチャーなんて最たるもの。
そしてめでたく、売り上げは向上し、会社も拡大の一途を。当然、各所で分業が行われることに。そう、「分業による協業」とはアダム・スミス以来、効率を向上させる大原則。一人一役の時代。
さらに各セクションごとに、仕事の割り振りが固定すれば、続々と入ってくる新人を教育するのにも都合がいい。
ところが....。喜んでばかりもいられない。人数が大きくなると、現場と関わる現業以外に、管理業務が増える。さらに組織に官僚的な要素が増すと、、。
管理業務ばかりがやたらと肥大する、自ら「仕事」を創り出して必要人数を増やそうと自己増殖する、「パーキンソンの法則」。
とまあ、ここまでは珍しくもない(誰もが知ってる)分析。大企業病の最たるもの。私が注目したのは、この後の大前の分析。
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さてここで、例えば世間(マクロ)の景気が悪化したり、ミクロ的にライバル会社と激しく競争するとなると。
どうしたって、
コストカット (cost cut)
をしなければならない。当たり前だよね、どんな経営者だってやろうとする。
ところが、、、
いったん組織なり、セクションなりが作られてしまったら、各部局はコストカットに激しく抵抗する。
でもそこで、大鉈を振るうのが有能な経営者、、、、というわけにいかないんだ。
各所の抵抗を抑え込む、一番いいやり方は、(例えば)
一律 30% 削減
コスト(費用)、経営資源の投入 を30%削減する。もちろん、人員も3割減らす。ところがここで、
管理部門は水ぶくれなんだから、3割減らされてもへっちゃら。
ところが、現業・お客様に関わる部門を3割削減したら、、、、
とんでもないサービス低下を招いたり、(航空会社なら)安全が疎かになる。あるいは人員3割減なら、そこに携わる労働者の労働環境は劣悪に。
長時間労働やサービス残業、過労死の嵐、、
ってこれ、どう見ても昨今の不況下の日本の(一部)企業・団体・組織を表してるよ。
もちろん、メリハリをつけて、管理部門は半減以下、でも現業部門は減らさない、、、あるいはむしろ増やす! なんてことができれば、万々歳なんだけど。硬直化した組織の中で、それができる「経営者」なんていない。
さらに、「一人一役」に慣れてしまった人たちに、起業家精神を持って「一人五役やれ」 と言ったって、できるわけがない。
結局はずるずるとひきずられるままに。
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まとめると何が言いたいか? というと。
企業・組織が、条件が良くて拡大するときには、管理部門・中間部門ばかりが肥大する。
一方、条件が悪くて縮小を余儀なくされたら、全体が一律、「相似縮小」的に減らされる。
つまり、拡大期と縮小期で非対称がある、ということ。
ここで、好条件・悪条件を何度も繰り返していると、、、、
管理部門だけがやたら肥大した贅肉だらけの組織に。ところがお客様に関わったり、必要な現場部門は必須な人員も足りず、青息吐息。
こうして大企業は没落するんだ、ということを日本航空の例を挙げて説明していたのが大前研一でした。
そりゃもちろん、上にも書いたけど、管理部門だけ減らす凄腕の改革ができればいいけど、組織の中では難しい。
ならば唯一の解決策は。「古い組織を改革する」のはあきらめて。
まったく1からあるいは0からベンチャーのような組織を立ち上げるのが効率的だ、ということ。
うーん、繰り返すけど、
拡大期と縮小期で非対称がある
という分析が興味深かったんで記録しておこう。
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脚注:
最後に、今日の主文と無関係だけど。
日本航空の経営悪化が問題になったころから、大前は、
JR東日本が日本航空を買って、経営再建すればいい
という主張をしていました。その根拠。
・ それだけ買える財務体力を持っている。(それが可能な企業は限られる。)新幹線が新青森まで延びれば、JR東日本管内としてはそこで打ち止めで、リース料その他の負担も増えない。(注:北海道新幹線の根元利益負担を という声もあるけどね)
・ JR東海も似た条件で、旧国鉄債務・新幹線買取債務を払い終えればキャッシュリッチだけど。リニア中央新幹線 を自社建設する、という壮大な事業に着手して、お金がない。
・ 空港に駅を作って鉄道を乗り入れることで、大きな相乗効果が期待できる。実際、東京の羽田空港と浜松町とを結ぶ東京モノレールはJR東が子会社化した。
【追記】
おっと、誤解されるといけないので、コメントを書き加えておこう。
上で挙げた大前.論は、大企業・大組織における一般論で、日本航空にあてはまる部分もある、という論説です。
現実に日本航空が破綻したのは、こういった内部の問題だけでなく、半官企業として出発した事による中央・地方からの政治的な圧力
→ 採算の取れない空港へも就航させろ!
が大きく働き、かつての国鉄と同様、犠牲になった面が大きい、と まーく は思っています。