
毎日、毎日が氷点下、吐く息さえ凍りつきそうなマイナス気温……
そんな冬の寒さを逆手にとって、2月の北海道では各地で冬のイベントが花盛り。

もはや押しも押されもせぬ知名度とスケールで展開される「さっぽろ雪まつり」に
宙マン一家の住む千歳市の「支笏湖・氷濤まつり」。

勿論それ以外の地域でも、工夫を凝らした楽しい冬の催しが盛り沢山なのである。
さてさて、そんな大前提のもとに幕を開けた『飛び出せ! 宙マン』。
今回はお馴染み・宙マンファミリーのホームグラウンドである北海道千歳市を離れ
北海道第二の大都市、旭川市から物語を始めよう。
ピグモン「はうはう〜、旭川とうちゃく〜! なの〜」
宙マン「いや〜、やっぱり冬場の旭川は冷えるねぇ!」
落合さん「やっぱり伊達じゃありませんわねぇ、道内屈指の寒さは(苦笑)」
ビーコン「いっそこのままUターンして、千歳に帰っちゃうっスか?」
落合さん「なんのなんの、とんでもない!
せっかくここまで来て、冬の旭川を満喫せずに帰れるものですかッ」
宙マン「そうとも、そのためにわざわざやって来たんだからね、私たちは」
ピグモン「ピグちゃんとっても楽しみだったの〜、旭川冬まつり!」

戦後間もない1947年から旭川で行われていたイヨマンテ(熊祭り)を前身として……
1960年に初めて開催されて以来、今年で56回目を数える「
旭川冬まつり」。
北海道を代表する冬のイベントの一つで、さっぽろ雪まつりの約200万人に次ぐ
約100万人規模の来場者数を誇っている。

旭川市内に駐屯している、陸上自衛隊第2師団の諸部隊が中心となって製作される
世界でも最大規模の大雪像の迫力は勿論のこと、市民グループの作る小雪像群、
透き通る美しさの「氷彫刻世界大会」に加え、会場周辺においての氷の滑り台、
チュービング、巨大迷路、スノースケート、ミニ列車、馬そり試乗などといった
各種アトラクションも用意され、飲食や土産物販売の出店「冬マルシェ」もあり
まさに旭川の冬を、五感のあらゆる箇所で満喫できる一大催事なのである。
落合さん「第56回冬まつり、今年のテーマは“光の国からみんなのために”……」
ビーコン「でもって、そのメイン雪像がウルトラマンと来た日には、ねぇ!」
宙マン「やはりしっかり現地に出向いて、直に見てみたくなっちゃうよねぇ。
普段から光の国の人たちには、ひとかたならぬお世話になってることだし……」
ピグモン「はうはう〜、雪像になってもウルトラマンはかっこいいの〜」

ビーコン「……と言ったトコで、落合さん。
まずはみんなで、会場限定グッズでも買いに行かねっスか?
ヒヒヒ、転売の利益が出たら落合さんに分けてあげてもいいんスよ〜♪」
落合さん「だーっ、ビーコンさんったら、口を開けばそんなことばっかり!
冬まつり会場と言えば、何をおいても雪像見物からでしょうに」
宙マン「いやいや、冬マルシェで何か美味しいもの食べるのも捨てがたいよ!」
ピグモン「ん〜、楽しそうなものばっかりで目移りしちゃうの〜」
「あっれぇ、もしかして宙マンさんたち!?」

会場内で気さくに声をかけてきたのは、これまた馴染みの顔……
「宙マンハウス」のご近所さんこと、リン・レン姉弟の“ザ・クリプトンズ”。
大雪像前に設けられたステージでは、「旭川冬まつり」の開催期間中、音楽、舞踊、
お笑い、ラジオの公開録音などのイベントが行われており、そのゲスト出演者として
人気の音楽ユニットであるリン・レン姉妹にもオファーがあったと言う次第。
リン「わぁ、やっぱり宙マンさんだぁ〜」
レン「旭川まで来てたんですね、フットワーク軽くて流石だなぁ」
宙マン「やぁ、こんにちは!」
ピグモン「あ、リンちゃんにレンくん、こんにちはなの〜」
落合さん「お二人は例によってお仕事ですか、寒い中お疲れ様です」
リン「いいえ、いいえ、みんなが私たちの歌を聴きたいと思ってくれる限り……」
レン「ボクも姉貴も、地球上の……ううん、宇宙のどこにだって飛んできますよ!」
ビーコン「いよっ! 人気者! 商売繁盛ケッコウなことっスね〜」
宙マン「ちなみに、クリプトンズの出番はいつからなのかな?」
レン「ア、はい、このあとお昼の12時からでーす」
リン「思いっきり盛り上げて、うんと楽しいステージにしようって思ってます。
よかったら宙マンさんたちも見に来て下さいね、無料ですから!」
落合さん「ええ、それはもう、是非とも!」
ピグモン「はうはう〜、とっても楽しみなの〜♪」
「ぐっふふふ、だがしかし……
楽しい時間は、この瞬間をもって終了だ!!」

