囲碁棋譜に著作権はあるのか。プロの対局碁をネットで公開したらどうなるのか。棋士は職業として碁を打っている訳で、双方が知恵を絞って長時間対戦することは仕亊でもある。素人が遊びでやっているゲームとルールも姿かたちも同じだからといっても、棋士にとってはこれは間違いなく仕亊なのだ。
思想と創意工夫の塊のような囲碁の対戦譜を結果だけ見て単なる記録だから著作権はない。誰が使おうと自由だということになれば、大量に複製された映画のフィルムや印刷製本された書籍がネット上で大量に出回ることとどう差をつければいいのか。
音楽の楽譜には著作権があるのか。演奏しない楽譜を音楽といえるのか。お笑い芸人のギャグに著作権はあるのか。落語や漫才にも著作権はあるのか。能や歌舞伎に著作権はあるのか。恐らく、当初は伝統芸能文化には著作権の設定を想定していなかったものと思われる。今考案されたデザインとか作品とかを商業ベースの中で如何に守っていくか。それが次第に拡大して、勝手に盗用されて商業ベースに乗ったらどうするんだと、商標登録その他に波及して、日本棋院でも、棋譜が印刷されて付加価値をつけて棋士のあずかり知らぬところで利益を生み出したら、指を咥えて見ていろなんて、こんなバカな話はないと気色ばむのも無理はない。
創意工夫して命がけの碁を打った棋士を蚊帳の外において部外者が勝手に利益を掠め取っていくようなことは許しがたい。この思いは当然だと思います。
その結果、現実にはどのようなことが起こっているのか。私がテレビ観戦しながら記録した七局のNHK杯囲碁トーナメント、早碁新鋭トーナメント戦など未完成譜をなんとかきちんとした記録と照合して、全うな形に戻したいと調べてみました。日本棋院の棋戦記録には45回以降の対戦記録(棋譜はありません)、対局日対局者結果の記録があるのみで、それ以上古い物は遡って調べることが出来ません。
日本棋院以外のところでプロ棋士の棋譜を収集しているサイトがありましたが、全部が登録されているわけではなく、断片的なものです。
日本棋院が著作権を主張しても民間の個人なり、団体なりがチェスなどの著作権裁判の判例を基に棋譜には著作権なしと解釈して、世界中から「囲碁棋譜でーたーべーす」に投稿登録した物が集まっているわけです。
組織的集中的に電子化しているわけではないので、全局収集には程遠く、私が検索した七局中、「データーベース」で見つけられたのはたった一局だけでした。NHKで放映されてたくさんの人が視聴した対局でさえそのような状態です。
日本棋院には対戦記録さえ入力してないのです。このような裏方の仕亊にまで手が回らないのは明白です。ですから、隙を突いて棋譜で勝手に銭儲けをされてはかなわんと棋譜の公表を阻止してきたツケが、このように調べようとしても調べられない現状を作り出しているわけです。
一旦棋譜の入力閲覧をオープンにして人海戦術で棋譜の収集に努めるべきです。日本棋院では人手が足りず、出来ないから勝手にされては困るというのは了見が狭すぎます。
何故囲碁が老舗の日本を追い越して国際棋戦では中国や韓国が上位を占め、日本は歯が立たない状況になっているのか。
一つには棋譜を共通の財産として公平に公開して誰でもが勉強できるシステムを作った中国と、門外不出の伝統芸の形で師弟制度に拘った日夲との違いが出てきたのではなかろうか。師匠から飯の種を奪えばいいというわけではありませんが、現実に棋譜を調べようとしても漏れがこんなにたくさんあって、入力されていない棋譜が多すぎることに問題があります。人手が足りなくて出来ない状態をこのまま放置することこそ重大な責任問題と思います。
将棋の指し手や囲碁の定石に特許が認められたら、ゲームとして成立しなくなる。常に新手しか打てないとしたら、それは不可能なことだ。定石を組み合わせ、手筋を組み合わせ、石の形を組み合わせて、それですら千変万化。これに特許があったらゲームが自分で自分の首を絞めることになる。
そこで著作権を放棄することで、普及を図る妥協策が、判例となって、逆に世界中のゲームで食って行く職業の著作権を規制し、手足を縛ることに繋がっていったら、それはそれで困りものです。世の中うまくいかないものです。
利用する側の理屈としてはチェスなどのゲームの棋譜が対戦記録として単に事実を記録した物に過ぎないから著作権は発生しないとした裁判判例を楯に、大学の先生も著作権はないといっているとか、いろいろな有利な論拠を並べて棋譜には著作権がないと主張する。
ゆったりとした布石 嵐の前の静けさといった感じ

