ちょっと珍しく私が二子の白番です。1994年9月24日(土)閑和夢楽(広島県福山市三の丸町新幹線ガード下にあった碁会所)での対局です。白31手までの未完成譜です。閑和夢楽での対局は対局中の採譜がありません。へぼ碁の棋譜を取りながらの対局は大袈裟で恥ずかしかったので、「棋譜をつけさせてください」とは云えなかったのです。大抵は一局だけ打って家に帰って思い出して棋譜をつけ、又再度出かけるのですが、もう一番どうですかといわれると勝っていても負けていても「もう結構です」とは云いにくいので、続けてもう一番打つことになります。
そういう場合は手合い割りも同じだったり、布石も似ていたりして、前後の盤面がごちゃごちゃになって結局、布石段階くらいしか頭に残っていないわけです。
この棋譜は夜中に、序(つい)でに27局全部入力してから寝ようと思って、眠気に誘われている最中に入力したので見落としがありました。棋譜は白から右辺の三間開きに上から軽く消しに行ったところを黒が桂馬に渡り、ボーシで模様を広げる三手(29〜31)が落ちていました。ですからコンピュータで継ぎ打ちの初手が16の十に飛びつけで実践とは違っていました。次は黒番ですから続きを打つとすれば、黒からは15の十に一間トビがいいところのはずです。果たしてコンピュータはそこを選ぶのでしょうか?
局面が分かれそうなところとか、手どころで果たしてコンピュータは何を選ぶのか、図らずもチョンボのお蔭で「次の一手問題」が出来ました。
こういう形で数手手を戻した所から果たして何が最善だったのか、次の一手を検討してみるのも面白いと思いました。コンピュータでこんな断片棋譜のいろいろな楽しみ方が増えていい時代になったと感心しています。
もう2〜3年先には、五、六段かもっと強く柔軟な発想のソフトが、白が検討しているときに別のエリアで同時に黒も検討を続けて、別々のエリアで検討した結果を三つ目のエリアで統合して判断する、そういうソフトの時代が来るのではないかと思います。
現在のパソコンでは他の作業が重なると優先順位のようなものが生じて待ち時間のロスが出るが、一つのパソコンに頭脳を二つ持った三つ持った、つまり、CPUを二台、三台搭載のスーパーパソコンとか、連結システムパソコンとかが実用化され、高速処理して本当の高段者と同じように瞬時に判断できる時代が来るかもしれない。
実践では黒Aに凹んで渡り 一方コンピュータはぴったりツケ

実践は黒Aに凹んで渡り、白はBと模様を広げて打ちました。続きは「天頂の囲碁3」四段思考時間無制限で黒の中押し勝ち。長考モードだと逆に白の中押し勝ちです。一体何がなんだか分かりません。
最初に棋譜を入力したときは白29、黒A、白Bの三手を見落として、黒28から続きをコンピュータ四段思考時間無制限にしたら、初手は譜の「い」に飛びツケでした。ここがそんなにいいところなら、左辺白Bの後にでも「い」の左に一間トビくらいのはずが、反対側の「ろ」に飛び出します。ここを出て行くほうが急ぐのは一目見て分かります。状況はどんどん変化してもうなかなか元には戻れません。
試しに白29のとき凹まなければどんな反撃があるのかと思って、四段時間無制限で続きを見たら、コンピュータは光っているところにぴったりツケました。流れは凹んで渡ったときとほぼ同じで、結果は黒の11目勝ちです。

