2011/9/28
私の住んでいる町を通るJRの列車は昔ながらのボックス席であることが多い。私はボックス席の方が好きだ。顔の横に窓があるし、食べ物も食べられるし、前の人がすぐ近くにいて、この人はどんな人だろうと想像を巡らせるのも楽しい。時には会話が弾むこともある。
さて、先日私の前に座った人は、20代と思しきなかなかの好青年。背筋をピンと伸ばして分厚い本を読んでいる。そして時折、その内容を覚えるかのように、または、味わうかのように、遠嶺に目をやる。その眉目が端正で美しい。さて、気になるのはそれが何の本であるか。最初は、その分厚さからして、六法全書かと思った。たぶん司法試験を受けるので、一生懸命に覚えているのだろう。・・・しかし、なんとなく違和感がある。もう一度その青年を見ると、胸に十字架がかかっている。そうか、神学生か。神父様になった姿を想像すると、ぴったりと収まり、まったく違和感がない。そう納得すると、その青年の胸に今去来している想念が思われ、ますます好ましく感じられるのだった。

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