そうしなければ、われわれにはプロのように立派な碁は打てないわけだから、自由に棋譜が使えなければ一生碁について高いレベルの話は出来ないことになります。優れた囲碁のコンピュータソフトの開発も出来ないことにもなる。日本棋院が死守しようとしていることが世の中の進化を阻止しているとしたら、果たしてこれは正しい判断といえるのか。多勢に無勢で、棋譜には著作権はないのだと利用する側からの屁理屈が一方的にまかり通ることにもなる。
日本棋院などでは棋士の職業に関わることで、プロ棋士の棋譜には思想も創意工夫も生活権も賭かっていて、著作権は死守したい思いがあるに違いない。それは当然過ぎるほど当然なことで。プロの創意工夫には敬意も払っています。それでもなおかつ、このままで果たしていいのだろうかと、日本の囲碁界や周辺の技術革新の将来を憂えているわけです。
素人としては調べたい物がさっと調べられるようにはして欲しいと切なる願いなのです。只強くなりたいだけではない。調べたい欲求を満たしたい趣味の人もいるはずです。

【棋譜ソースです】
お手持ちの囲碁棋譜ソフト「ポケットゴバン」とかウェブサイト上の「棋譜なう」などに読み込んで再現してみてください。
(;GM[1]FF[1]SZ[19]NE[B]SS[@@]AP[StoneLeaf2]BR[八段]WR[八段]PB[陳嘉鋭]PW[青木紳一]DT[1994-11-20]RE[B+R]PC[NHK]EV[第42回NHK杯TV囲碁トーナ]GN[二回戦第15局]KM[5.5]OM[209]GC[テレビ放映を観戦しながら採譜。後で雑誌掲載棋譜と照合確認済み。];B[pd];W[dp];B[qp];W[dd];B[np];W[qj];B[fc];W[id];B[fe];W[df];B[db];W[cc];B[ib];W[pf];B[nd];W[qd];B[qc];W[qe];B[rc];W[qm];B[fq];W[dn];B[dr];W[cq];B[iq];W[dj];B[ch];W[ff];B[gf];W[fg];B[ee];W[de];B[cj];W[ck];B[bk];W[bj];B[ci];W[bl];B[dk];W[cl];B[ej];W[ge];B[hf];W[he];B[if];W[hc];B[hb];W[fd];B[gc];W[ef];B[gd];W[ed];B[ie];W[hd];B[jd];W[di];B[eh];W[ek];B[dh];W[dl];B[gh];W[fh];B[fi];W[gi];B[gj];W[hi];B[fk];W[hh];B[ik];W[kj];B[ji];W[jj];B[ij];W[ii];B[jh];W[gg];B[kl];W[lh];B[fe];W[gl];B[gk];W[bg];B[in];W[oq];B[nq];W[op];B[oo];W[nr];B[mr];W[pr];B[po];W[mq];B[ns];W[or];B[lr];W[qq];B[no];W[mf];B[me];W[pc];B[oc];W[oe];B[lf];W[ne];B[le];W[pb];B[od];W[ob];B[nb];W[mk];B[mg];W[nh];B[om];W[nl];B[lm];W[rd];B[qb];W[sc];B[sb];W[sd];B[oa];W[ho];B[gp];W[hn];B[fn];W[fl];B[hm];W[hl];B[il];W[fo];B[gm];W[fm];B[io];W[gn];B[im];W[hp];B[hq];W[ng];B[nf];W[of];B[pl];W[qk];B[pk];W[pj];B[ok];W[nj];B[ip];W[cr];B[cb];W[bi];B[bh];W[ah];B[rm];W[rl];B[rn];W[ql];B[rq];W[rr];B[rp];W[pp];B[sr];W[rs];B[go];W[er];B[fr];W[eq];B[es];W[nm];B[nn];W[bb];B[ba];W[lq];B[kr];W[ee];B[bc];W[bd];B[ab];W[kg];B[ic];W[fe];B[ig];W[qn];B[qo];W[dq];B[li];W[ki];B[kh];W[lj];B[lg];W[mh];B[dc];W[cd];B[cg];W[bf];B[eo];W[en];B[fp];W[hg];B[ih];W[je];B[jf];W[ds];B[fs];W[pm];B[ol];W[ec];B[eb];W[mm];B[mn])
上の画像は第42回NHK杯テレビ囲碁トーナメント2回戦第15局(1994年)11月20日放映の布石です。データベースにはありませんでしたが、手持ちの「NHK囲碁講座1月」に棋譜が掲載されていました。放映から一ヵ月半遅れで放映分の棋譜は掲載されます。トーナメントの全対局数が49局で、一年が51週として、全ての対局を放映できる企画になっています。バックナンバーを調べれば過去の全局が分かるはずですが、データベースはその全てをカバーしてはいません。

para1002n(ぱら仙人)
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