
秋の気配が静かに近づきつつある、北海道千歳市……
息せき切って「宙マンハウス」に駆けこんできたのは、おなじみ農家の熊澤さん。
「お〜い、宙マンさん、宙マンさ〜ん!」
宙マン「やぁ、こんにちは、熊澤さん」
落合さん「一体どうなさったんですの、そんなに慌てて?」
ビーコン「ヒヒヒ、まさか怪物でも出たわけでもあるまいしっス♪」
熊澤さん「いやぁ……出たんですよ、その怪物が!」
ビーコン「……ええええっ、マジっスか!?(汗)」
宙マン「それはまた聞き捨てならないな。詳しく聞かせてもらえますか?」
熊澤さん「えぇ、ついさっき木の実を採りに山の中へ入ってったら……」
?「あんぎゃ〜!」
熊澤さん「ど、どっしぇ〜!……(驚愕)」
熊澤さん「……と、まぁ、そういう訳でして」
宙マン「なるほど……ありがとうございます、おかげでよく判りました」
ビーコン「簡潔にして要を得たご説明、感謝感謝っス〜」
熊澤さん「とにかく、あんなのに山ン中をウロチョロされちゃ物騒でしょうがないですよ。
宙マンさん、すいませんがまた一肌脱いでもらえませんかねぇ?」
落合さん「お殿様、どうしましょう?」
ピグモン「宙マン、熊澤のおじさんを助けてあげてなの〜」
宙マン「……う〜む」
と言う訳で、ただでさえ好奇心旺盛なことでは定評のある宙マンファミリー。
そんな話を聞いてしまっては、もはやじっとしてなどいられない――
さっそく一家総出で、熊澤さんが怪獣を見たという山の中へ入っていったぞ。
宙マン「熊澤さんの言ってた場所はこの辺……で、いいのかな?」
みくるん「はい、お話で聞いた限りだとこの辺だと思います〜」
ながもん「(ボソッと)間違い……ないはず」

ビーコン「千歳の山に詳しい、この二人が言うなら確かなはずっス〜」
落合さん「それにしては、それらしい物は何も見当たりませんけど……」
ピグモン「きっとどっかに隠れてるのかもしれないの〜」
宙マン「ピグモンの言う通りだ。みんなで手分けして探してみよう!」
四方に散らばって、山の中の探索を開始した宙マンファミリー+2。
だが、その様子を物陰から見つめる者がいた。
「ゲヒヒヒ……来やがったな、宙マンの野郎!」
そう言って、にやりと薄ら笑いを浮かべたのは怪獣軍団の一員・サラマンドラ。
何を隠そう、隠しませんが……
熊澤さんが見た巨大な影の正体は、このサラマンドラなのである。

千歳の山の中でわざと目立つように行動して、怪獣騒ぎを起こし……
宙マンが探索のために乗り出してきたところを、森に仕掛けた仕掛け罠によって
コテンパンにやっつけてしまおう、というのがサラマンドラの今度の企み。
イフ「なるほど、お前のやりたいことはよくわかったが……
しかし、少々作戦がシンプルすぎやせんか?」
サラマンドラ「いや〜、その捻りのなさがいいんですよ、魔王様!
と言うか、他の連中は作戦に凝りすぎて、却って失敗してますからね〜。
ここは一発、ガツンと王道の直球勝負でいくのが一番ですって!」
イフ「うむ、その意気やよし! 頼むぞサラマンドラ!」
……以上、説明を兼ねての回想シーン終わり。
サラマンドラ「しめしめ、宙マンの奴、まんまと釣られてきやがった。
さぁ、もっとこっちへ来い、こっちへ来い!」

