kurogenkokuです。
301冊目は
原発安全革命
古川和男 著 文春新書
原発に賛成か反対か。意見が二極化している中で、本書を読んだ率直な感想は「いずれにも属さない」ということです。言い換えれば、これほどまでに大きい事故を引き起こしてしまったいまの原発の問題点を踏まえ、それを解決するための提言を原発の視点で科学的でありながら、素人の我々にもわかりやすく説明しているのが本書ではないでしょうか。
トリウム原発。
著者の主張を簡単に要約すれば、@固体から液体へ、Aウランからトリウムへ、B大型から小型への3点です。
その背景として
・溶融塩というものに溶かした液体状のトリウム核燃料はメルトダウンを起こさない。
・トリウムはウランとは異なり、プルトニウム等の軍事利用に適した核物質を生み出さず、核拡散の恐れも少ない。
・トリウム溶融塩炉ならば核廃棄物を一緒に使って処理することができるため最終処理に大きな問題を残さない。
などの記述がありました。
一部懸念化されている液体核燃料利用は容器配管を腐食させやすいのではないかという問に対しては、溶融塩をフリーベ系(F、Li、Be)、容器配管をハステロイ-Nという特殊な合金と組み合わせることで対応可能としています。
なぜそこまで理想的な原発がこれまで導入されてこなかったのか。
私も率直に疑問を感じましたが、それも第9章に記述がありますのでご覧いただければ良いと思います。
著者は自然エネルギーの可能性について排除していません。最近のニュースでは地熱発電が取り上げられることも多くなってきました。でも現実的に考えると、それが失われた電力をすぐに補えるだけの課題解決策となるのか。最終的には政府の判断になりますが、原子力エネルギーは恒久的なものではなくあくまでもつなぎ役とする、それであって安全なものに置き換えるという著者の主張は検討してみる余地があるような気がします。
ところで著者は昨年12月に逝去されたとのこと。非常に残念な気がしてなりません。
【目次】
序 章 打開への道筋
第1章 人類とエネルギー
第2章 核エネルギーとは何か
第3章 今の「原発」のどこが間違いか
第4章 「安全な原発」となる条件
第5章 「原発」革命その一―固体から液体へ
第6章 「原発」革命その二―ウランからトリウムへ
第7章 「原発」革命その三―大型から小型へ 小型熔融塩発電炉FUJI(不二)
第8章 核燃料を「増殖する」
第9章 「革命的な原発」の再出発
第10章 核兵器完全廃絶への道

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