2011/10/5  23:30

日米開戦への道05−3  昭和史
参謀本部&軍令部03

「参謀本部」と「軍令部」について2回にわたり叙述したが、考察と云える内容ではない。殊に統帥権(とうすいけん)の全貌は、歴史・解釈・事実と多くの専門家が具体例を挙げて著わしている。何度も述べることになるが、統帥権はやはり司馬遼太郎が自分の軍隊生活を通して叙述・発言したので圧倒的な迫力があった。『司馬遼太郎対話選集』『この国のかたち』(文春文庫)、『司馬遼太郎の考えたこと』(新潮文庫)に詳しい。ここでは統帥権を行使した「大本営」と「帷幄上奏(いあくじょうそう)権」について記しておきたい。

大本営(だいほんえい)とは、明治26 年(1893)に設置された天皇直属の最高戦争指導機関のことである。当初は参謀総長が陸・海軍の作戦を指導、陸軍優位の形態となっていたらしいが、明治36年(1903)、条例が改正され参謀総長と軍令部長が陸・海軍対等の形態になった。日露戦争は宮中に設置されて作戦指導がなされた。また日中全面戦争に於ても昭和12年(1937)大本営令を制定した。大本営は戦時にしか置くことができない筈が、ここが軍国主義の故か、修正して“事変”(戦争ではないという意味のこじつけである)の際にも設置を可能にするためだった。だが誰もが異を唱えなかったのかどうかは不明。大本営は宮中に設置され、太平洋戦争終末に至るまで存続する。然しこれは、対立する陸・海軍間を調整するためだけの機関だった。大本営設置に伴い「大本営政府連絡会議」が設けられたが、これを提唱したのは第一次近衛内閣である。近衛文麿にしてみれば、統帥部の専横に首相が逆らえないなら、こうするしか方法は無かった。

帷幄上奏(いあくじょうそう)とは、明治憲法下で、軍機・軍令に関して内閣から独立して行われた上奏を云う。軍機とは“軍事機密”、軍令とは“軍事命令”であろう。参謀総長、軍令部長、と陸・海軍大臣が行った。帷幄とは、軍を指揮し作戦をめぐらす本陣のことで、時代劇映画などで見られる戦国時代の合戦の家来に囲まれる武将のシーンを思い出す。陸・海軍を統帥する大元帥である天皇に対して、軍事の専門機関が行う上奏であることから戦陣に因んだ。この帷幄上奏は、明治22年(1889)制度化され、軍機・軍令に関する事項は、内閣を経ずに直接上奏、裁可の後、内閣総理大臣に報告することとなる。ということは一般の大臣は、統帥部よりも陸・海軍大臣よりも、こと軍事に関する限り何も言うことは出来ないことになる。太平洋・大東亜戦争の時代、軍事費は、国家予算の70パーセントと云うから大蔵大臣など何も抵抗できなかったことになる。「Yahoo!百科事典」参照。

ここでは筆者の知る限りにおいて戦前の内閣・軍部の対立を報告する。
@陸軍省・海軍省 ⇔ 統帥部
 前者は予算・装備、後者は用兵・作戦
A統帥部陸軍=参謀本部 ⇔ 統帥部海軍=軍令部
 いずれ叙述したいが作戦の擦り合わせなど皆無に等しかった。
B陸軍 ⇔ 海軍
 日米開戦時は開戦責任の擦り合いだった。
C陸軍「統制派」 ⇔ 陸軍「皇道派
 統制派→国家総力戦における戦争 皇道派→天皇中心の思想で精神面に重きを置いた。
D海軍「条約派」 ⇔ 海軍「艦隊派
 条約派→国際条約を順守する戦力保持 艦隊派→日露戦争を踏襲、艦隊決戦中心
E外務省「枢軸派」 ⇔ 外務省「英米派」
 枢軸派→ドイツ・イタリアと同盟 英米派→英米と協調
F長州・薩摩出身 ⇔ 他県出身
 明治維新を成し遂げた毛利・島津、山口県・鹿児島県が主流派を形成。
G現役軍人 ⇔ 重臣・元勲
 現在の官僚制度にも十分反映している。実権を持つ現役は元総理の重臣さえ無視した。

対立は内閣と統帥部だけではない。それぞれの機構と部署、出身と思想から「他国との戦争に勝つ」と云う目的から外れ、機構・部署・出身の単位と感覚で対立関係がクローズアップされる。なべて内側の論理と倫理で対立、そこにエネルギーを割くほかはなく相対する国のことには、考えが及ばなかったことになる。情報・諜報は無いがしろにされた。司馬遼太郎が厳しく指摘するように「日本人の地理的隔絶性における民度(国際的比較能力)の低さが、夜郎自大の軍部」を産んだことになる。哀れなのは貧弱な武器・装備・食糧で戦争最前線に立たされた一般人中心の日本兵である。どこで戦うか知らされないまま輸送され、現地に着くまで少なからず輸送船が沈められ水没、相手の情報も不確かなまま突撃を強要され多くが即死・怪我・病死・餓死した。

昭和12年着工の戦艦「大和」

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