自分が仕掛けたトラばさみの方に、そうとは知らず近寄ってくる宙マン。
その様子に、してやったりの含み笑いを堪え切れないサラマンドラ。
宙マンの足に、凶悪な罠が食い込むか……と、思われたその時!
ながもん「あ……みんな、見て……!」
サラマンドラ.。oO(……うわ、やっべ、見つかっちゃった!?(汗))
突然ながもんが発した大声に、あわてて木の陰に身を隠すサラマンドラ。
同時にその声を聞いて、宙マンたちがながもんのもとに集まってくる。
宙マン「どうしたんだい、ながもんちゃん!?」
みくるん「何か変わったものでも見つけたの?」
ながもん「うん。……見つけた」
相変わらずのポーカーフェイスで、ながもんが指差した先にあったのは――
宙マン「おおっ、落葉きのこ!」
晩夏から秋にかけ、北海道のカラマツ林に発生する食用キノコ・ハナイグチ……
ここ・北海道における通称を「落葉きのこ」。
アクのほとんどない下処理の手軽さと、様々な調理法で引き出される味の良さゆえに
極めて人気の高い山菜のひとつである。
落合さん「まぁまぁ、これは見事な落葉きのこですわねぇ……」
ピグモン「見て見て、あっちにもこっちにも一杯生えてるの〜」
ビーコン「味噌汁に鍋に、おろし和え……く〜っ、想像しただけでたまんねっス!」
宙マン「いやぁ〜、これはまさに宝の山だ、手ぶらで帰るわけにはいかないよ!
さぁ、みんな、ひとつ気合をいれてキノコ採りといこうじゃないか!」
一同「おーっ!!」
サラマンドラ「な、なんじゃそりゃ〜!?」
当初の目的をすっかり忘れ……サラマンドラの仕掛けた罠の方からも大きく外れて、
別の方向へとキノコ採りのために向かって行ってしまう宙マンファミリー+2。
……ああ、何という能天気!
これには思わず、脱力せずにはいられなかったサラマンドラであった。
……と、そんなこんなで小一時間ほど経って。
宙マン「いや〜、採れた採れた、大収穫だったねぇ!」
落合さん「これだけの落葉きのこがあれば、しばらくはコレで楽しめますわっ」
みくるん「あんなところに穴場があったなんて、私も驚きですよ〜」
ビーコン「ヒヒヒ、これもながもんちゃんが目ざとくみつけてくれたおかげっスね♪」
ながもん「(ボソッと)まーかしてっ。……ヴイッ」
どっさり、わんさか、落葉きのこの大収穫――
思いがけない山の恵みに、ほくほく顔の宙マンたちとコロポックル姉妹。
ピグモン「あ! でもでも宙マン、ちょっと待ってなの〜」
宙マン「ん、どうしたのかなピグモン?」
ピグモン「キノコがいっぱいとれたのは嬉しいことだけど……
でもピグちゃんたち、何か忘れてるような気がするの〜」
宙マン「うン? はて……
そう言われてみれば、確かに何か大事な用事があったような気も……」
宙マン「……ま 、 別 に い っ か ♪」
「いいわきゃあるか、アホンダラ〜っ!!」

凄まじい怒号が響き渡るとともに、グラグラと激しい震動が走り……
大地を二つに引き裂いて、巨大化したサラマンドラが地底からその姿を現す!
宙マンたちの能天気ぶりに腹を立て、自ら乗り出してきたのだ。
サラマンドラ「俺だ、オレオレ、“千歳の山の中に現れた怪獣”!
んな大事なこと忘れて、キノコ採りとかに夢中になってんじゃねーよ!」
みくるん「山の中の、怪獣?……あっ!」
ビーコン「そう言えばそうだったっス、すっかり忘れてたっス!」
サラマンドラ「ようやく思い出しやがったか……つーか忘れんなや、バカタレ!」
宙マン「いやぁ、申し訳ない、私としたことがとんだ失礼を……。
お詫びと言ってはなんだが、君も我が家のキノコ料理を食べていかないか?
落合さんの作る大根おろし和え、ほんと絶品だよ〜」
サラマンドラ「(わなわな)ァあ、キノコ料理、だとぅ……?」
……ぷ ち っ !
サラマンドラ「うが〜っ、バカにしやがって、バカにしやがって〜!!」
どこまでも能天気な宙マンたちに、遂にブチ切れサラマンドラ!
鼻先からの火炎噴射によって、千歳の街を次々に破壊していく。
ピグモン「あっ!」
サラマンドラ「ちくしょ〜、なにがキノコ料理だ、何が我が家の絶品料理だよ!
ちったぁ真面目にやれ、コンチクショー!」
宙マン「むうっ……そのセリフ、聞き捨てならないな!」
宙マン「食べもしないで、落合さんの手料理のことをバカにするとは……
どういう料簡だ、断じて許すわけにはいかないぞ!」
ビーコン「へっ!?……アニキ、怒る理由ってそっちっスか!?(汗)」
落合さん「ああ、お殿様、感激です……♪(うっとり)」
宙マン「ようし……行くぞ! 宙マン・ファイト・ゴー!!」