突如として!
石狩川河川敷の「旭川冬まつり」会場に、高らかに響き渡った不吉な宣言。
会場内に集まった人々の間に、みるみる困惑のどよめきが広がっていく。
ピグモン「やぁぁんっ……こ、怖いの〜(涙目)」
落合さん「一体誰でしょう、こんなタチの悪いイタズラを――」
ビーコン「(一方を指差し)ちょ、もしかしてアイツじゃないっスか!?」
「ぐっふふふ、そう……その通り!
ぐふふふ、ぐふぁーっはははは!!」

おお……見よ! 驚愕せよ!
冬まつり会場に姿を見せた一人の宇宙人が、哄笑とともにみるみる巨大化して
天を衝くばかりの巨人と化した、その驚異の瞬間!
宙マン「(目を見張り)おおっ!」
レン「確か前に、ながもんちゃんの怪獣図鑑で見たことあるぞアイツっ。
ええと、何だっけな……そうだ、そうそう、ゴドラ星人!」
「左様、正解、我輩はゴドラ星の歴史上もっとも秀でたる戦士。
その名も気高きランベルト、そして怪獣軍団最強の戦士でもある!」
リン「(口の中で)ゴドラ星人、ランベルト……!」
宙マン「そのゴドラ星人が、冬まつり会場にいったい何の用だ!」
ランベルト「ハ! 知れたこと――」
ランベルト「地球征服が悲願の我らにとって、邪魔するヒーローはにっくき仇。
あてつけがましく、ウルトラマンを冬まつりのシンボル雪像にしようなど……
気に食わないから祭りもろとも潰してしまえと、魔王様のご命令なのさ!」
ビーコン「……っかぁー、あのオッサン……また八つ当たりっスか!」
落合さん「全くもう、いつもながら懲りない方ですわねぇ!(呆れ)」
イフ「……えぇい、うるさいうるさい、気に食わんものは気に食わんのだ!
構わんランベルト、当初の予定通り旭川冬まつりをメチャクチャにしろ!」
ランベルト「承知、お任せ、魔王様!」

突然の巨大な闖入者に驚き、うろたえ、右往左往して逃げ惑う観光客たち。
その混乱をアザ笑うかのように進撃する、ゴドラ星人ランベルトの右手の鋏から
一瞬の閃光とともに、恐るべきエネルギー弾が発射された!
落合さん「きゃ、きゃあああっ!?」
ビーコン「うわ、うわ、うわ〜っス!(汗)」
ランベルトぐっふふふ、見たか、知ったか……必殺ゴドラガンのこの威力!」

爆発! 炎上!
人々の悲鳴と炎の中で、憎々しげに哄笑するゴドラ星人ランベルト。
そして、その炎の熱が「旭川冬まつり」に深刻な被害をもたらしていた――
リン「ああ〜っ、こっちの氷像がどんどん溶け出しちゃってるぅ!」
落合さん「……あら嫌だ、あっちの雪像もですわ!」
ピグモン「どうしよう、これじゃ冬まつりが台無しなの〜(涙目)」
レン「(苦渋)ヒドイよなぁ、みんなが楽しみにしてた冬まつりなのに……!」
ビーコン「まさかこのままジエンド・オブ・フユマツリっスかぁ〜!?」
宙マン「いいや、そうはさせない! 宙マン・ファイト・ゴー!!」

閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、暴れ回るゴドラ星人ランベルトの前に立ちはだかる!
宙マン「トゥアーッ! 宙マン、参上!
ゴドラ星人ランベルト、これ以上の乱暴な真似はこの私が許さないぞ!」
ランベルト「笑止、下らん、言ったはずだぞ宙マン!
我輩はゴドラ星でも、怪獣軍団でも最優秀の戦士なのだと。
いかにお前が銀河連邦の英雄でも、我輩に勝てるものか!」
宙マン「ならば試してみるか! さぁ来いランベルト!」
ランベルト「小癪なっ!!」

「旭川冬まつり」の会場を舞台に、激突するふたつの巨体……
片や怪獣軍団の刺客・ゴドラ星人ランベルト、片や正義の味方・宙マン。
落合さんたちの見守る中、パワー全開の攻防戦が火花を散らす。
宙マン「邪悪な鋏など、私のスーパーボディには通用しないぞ!」
ランベルト「抜かせ、はざくな、勝負はこれからだ!」

雪煙を巻き上げながら、猛然と激しい格闘戦を繰り広げる両者。
パワーとパワーを真っ向からぶつけ合う格闘戦、勝負は互角かと思えたが……
宙マンの繰り出した水平空手チョップが、まずはその均衡を破った。
ランベルト「ぐほぉっ!」
宙マン「ようし、ミラクルキックでとどめだ!」

