よくある笑いのネタに
「なんで遅刻したんだ!」
『教科書を忘れて取りに帰ってて・・・』
「言い訳するな!」
というパターンのがあります。『ほな最初から理由なんか聞くなや!』というやつです。
確かに最初と最後の言葉の矛盾が可笑しいのですが、遅刻して来た生徒に理由を問う行為はごく当たり前といえば当たり前ですし、一般的に遅刻して来た生徒の弁解に「言い訳するな!」と言う行為にも違和感や不自然さは感じません。ではなんで全体で見ると可笑しくなってしまうのでしょうか。
1つの解釈としては、最初から先生の本心には理由を聞く気などなく遅刻を咎める意味だけで「なんで遅刻したんだ!」と言っていると考えられます。ですが、それなら先生は最初から「こら!遅刻するなと言っとろうが!」と言えば良いのであり、先生は言葉の選択に改善の余地があるという事になります。
しかし、敢えて「なんで…」と聞いた所に意図・意義があるとすれば、「もし遅刻した原因が生徒にとってやむを得ないものであれば責任を問うわけにはいかないので確認する必要がある」という事が考えられます。つまり、「なんで遅刻したんだ!」という言葉は「やむを得ない事情でもあったのか?(あれば責任を問う訳にはいかないが。)」という意味として使われた事になります。
これに対し生徒は、前もって教科書を鞄に入れておけば、あるいは出る時に確認しておけば防げる理由を挙げています。これは先生から見てやむを得ない事情ではありません。
そこで先生は、やむを得ない事情があるかを聞いているのに生徒がやむを得ない事情ではない理由を挙げたので、「生徒がやむを得ない事情ではない理由で責任を回避しようとしている」と受け取って「言い訳するな!」と言う事になる訳です。
つまり「言い訳するな!」という発言における「言い訳」、すなわち世間一般で「してはいけない」とされている言い訳とは、「不当に責任を回避しようとする言い訳」、いわゆる「言い逃れのための言い訳」を指していると考えられます。だからこの場合の生徒は、やむを得ない事情を挙げるか、理由とともに素直に謝っておくべきである、と考えられます。
このように、相手の意図を考えないと使い慣れた言語であっても行き違いを起こす事がある訳です。だからコミュニケーションは奥が深い、と僕は思うのです。

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