2005年3月29日の記事を再掲させていただきます。
この番組に自民党が出した「異例のコメント」はこちらです。
http://blue.ap.teacup.com/paletoutseul/116.html
都教委も「申し入れ」をしました。こちらです。
http://blue.ap.teacup.com/paletoutseul/124.html
教育基本法改悪が強行されるまでに、教育問題を取り上げた同番組を数回見ました。最初に見たこの番組はまっとうな批判精神の感じられるものでしたが、こうした圧力(
ほかにもあります)によって徐々に変わっていってしまいました。どういうふうに変質したか、こちらに書きました。よろしかったらごらんください。
http://blue.ap.teacup.com/paletoutseul/1785.html(2006/11/15)
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「クローズアップ現代」を見ました。気づいたら10分過ぎてしまっていて、私が見たのは20分間だけだったのですが、やっぱりテレビはいいですね。文字だけでは伝わらない現場の雰囲気がちゃんと伝わってきます。
東京の深川高校を取材していましたが、校長先生がいろんなところにおられる先生方一人一人に「職務命令」(プリント)を手渡ししているのも奇妙だったし、(廊下を歩いている先生に廊下で「よろしくお願いします」と言ってプリント渡すんですよ。ヘンですよねぇ)裁判になったときのために、渡した時間を書類に残しておかないといけないといって、もう一人の先生が校長先生と一緒に回って、一人一人に渡した時間を表に記入していたのも、ものすごくヘンでした。こんなこと、普通は学校の中で起きないですよね。一人一人探してわざわざ手渡ししたり、プリント渡した時間を記録したりするなんて。これを見ただけで、「日の丸・君が代強制問題」がどんなに異常な事態なのかよくわかります。やっぱり映像は必要ですね。
後半は、横山教育長にキャスターの国谷さんがインタビューされてました。国谷さんは、及び腰でなく、核心をきっちり突こうという姿勢が明確で、好感の持てる聞き方をしておられましたし、ご自身もこの事態に疑問を持っておられるのだなあということも伝わってきて嬉しかったので、応援メールを書きました。
もう10年近くになるかもしれませんが、ずいぶん前に見たNHKの番組が、フランスのグランドゼコール(総合大学とは別のエリート養成機関)を取材していました。その創設理念は「良い市民を育てる」ことだそうです。良い市民とは、批判精神を持つ自立した市民のことです。
民主主義を確かにするためには、良い市民が増えることが必要です。一人一人が自分の足でしっかり立ち、多少の風には揺るがない強さを持っていなければ、いくら法が整っていても、民主主義は形だけの抜け殻になってしまいます。権力の横暴を許さないためには、こうした強い市民の連帯が不可欠です。自分の根をしっかり張らずに群れの中で風をよけて立っていることもできますが、こんな「もたれあい」は、強い風が吹いたらひとたまりもありません。群れごと風に吹き飛ばされてしまいます。
学校教育は、自分の足でまっすぐ立つことのできる大人を育てるためのものだと私は考えています。ですから、まず教える立場にある先生が、自立した市民であってほしいと願っています。「国歌斉唱や国旗掲揚に特に意見があるわけではないが、これを強制されることに抵抗を感じる」という深川高校の先生方の反応は、彼らが「良い市民」であることの証です。こういうりっぱな先生方がたくさんおられることは、東京の教育にとって、なんと喜ばしいことでしょうか。それなのに、これを誇るべき立場にある教育長が、逆に圧力をかけて苦しめているのですから、この方は、何のために学ぶのかまったくわかっておられない方なのでしょう。
自分で自分の首を絞めて、東京の教育の質を落とそうとしているとしか思えません。何でも上の言うまま、大勢に流されるままの先生ばかりの学校でどんな教育が行われるか、私はいやというほど見ています。
インタビューの内容を送って頂きましたので、転載させていただきます。
【NHK番組】都教委・横山教育長の発言
http://blog.livedoor.jp/suruke/archives/17445978.html
本日のNHKクローズアップ現代は「国旗国歌・卒業式で何が起きて
いるのか」でした。深川高校にカメラを入れ、国旗・国歌に揺れる学校
現場の様子を追っています。以下、横山教育長へのインタビュー部分です。
【国谷】:国谷裕子(くにや ひろこ)キャスター
【阿部】:阿部千恵子(NHK首都圏センター・記者)
【横山】:東京都教育委員会 横山教育長
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【国谷】
ご覧いただきました都立深川高校のように国旗・国歌についての
職務命令は都立の高校や養護学校の先生全員に卒業式の前に手渡され
ました。今年の都立高校の卒業式ではおよそ50人が命令に従わなかった
として処分される見通しとなっています。徹底した指導を行っています
東京都教育委員会、横山教育委員長(ママ)に先ほど聞きました。
【国谷】 横山さん、お忙しいところありがとうございます。
【横山】はいどうも
【国谷】国歌斉唱の際、国旗に向かって立つということそのものに対して、なぜいわば強制までして徹底をはかろうとされているのでしょうか?
