中央線に揺られながらジェシカに少しずつ近付いていることを実感している「寝グセ
=母性本能をくすぐる」だと最近まで思っていた沖田です。
中央線で三重県まで一本、だが10時間かかる。アーモンドチョコを山ほど買い、ジ
ェシカと暮らした日々を思い出しながら10時間を過ごす。
動物好きなジェシカ、
スポーツジムで下半身ばかり鍛えるジェシカ、
初めて会った時に「ダンスが得意なの。フフフ」とか言って俺の周りをムーンウォー
クでグルグル回っていたジェシカ、
牛乳などの紙パックを開けるのが超下手で毎回グジャグジャにほじくり開けて「あー
あ、やっちまった」みたいな顔でこちらを見るジェシカ、加勢大周が好きなジェシカ
…ジェシカ、逢いたい…「会いたい」じゃなくて逢いたくて仕方がないんだ。
グフッ!グフッ!アーモンドが喉に詰まった。ゲフッ!あーびっくりしたー。
出会いに遡ろう。
だいたい予想はつくかと思うのですが、出会いは六本木だった。
猫好きな事をいいことに舞台「キャッツ」のオーディションを全てネコ語で挑み、後
日結果発表なのにその場で落ちた事を告げられたその日の夜だった。
ヤケ酒でもするかと六本木へ。
適当に良さそうな店に入るとそこには極上の美女達が。黒服の男に「今日は落ち込ん
でいるから癒し系のコを頼む」と注文し、待っていると黒谷友香似の美女がやってき
た。嬉しかったのだが、話していても緊張してしまって目も見れない。これではお金
がもったいないとチェンジを告げると黒谷友香似の美女は「な?!何でチェンジなの
よぉ!」と怒りだした。
「ごめん、君は確かに美人だ。それは素直に認める。…でもね、俺ブス専なんだ」
するとプライドを傷付けられた黒谷友香似の美女は黒服の男を呼び、俺をつまみ出す
よう指示した。せっかく首ねっこを掴まれたので「ニャーニャー」なきながら店を出
ようとすると、入り口のちょっと出っ張った所に、誰にも指名されずにつまらなそう
な絶対日本人ではない女が立っていた。女はさびしげに店内を見つめていた。
その女がジェシカだった。

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