囲碁ソフト置き碁総当たりの3日目第3局は3子局です。3子局は置き碁で唯一、回転非対称になります。
黒番から見て左上隅が空き隅になるように、右上隅から石を置き始めて左下隅、最後が手前の右下隅です。これは上手が第1着を打ちやすいように上手側に近い隅を空けておくという我が国の?囲碁作法です。(中国の三子局の例をまだ見たことがないので)
3子の棋譜記録も通常はそのような向きで書き残されます。右下が空き隅の形は逆譜と云うことになります。
漢字の場合は、横画は左から右へ、縦画は上から下への筆順です。払いから留めで終わる「〆」などの書き順は右下が最後になるので、或いはこの運筆に倣って右下隅を空けるのが正しいと勘違いしている人もいるようです。正しいとか間違っているという以前に、そのような(置き碁の)作法に無頓着なのでしょう。
スカパーで置き碁道場とか、棋力向上委員会とか、四子とか五子とかでどのような順序で置石を置くのかあまり印象はありませんが、六子とか八子とかたくさん置くときは下手は一着一着ゆっくり丁寧に置きますから、順番がよく解ります。三番目はいつも右下隅で、四着目が左上隅です。
囲碁ソフトの置き碁は四子でも五子でも初めから一発で置いてある画像から始まりますから、ソフトを作る人にも手順は関係ないわけです。どのような置き方をしたのかはっきり分かるのは、非対称の三子の時だけなのです。ソフトの作り手の囲碁作法に関するこだわりが分かるのは三子局と云うことになります。
同じような囲碁ソフトがいくつかあれば、三子局の碁石の配置がどうなっているのか、そういうことからソフトの囲碁文化に対する姿勢を見分けられるようになるといいと思います。置き碁(指導碁)に拘っているソフトは今のところ市販はされていません。これからの夢の話です。
形勢有利でも小ヨセまで1目の差も間違えず正確に打ち続けるとか、不利でも理に適った手を淡々と打ち続けられるソフトはまだ市販されていません。圧倒的な強さでねじ伏せて勝てば小さいことは必要なかったからです。囲碁ソフトはそういう方向で進んできました。
本來なら必ず決着のつく攻め合い、詰碁はコンピュータ向きだし、必ず計算できるヨセはどんなに複雑でも人間よりはるかにコンピュータに向いているはずです。
ところが実践では、攻め合いや詰碁はフリカワリやコウがらみで、必ずしも局地戦で勝てても後手になるので、連打するフリカワリ先で帳尻を合わせられるとうまくいかないわけです。又、ヨセがいかに精緻であっても、中盤のねじり合いで圧倒的にリードされると、そんなヨセ技術は発揮する場がありません。ソフトが対局で負ければ、弱いという烙印を押されて、まったく売れない。
一番コンピュータ向きの攻め合い、詰碁や、ヨセが結局、後回しになって、いかに勝てるかと云う方向に開発工夫の目が向かってしまったわけです。
その上今は、各種各様の携帯端末にいかにゲームソフトを売り込み普及させるかの熾烈な競争の真っ最中で、市販のパソコン囲碁ソフトの開発時期ではなくなっています。パソコン自体が嘗ての32ビットから64ビットに変わったような画期的な変化がない以上、新しい囲碁ソフトの画期的な開発はできないわけです。
既に囲碁ソフトを1,2本持っている人が今更新しいソフトが出たところでさらに買うはずはありません。なにもコンピュータソフトと対局しなくても、実際に人間といくらでも打てるネット碁の時代です。ゲームソフトは一度行き渡ると頭打ちになります。
市場の開拓は、いかに携帯タブレット向けのソフトを既存の技術を磨いて低コストでリリースできるかにかかっています。そういう方向に今は目が向いているわけです。
囲碁ソフトでは黒番がコンピュータ、白番が人間なら、人間目線で白番側の盤面が表示されます。それはそれで理屈が通っていますが、コンピュータ同士対局の3子局はどちらもコンピュータだし、自動対局の場合は、白番側の碁盤も黒番側の碁盤も同じ位置に石がなければ困ります。
囲碁ソフトはそのような状況を想定していなかったのでしょう。どんな人がどのような使い方をするかは予測できない場合もあるでしょう。自由に置き石の位置を指定したり選択したりできると便利だと思います。
どのような配置にも対応可能なのは今のところ銀星の囲碁だけのようです。機能面から最も便利でいろいろなことが可能な総合ソフトです。
尤も融通の利かないのが天頂でした。コンピュータ黒番でも、人間同士の設定でも、右下隅が空き隅の配置にしかなりません。3子局は常に逆譜になってしまうわけです。sgfファイル変換すると対局者情報などが文字化けします。この訂正も毎回と云うことになると大変です。
最強はコンピュータ黒番の時は正常で白番は自動的に逆向きに設定されます。
AI囲碁は学習機能が働いているらしく、既定値として保存をチェックしていなくても、前回の状態が残っているようです。
天頂の囲碁4が3子置く場面はありませんから、通常は問題ありませんが、相手がプロの場合、逆向きでしか置けなくて、私(コンピュータ天頂)が3子も置かされることは想定していなかったので、経験がありませんとプロを相手にいい放てば、これは失礼なことになるのか、見上げたものだということになるのか。というより、おそらく天頂の開発者は如何に勝つかと云うことに頭が一杯で、三子の置き碁に関心がなかったのでしょう。
白番天頂の囲碁が受けて立つこの対戦では、常に逆譜状態で置かれます。右下隅が空き隅の形にしかなりません。碁盤反転してから開始しても、ファイルを呼び出すと逆譜状態に戻っています。
銀星囲碁はコンピュータ白番なら左上空き隅、人間白番なら逆譜状態、人間対人間の設定にすれば正常な配置に自動的になります。ですから好きな形に三子を置いて後から対局情報を変更すればいずれのケースにも対応できる柔軟性があります。とにかく総合囲碁ソフトとして、至れり尽くせりの機能が盛り込まれています。
ちなみにAI囲碁V19で置石テストしたところ、白番でも黒番でも左上が空き隅の3子、もしくはその逆の現象が起こり、設定段階でどちらを選ぶか選択権がありません。どうしても逆譜がいやであれば、sgfファイルなどで正常な左上空き隅で開始された棋譜を先に呼び出して、中断し、再び新規対局をセットすれば、規定値として保存をチェックしていなくても、していても関係なく学習機能で覚えている前回の左上空き隅の形から開始できます。つまり、いきなり3子で開始する場合には正常か逆譜かは前回の状態次第のようです。
大抵の囲碁ソフトが3子の置石には問題を抱えています。開始場面をテンプレートのようにユーザーが登録しておいて、呼び出して続きを打てば問題ないじゃないかと云うことでしょうが、それならなぜ初期状態で逆譜になるように不親切にしてあるのかそれが大疑問、大不審なのです。
初期状態では人間黒番目線で正常にしてあるのが尤も普通じゃないかと思うわけです。3子の置き碁の向きをはっきり意識しているソフトはどうやらひとつだけのようです。これはすべての囲碁ソフトに配慮していただきたいところです。ソフト開発者の皆さんぜひよろしくお願いします。
三子の対局では天頂が逆譜状態にしかできないので、初めから碁盤を反転し、黒番の銀星は人間対人間で新規設定した後で対局者を白番人間(天頂の囲碁4考慮時間120秒)に変更してから対局開始する方法と、正常な配置の銀星に対して、白番の天頂だけを盤面反転する方法とがあります。sgfファイル変換は正常な銀星側の碁盤ですればいいわけです。
この対局は何もいじらず天頂が右下空き隅に合わせて、三子黒番の銀星側も右下空き隅で始めました。データは逆譜状態で呼び出されます。
逆譜状態で始まった三子局