(やや筋違い気味の)怒りに燃えて、颯爽と巨大化する宙マン。
さぁ行け、サラマンドラをやっつけろ!
宙マン「さぁ謝れ、今すぐ落合さんに対して謝りたまえ!」
サラマンドラ「だ〜っ、何をワケわからん事を! 行くぞコラ!」
宙マン「聞く耳持たずか……やむを得ん!」
サラマンドラ「くらえ、このヤロ!」

サラマンドラの火炎噴射を、プロテクションで無力化する宙マン。
それを合図に、左右から走り寄って激突する宙マンとサラマンドラ!
サラマンドラ「あんぎゃ〜っ、宙マン、腕ずくでひねり潰してやるぜ!」
落合さん「お殿様、頑張って下さいませ!」
ビーコン「フレーフレー・アニキ〜、ファイトっス〜!」
ピグモン「宙マン、がんばってなの〜」

せっかくの罠が空振りに終わった鬱憤を、まとめて叩きつけてくるサラマンドラ!
ファミリーの応援を背に受けて、その猛攻を真っ向から受けて立つ宙マン。
巨体と巨体が激しく渡り合い、超パワーの激突が大地を揺るがす。
サラマンドラ「コンニャロ〜、くらえっ!」

爪の一撃、尻尾の一閃!
怪獣サラマンドラ・怒りの猛攻が、宙マンを徹底的に叩きのめす。
サラマンドラ「まだまだ、次はこいつを受けてみな!」

鼻からのロケット弾が、宙マンの周囲で炸裂!
宙マン「ぐわぁぁっ……!」
連続攻撃の前に、遂にダウンしてバッタリ倒れてしまった宙マン。
サラマンドラ「ナメまくりやがって……あんぎゃ〜っ、次でとどめだ〜!」
宙マン「なんの!」
くみし易しと、勝ち誇って近づいてくるサラマンドラ――
その油断を見逃さず、宙マンのヘッドビームがサラマンドラの喉を射る!
サラマンドラ「ぐぎゃああっ……ゴホ、げほげほっ!」
弱点の喉を攻撃され、激しくむせ返りながらのたうつサラマンドラめがけて
ジャンプ一閃、空中から踊りかかっていく宙マン!

渾身のパンチで、サラマンドラの横っ面を思い切り殴り飛ばす!
痛烈きわまる一撃に、サラマンドラがふらふらになったところへ――
宙マン「とどめだ! 宙マン・エクシードフラッシュ!!」
サラマンドラ「うぎゃああ、激しくナットクいかねえぞ〜!?」
やったぞ宙マン、大勝利!
イフ「おのれ宙マン、サラマンドラの罠までもを破るとは……
ぬうう、どこまでも悪運の強い、恐るべき奴よ!
だが覚えておれよ、この次は、この次こそは必ず……!」
かくして宙マンの活躍により、怪獣軍団の刺客・サラマンドラは打ち倒され
千歳市には、またもとの呑気な時間が戻ってきた。
ながもん「おつかれさま……宙マン」
みくるん「宙マンさん、今日もとってもカッコよかったです〜!」
宙マン「はっはっはっはっ、みんなが応援してくれたおかげだよ。
……っと、怪獣と戦ったおかげですっかりお腹がすいてきちゃったな。
さっそくだけど落合さん、キノコ料理パーティの準備をお願いできるかな?」
落合さん「はい、只今っ!」
ピグモン「はうはう〜、ピグちゃんいっぱいおかわりしちゃうの〜♪」
ながもん「私も、私も。…………ジュルリッ」
落合さん「まぁまぁ、どうしましょう?
こんなに食いしん坊さんがいっぱいですと、今日採れた落葉キノコだけで
足りるかどうだか、ちょっと心配ですわね〜(微笑)」
ビーコン「いやぁ、なになに、ご心配には及ばないっスよ、落合さん!
もし今日のキノコが足りなくなっても、落合さんにはとっておきのが……
ヒヒヒ、
オイラの特別誂えなキノコがあるじゃないっスか♪」
げ し っ !
落合さん「謹んでお断りです、そんなおぞましい毒キノコっ!(怒)」
ビーコン「どひ〜っ、オイラの股間の
レントンがアイ・キャン・フライっス〜」
宙マン「はっはっはっはっ」
季節が秋へ向かっても、ますますホットな千歳の宙マン。
さぁ、次回はどんな活躍を見せてくれるかな?

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