【棋譜ソースです】
お手持ちの囲碁棋譜ソフト「ポケットゴバン」とかウェブサイト上の「棋譜なう」などに読み込んで再現してみてください。
(;GM[1]FF[1]SZ[19]NE[W]SS[@@]AP[StoneLeaf2]BR[4d]WR[4d]PB[不詳+天頂3]PW[仙人+天頂3]DT[1994-9-24(蝨・]HA[2]RE[B+R]PC[閑和夢楽]EV[ミニ閑和夢楽23]GN[二子白番]KM[0.0]OM[276]GC[白29手以降天頂の囲碁3四段無制限で]AB[dp][pd];W[pp];B[np];W[pn];B[nn];W[dd];B[jq];W[cn];B[gq];W[pl];B[qj];W[nl];B[lm];W[nc];B[qg];W[jd];B[cf];W[bp];B[cj];W[cq];B[dq];W[cl];B[cd];W[cc];B[ce];W[dc];B[qm];W[pm];B[rl];W[dh];B[ch];W[dg];B[cg];W[bd];B[pq];W[qq];B[oq];W[qr];B[ro];W[qo];B[rp];W[qp];B[lk];W[no];B[oo];W[op];B[mo];W[nq];B[mq];W[nr];B[mr];W[or];B[ee];W[de];B[df];W[ef];B[ff];W[eg];B[fe];W[di];B[be];W[gh];B[bc];W[bb];B[ad];W[fc];B[hg];W[hh];B[ig];W[ih];B[jg];W[ik];B[ke];W[kd];B[jh];W[le];B[lg];W[pc];B[qc];W[qd];B[pe];W[qb];B[rc];W[ob];B[gc];W[gb];B[hc];W[hb];B[ic];W[rd];B[re];W[rb];B[qe];W[sc];B[md];W[nd];B[me];W[ne];B[mf];W[ib];B[jc];W[kc];B[im];W[hl];B[hm];W[gm];B[gn];W[fn];B[fo];W[en];B[gl];W[fm];B[dj];W[ej];B[jb];W[kb];B[ie];W[pj];B[pi];W[qk];B[rk];W[oi];B[oj];W[pk];B[ph];W[nj];B[cr];W[br];B[cp];W[bq];B[co];W[eo];B[fp];W[dr];B[er];W[rn];B[qn];W[rm];B[ql];W[rj];B[sm];W[sk];B[sn];W[qi];B[sp];W[cs];B[po];W[oh];B[og];W[ng];B[nf];W[of];B[pg];W[nh];B[oe];W[rh];B[ns];W[sr];B[mi];W[on];B[no];W[nm];B[dk];W[jj];B[ji];W[ek];B[ii];W[dl];B[ci];W[hj];B[il];W[hk];B[ka];W[la];B[ja];W[mc];B[hi];W[jl];B[jm];W[bk];B[ab];W[ba];B[gi];W[fh];B[fj];W[fi];B[gj];W[gk];B[fk];W[fl];B[bo];W[bn];B[ha];W[id];B[he];W[ld];B[lf];W[je];B[ia];W[fb];B[ga];W[fa];B[bj];W[fd];B[hd];W[jf];B[kf];W[kj];B[ei];W[el];B[gg];W[eh];B[fg];W[ei];B[an];W[am];B[kl];W[os];B[jk];W[ij];B[ao];W[ms];B[ls];W[es];B[fs];W[ds];B[fr];W[ep];B[eq];W[rf];B[ki];W[lj];B[mj];W[mk];B[li];W[gd];B[ge];W[ak];B[ed];W[ec];B[kk];W[gl];B[bm];W[al];B[rg];W[se];B[qf];W[sf];B[sg];W[sd];B[sh];W[si];B[ni];W[ok];B[ns];W[rq];B[ap];W[aq];B[cm];W[dn];B[dm];W[ck];B[mm];W[ml];B[aj];W[mh];B[lh];W[od];B[pf];W[qh];B[of];W[ms];B[lr];W[sj];B[ns];W[db];B[ms])
私より強いコンピュータがいろんな場合の結果を見せてくれるのでとても参考になります。もう2、3年先にもっと強いソフトが出来たら、プロの棋譜をコンピュータにかけて低段者が自前で解説を書いて筆自慢の人ならプロの解説者より面白い解説をするかもしれません。著作権の切れた古棋譜なら使い放題で、もし、今打たれている棋戦の棋譜に著作権がないとなれば、一体この先どういうことになるのでしょう。
日本棋院や将棋界が棋譜はプロ棋士の知恵を絞った財産で棋譜そのものにも著作権があるといいたい気持ちがよく分かります。棋譜の著作権論争は論争にさえならないと高をくくっていますが、コンピュータのこんな使い方の時代までは恐らく想定していない状況での話だと思います。碁打ちや将棋差しを世間知らずの碁キチ将棋バカ程度に鼻で笑って棋譜を自由に公開するのは当たり前くらいに思っているととんでもない目に遭うかもしれません。

para1002n(ぱら仙人)
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