左上隅が原点ですから棋譜としては逆譜ではありません。囲碁作法に反した置き方の変則三子と云えるかもしれません。下手がこのように置いたのを誰も制したり咎めたりすることなく対局が始まってしまった。そんな感じです。
実際の銀星はどのような置き方にも対応できる柔軟さはあります。
銀星の評価値はゼロを持碁とする目数差で表現しています。
黒278手手どまり終局

右下の黒11目勝ちの表示は最終結果を固定表記してあります。初手からこの表示は変わりません。黒278アテコミは最終的には白に手入れが必要ですから1目の価値があります。
この後、下図の白279は白が打っても黒が打っても手入れは不要なのでダメです。手順としては既に274手辺りから後手2よりダメを急いだりして怪しいです。黒は勝っているので、不要な手入れまでします。そういうことで実際は12目勝ちが11目勝ちに変わっているのだと思います。
中国ルールでは自陣に手入れすることは地が1目減って盤上の生き石が1子増えるので何手手入れしても影響はありません。コンピュータにはとても優しいルールです。IT業界は当然中国ルールの方が便利なので、日本の発言力が弱まればいつでも中国ルール大歓迎だと思います。
天頂の形勢判断と地合い計算の微妙な違い

天頂の地合い予測では最終結果を12目と読んでいるようです。終盤の小ヨセのコンピュータの打ち方に興味のある方は下のボタンで再現してみてください。棋譜としては黒178手手どまり終局とします。
棋譜再生 第1回囲碁ソフト置き碁総当たり戦広島場所3日目第3局白番大関天頂の囲碁4対三子小結銀星の囲碁12、 278手白12目勝ち平均思考時間天頂1分38秒17/銀星17秒5
(ごめんなさい。アドレス書き間違えていました。修正しました。)
次回は3日目結びの一番。最強の囲碁新旧ソフト対決、4子局です。お楽しみください。

para1002n(ぱら仙人)
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