黒塗りのスバルこと(笑)デーモンカーや、SATカー・SATバギーなどの
豪華なカースタントアクション、合体変身という設定の妙、
月〜金、一日10分の帯番組という放映形式の独自性、
それに早瀬ユリの網タイツなどなど(笑)、低予算番組とは言え
汲めども尽きぬ魅力を湛えた「トリプルファイター」ですが・・・
個人的にはそれに加えまして、毎回登場するデーモン怪人たちの
「かまし」もまた、その大いなる魅力のひとつとしたいところです。
首から下が黒タイツという、低予算番組の苦しい台所事情の中において
それでも「全宇宙に悪名高き侵略者集団」のイメージを懸命に打ち出すべく、
これらデーモン怪人たちは毎回毎回、自分がいかに凄い怪人であるかを
台詞によって過剰なまでにアピールしてくれるわけですよ。
曰く「勝利しか知らない怪人、それが俺だ!」(ドラッガー)とか、
「7つの惑星を滅ぼした恐怖の怪人」(ブルーコンドル)とか、
「デーモン怪人軍団・最強の切り札」(ブラッドパワー)などなど・・・。
そうした数々の「デーモンかまし」の中でも一際印象深かった怪人の一人が、
先だってご紹介させて頂いた「司令怪人バービーブー」の無二の友である
「竜巻怪人テンパーショー」であります。
・・・というわけで、まずは本編中におけるその「かまし」っぷりから。
「俺は惑星アポレーを征服して、故郷デビル星に帰ってきた。
我が友・怪人バービーブーと再会する事を一番の楽しみにして・・・。
しかし・・・しかし!
俺を待っていたのは、バービーブーの死の報せだった。
バービーブー・・・我が友、バービーブー!
(中略)
デーモン様、バービーブーの復讐をさせてくれ・・・!」
「バービーブーの復讐?」
「頼む、俺の悲しみを・・・」
「お前の悲しみのために、デビラやデーモンカーを使うことは出来ない!」
「・・・・・・一人でやる」
「相手はトリプルファイターだ」
「知っている・・・・・・必ず倒す。
俺には、このテンペストスティックがある・・・
デーモン様、復讐させてくれ。・・・誓う、あの三人を必ず倒す!」
「よし・・・デビラ達の使用を許可する。
その代わり、必ず倒せ!・・・行け、怪人テンパージョー!」
「ははっ!」
(以上、青字はテンパージョー、赤字は司令官デーモンの台詞)
・・・うわぁかっこいい!(笑)
このやりとりでまず、通常のデーモン怪人とは明らかに一線を隠す
「親友の仇討ちに燃える復讐鬼」としてのキャラクター像を強烈に印象づけ、
それ以後にも「バービーブーの散った場所に追悼の花束を捧げる」、
「ありし日のバービーブーとテンパージョーが、がっちりスクラムを組む新撮の回想カット」、
・・・などなど、細かな描写の積み重ねによって、ゲスト悪役キャラとして
ぴしっと一本筋の通ったところを見せてくれます。
何しろ何かにつけては「おお、バービーブー! 我が友バービーブー!」といった調子で
大仰に嘆いてくれるものですから、さすがに見ていて「お腹一杯」にもなりますけれども・・・
でもまぁ、バービーブーも死してなおここまで想ってもらえるならば本望でしょう。
もしも本放映中に「トリプルファイター」のコミカライズ担当者が今道英二先生であったなら、
この辺りかなり味わい深く漫画化して下さっただろうな・・・とも思います。
いずれにせよ、地道で丹念な「描写の積み重ね」と「台詞の吟味」が
こと「キャラクター」を描出し、一個の個性として定着させる上でいかに重要か・・・
様々なキャラクターが市場に溢れ返る現在、30年近く前の低予算番組から
改めて私たちが学ぶべき事柄というのは、実は決して少なくないのではないでしょうか。

0