【横山】まず最初にこれだけは申し上げておきたいんですが、最近、近ごろですね、学力低下の問題とからんで学習指導要領という言葉がよく耳にされると思うのですが、実はその小学校あるいは中学校・高等学校で児童生徒に教えるべき最低限の内容というのはこの学習指導要領に書かれている、えー、示されているわけですね。しかもその学習指導要領というのは法規性を有する、要するに法的性格を持っているわけですね。
そうしますと、その、教育公務員である教員には、いま申し上げたような学習指導要領を踏まえて、入学式や卒業式の指導を国旗・国歌の指導を行う、この責務があるわけでございますね。ちゃんと職責を果たしている教員のみなさんにとっては不本意なことではございましょうけれども、まあ、ごく一部とはいえ、こうした不適切な実態がありますことから、まあ、入学式や卒業式を適正に実施するために、教員、校長が教職員に対して職務命令を行っている、こういうことでございます。
【国谷】 国旗・国歌法が法制化されたときに、教育現場での強制はしないということを国は繰り返し答弁しているんですけれども、どうなんでしょう、この国の姿勢と都教育委員会の行ってらっしゃることの矛盾はありませんか?
【横山】 法規性を有する学習指導要領には一応書かれている、定められているわけですね。学校教育の中で行なっていることですから、それは強制うんぬんという話ではなくて、あくまでも学校教育の中で、教育課題の一つとしてやっぱり考えるべきだと思ってますがね。
【国谷】つまり内心でどのようなことを思っていても、形としての儀式は
整えたいということですか?
【横山】そこまで言うとですねぇ、例えば、内心ていうのは、最近の裁判例でも内心が内心である以上はこれは当たり前のごとく自由です。しかし実際に、学校行事における卒業式あるいは入学式というそういう場で、その内心が表に表れその式典を阻害するような行為があった場合に、そこまで自由ということはないと思いますがね。
【国谷】 あのどうなんでしょう、教師の方々への指導を強めてらっしゃるわけですけれども、この先、生徒への指導も強化されるお考えでしょうか?
【横山】 私どもは生徒がそういう式典で自分の意思で起立しないことをゆえをもって教員を処分したことはございませんので。あくまでも教育公務委員としての教員の姿勢について問うているわけですから。
【国谷】そうすると国歌斉唱の際には確認ですけれども、生徒たちに立つことを指導することはしないということですね?
【横山】いや、国旗を尊重する態度を育成するというのはどういう意味かというのはおのずから分かると思うんですが、例えば、いかなる場合にでもですね、そういう式典の中で国歌斉唱時というのはあの普通は、普通の常識から言ったら起立するもんじゃないでしょうかねぇ。あの尊敬をする、敬意を払うということは。そういう、その指導をしていただきたいと、こう申し上げているわけです。
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【国谷】 はい、お聞きいただきましたように、横山教育長は学習指導要領で定めていることから、職務命令を出して徹底するのは当然と繰り返し強調していました。
ここからは首都圏放送センターの阿部記者とともにお伝えしてまいります。
国は強制はしないとしているわけですけれども、なぜ都教育委員会は、教師の方々から見ていわば強制と思えるようなば強い姿勢で徹底をしようとしているんですか?
【阿部】あの、教育委員会はいまの学校現場っていうのはですね、自由や権利が重視され過ぎていて秩序が欠けていると考えているんです。まあ、厳粛であるはずの卒業式で多くの先生や生徒が立たないという学校があったことがそういう象徴で、学校が異常な事態にあるとしているんです。
そこで職務命令を出してでも国旗・国歌の徹底を図っていくことが学校現場の秩序の回復につながると考えているんです。
【国谷】 立つことに対して抵抗はなくても、職務命令を出されて立つことについては抵抗があるという方もいらっしゃいますが、押し付けられているという気分が強いのでしょうか?
【阿部】 そうですね。現場の先生方を取材しますと国旗・国歌そのものに対する考え方というのは非常に様々なんですね。
ただ処分をともなう命令というやり方には反対という人がほとんどでした。
その理由としては、学校は多様な考え方を教えて生徒に判断する力、それをつけさせる場なのに、一方的な考え方を押し付けるようなのはおかしい
それが聞こえましたね。
【国谷】 深川高校では全員が立ったということなんですけれども、学校全体、都立高校では50人が処分を受ける見通しだということですけれども、どんな処分を受けるんですか?
【阿部】 今週にも都教委は処分を言い渡す方針なんです。今回初めて立たなかった先生は戒告の処分になる見通しなんですが、去年に続いて立たなかった先生はより重い減給の処分になると見られます。
この問題は国旗・国歌の議論、国旗・国歌の是非についての議論というよりも、処分をともなう命令というやり方が教育現場になじむのか、そういったことが問われていると感じました。

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