先日の記事でも触れた・・・
「 労働搾取の厚生理論序説」岩波書店:吉原直毅(著)
・・・について、Amzonで私が書いたレビューを、こちらでも保存と宣伝・・・(といっても本ブログは閑古鳥が鳴いてますが)・・・の意味で、再掲しておきます。
800字という制限もあって内容の紹介だけで終わってる気もするけど・・・アマゾンのサイトに掲載した拙文も、少しだけ編集を加えて手直ししておきました。
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「搾取」という概念を現代的に蘇らせる名著, 2008/4/6
By 伊賀篤 "勉強不足のJCP党員" (静岡県浜松市)
本著は、まず従来のマルクス主義陣営内では当然の前提とされてきた労働価値の価格への論理的先行性、つまり労働価値学説と、より今日的な経済モデル下での「搾取」概念の維持(頑健性)が、実はトレードオフの関係である事が示される。逆に市場によって決まる「価格」情報を元に「搾取」の定式を再定義するのであれば、正の利潤の存在と搾取の存在の同値関係すなわち「マルクスの基本定理」が、旧来の「搾取」の定式では成立しない事が示されるより一般的な凸錘生産経済といったモデル下であっても成立する事が示され、現在でも尚「搾取」という概念が基本的に有効である事を4章までで数理的に明らかにしている。
また、5章では物的資本財の不均等な所有による社会の「階級」への分解と「搾取」の関係を示す「階級ー搾取対応原理」が、やはり新しい価格情報に依存した労働搾取の定式では、一般的な経済モデル下でも頑健である事が示されるが、しかしそれは一般に個人間で労働スキルが等しく所得や余暇への選好が等しい場合という限界も示される。それでもこの原理が「社会関係の再生産に関しての市場経済メカニズムが内在する一特性を明瞭にした」という位置付けは充分に説得的である。
こうした考察を元に、この本の最後では「労働搾取の公理」から議論されるべき搾取の定式について限定した上で、これら「労働搾取」に関する議論が資本主義経済に対する規範的特徴付けの為のものであって、その可能性に関して「自由な発展への機会の不平等」という独創的な搾取論を展開して終っている。
今日、格差社会化などでマルクスの議論が再評価される事が多いが、マルクスの議論を今日的な経済学のフレームワークにおいて如何に再構築されるべきかについて、本著ほどに体系的に議論された本は無く、その意味で数理的マルクス主義に関する歴史の中で、1970年代の置塩・森嶋らの議論の後で、久しぶりに特筆すべき成果を挙げたと位置付けされるであろう一冊と思われる。
******************(転載終わり)******************
私自身、数式は「おいおい」にでも追える様になりたいな・・・と思っている所ですが(笑)、叙述的展開を追うだけでも劇的な構成の本だと思いました。
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