藤井聡太七段と青野照市九段の順位戦C級1組(8月28日)。対戦相手の青野九段は多分一度もタイトルを取らずに九段になった人。それでも長い間、A級に所属して、いろいろな戦法も開発し、将棋界にはかなり貢献した。
囲碁界にはタイトルに無縁だった九段は大勢いるが、将棋でも近年増えつつある。
近々のレーティングで云えば、青野九段が1413点で、現役全棋士163名中、137位の成績。藤井聡太七段は、レーティングランキングが2位。1848点。九段対七段ではとんでもない力の差に見えるが、現状の実力では九段と云えども、戦う前からとても勝ち目はない。
実践でも、序盤、中盤とどんどん形勢が悪くなる一方。右中段で銀がぐるぐる一周して4手損している間に、藤井七段の陣形はますます堅固になって、戦う意欲も失ったはずだ。
序盤中盤と次第に劣勢になる青野九段(左)

指せばますます悪くなって終局が早まってしまうので、何も指さずに時間ばかりが経過する状態が何度もあった。解説の人(今泉四段)も、もはや解説の領域ではなくなって、過去の功績を讃えるしか手がない。
紛らわしい所作を繰り返す青野九段(左)

急に深々と腰を曲げたり、駒台の駒に一瞬チョンと手を触れて、引っ込める仕草。記録係も対戦相手の藤井七段も投了の意思表示かと思ってびくっと反応する。そういう紛らわしい動作がその後、何度も繰り返された。しっかりプロとしての品位を学んでいる若手棋士はやらない『から打ち』も何度も繰り返された。縁台将棋でおじさんが気合を入れながら指しているようで品がない。盤外の心理戦の姑息な手段のようにも見える。
手番に九段が席を外されるとホッと一息、とりあえず投了はない

解説の人も表現のしようがないので、時間いっぱいまで将棋盤に向き合って、将棋棋士としての姿を見せ続けることで何かを後輩に伝えようとしておられる。感動した。と精神論に赱らざるを得ない状況。
確かに、初対戦で深浦九段にほとんど勝っていた将棋を最後の最後、土壇場で逆転された苦い経験が藤井七段にはあった。苛つかず、焦らず、じっくり投了を促す藤井七段の指し回しにも、まったく無反応のように長考を繰り返し、とうとう時間いっぱいまで粘り切った。
終局まで読み切った様子の藤井聡太七段(右)

プロならそこまで指すかと恥ずかしがるかもしれないが、素人なら、盤面を逆にして指し手が代われば、逆転もありうる形にはなっていた。私のような将棋を知らないものには、なるほど粘れば色々な手はあるものだなと感心したが、但しそれは、縁台将棋や、巷の将棋道場の素人将棋での話であって、実際に棋譜を残す職業将棋の世界では、いかがなものだったのだろうか。

para1002n(ぱら仙人)
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