ランベルトがよろめいた隙を突き、大空高くジャンプする宙マン。
空中回転とともに、電光石火の必殺キックを放とうとするが……
素早く態勢を立て直したランベルトが、空中へとゴドラガンを発射した!
シュバババババッ!
エネルギー弾の直撃を受けてバランスを崩し、地上へ墜落する宙マンの巨体。
ピグモン「ああっ、宙マンが!」
リン「まさかあのタイミングで、宙マンさんを撃ち落すなんて――」
レン「や、ヤバいよ姉貴、アイツほんとに強くね!?」
ランベルト「ぐっふふふ……左様、正解、我輩は強い!」
う、うわぁぁぁぁ……っ!!」

爆発! また爆発!
連射されるゴドラガンの威力に、大きく吹っ飛んで地に叩きつけられる宙マン。
宙マン「(苦悶)う、うう……っ!」

ビーコン「どひ〜っ、このままじゃホントにアニキがやられちまうっスよォ!」
落合さん「お殿様、しっかり……頑張って下さい、お殿様っ!」

全身を覆ったダメージに、なかなか立ち上がれない宙マン。
とどめを刺さんと、鋏の開閉音を響かせながらランベルトが迫ってくる。
ゾネンゲ博士「おおっ、やりますなランベルトの奴……
戦況は圧倒的にランベルト優勢です、今度こそ勝てますな魔王様!」
イフ「わははは、これで地球はワシら怪獣軍団の物だ!」
ランベルト「とどめ、フィナーレ……さぁ、死んでもらうか宙マン!」
宙マン「――なんの、これしきっ!!」

連射される必殺ゴドラガン!
が、それらのエネルギー弾は、今度は宙マンの回転戦法で全て回避された。
ランベルト「(驚き)な、何ッ!?」
宙マン「はっはっはっ、同じ手が二度も私に通じるものか!」
ランベルト「ぐぬぬぬっ、なんたる嫌味、なんたる余裕!」

怒り、猛然とゴドラガンを乱射してくるランベルト。
それらエネルギー弾を、プロテクションで全て受け止め、無力化したところへ――
宙マン「とどめだ! 宙マン・エクシードフラッシュ!!」

全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、ゴドラ星人ランベルトを直撃!!
ランベルト「ぐはぁぁっ! お、おのれ、宙マンめぇぇっ!……
……あ、あとは任せた……この仇、わ、私の……カタキを――」
ランベルト「残念、無念……う、う、うぎゃぁぁぁぁっ……!!」
やったぞ宙マン、大勝利!
リン「やったぁ!!」
レン「さっすが宙マンさん、そうこなくっちゃ!」
ピグモン「はうはう〜、宙マン、ほんとにありがとうなの〜」

かくして我らが宙マンの活躍により、ゴドラ星人ランベルトは撃退され……
冬の一大娯楽「旭川冬まつり」の平和と、人々の笑顔は無事に守り抜かれた。

そして予定通り「冬まつり」会場内、ウルトラマン大雪像前のメインステージでは
ファイル星人リン・レン姉妹のユニット“ザ・クリプトンズ”によるパフォーマンスが
元気一杯に繰り広げられ、体感温度を上回る熱気で盛り上がったのであった。
宙マン「はっはっはっはっ……
いやぁ、旭川冬まつり、実に最高だねぇ! ブラボーブラボー!」
と言う感じで、冬の旭川を絶賛満喫中の宙マンファミリー。
だが、そうなると面白くないのは、勿論……。
イフ「ぐぬぬぬっ……またしても、またしても宙マンめが!
どこまでワシらの邪魔立てをすれば気が済むのだ、にっくき奴め!」
ゾネンゲ博士「お、お気をお鎮め下さい、魔王様!」
イフ「えぇい、黙れ! これが落ち着いてなどいられるものか!
奴のために、ワシらがまたも失敗の煮え湯を呑まされ――」
ゾネンゲ博士「いいえ、まだまだ失敗ではございません、魔王様。
ランベルトは力及ばず敗れましたが、共に地球へ向かったランベルトの相棒は
既に旭川の地において、次の行動を開始したところでございます」
イフ「……なに、それは真かっ」
ゾネンゲ博士「はい、魔王様。
宙マンめの素っ首は、必ずその“第二の使者”が持ち帰りましょう!」
イフ「よかろう、ならば吉報を楽しみに待つとしようではないか――
怨み重なる宙マンめを、二度と生かして旭川の外に出すな!!」
ゴドラ星人は斃れたものの……
まだまだ、旭川にかかった悪の暗雲は晴れず。
宙マンファミリー、気をつけろ!

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