2007/5/25

富永まい監督 ロングインタビュー  01  インタビュー
F:ではまず、生い立ちその他、パーソナルな事から伺ってよろしいでしょうか。
お誕生日は?

T:12月12日です。

F:血液型は?

T:A型です。

F:おお、それはなんとなくそういう感じがしてました。
作品の折り目が正しい、っていうか・・ご出身は。

T:東京都武蔵野市です。

F:東京人なんですね。ご家族の構成は?差し支えなければ・・・

T:両親に、三姉妹・・私が長女です。武蔵野市の決して広くない団地で、
それこそ姉妹くっつきあってころげまわって育ちました。

F:正しい育ち方しましたねえ・・・子供ってそれがなによりですよ。

T:そうですねー。私たちのころは、とにかく子供の数が多くて、外で遊んでいても、
とにかくわらわら子供がいる。みんなからまりあって遊んでる感じでした。

F:素晴らしい。好きなTV番組とかは?

T:それが・・・・実は家にTVがなかったんです。

F:えっ!!それって、「紀子さま」みたいじゃないですか!

T:状況的には(笑)。たしか、私がまだ幼稚園だった頃、家のTVが壊れまして。
で、よくは覚えていないんですが、その時、私が友達のうちでTVのワイドショーか何かを見て、確か「中ピ連」(福田註:「中絶禁止法に反対しピル解禁を要求する女性解放連合」の略。いわゆる1970年代フェミニズム運動の最右翼とも言うべき存在。当時は、さまざまなマスコミを賑わせた)っていうコトバを覚えちゃって、それを母親の前で言ったらしいんですよ。

F:幼稚園の女の子が、いきなり「ちゅうぴれーん」と(笑)。

T:それが母親にはショックで、こんな言葉をむやみやたらに吐き出すTVなんてものは、家の中になくていいんじゃないか、と。

F:それを機に家からTVの存在が消えた・・・それすごいですね。
ずっと無かったんですか?

T:小学校から中学校にかけて、ほぼ9年間。

F:9年間も!!学校で仲間はずれにはならなかった?

T:それが、あんまり。実際、私のテレビのバラエティ番組の記憶って「ドリフの全員集合」で途絶えてまして(笑)、そのあとの「ひょうきん族」とかはまるで見てなかったんですが、放課後遊んでいると、だれかれなく、こう、流行のアクションをするのを観てそれを覚えちゃうので、結局、番組の細かいことは分からなくても、根っこのところは分かってた、というか、情報の共有が出来ていて、みんなの遊びに参加できてたんですね。

F:なるほど・・・・・それもまた、たくさん子供がいたから出来たんでしょうねー。
富永さんの家にテレビがない、なんてことは、たくさんの子供たちの持つたくさんの現実の中ではほーんの小さな事実になっちゃう。今じゃありえない。学年がひとクラスしかなくて、しかもその人数が20人、とかがザラですからね。

T:ええ、今だったら不可能だと思います。絶対にいじめられるでしょう。

F:・・・しかし、映像作家で、しかも、CM作品もたくさん作られている富永監督がテレビのない家で育った、っていうのは面白いなあ。このネタだけで、今日お話を聞いた甲斐がある。

T:(笑)でも、高校生になって新しいテレビがきた時は、それはもう、ずーーーーっと見てました。ヒマさえあればテレビ、でした。

F:それはそうなるでしょうねえ当然。その頃はちょうど「宇宙戦艦ヤマト」や「ガンダム」「マクロス」等のブー ム だったと思うんですが、そういう種類のアニメーションはご覧になってましたか?

T:そのあたりはまったくスルーです。もろガンダム世代なんですが…。アニメーションは、中学生のときに見た「銀河鉄道の夜」http://movie.goo.ne.jp/movies/PMVWKPD17612/が大好きで、いまでも時々 見ます。

↓つづく

2007/5/25

富永まい監督 ロングインタビュー 02  インタビュー
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F:小学校の頃はどんなお子さんでした?

T:運動は苦手でしたが、元気にばたばたよく遊ぶ子でした。
家の中でのお絵かきもよくしましたけど。

F:好きな教科は?

T:図画工作でした。作文も嫌いではなかったですけど、小学校の3年生にもなると、、「作文で先生に褒められるフォーマット」っていうのが分かってしまって、自分で書きたいことじゃない事を書いて、後でそれを読んですごくイヤになったっていう記憶があります。

F:それは要するに凄く才能があったっていう事ですよね(笑)。
しかしストレートだなあ。好きだったものが「図画工作」と「作文」。
見事に、今のお仕事に完全に直結してる。たったこれだけお話を伺っただけでも、
富永監督はすごく素直に、真っ直ぐに育った、という印象がありますね。
その真っ直ぐに育った富永監督が、最初に受けた「芸術的衝撃」はなんでしょうか。
多分、それがなかったらクリエーターにはなってなかっただろうというファーストインパクト・・・

T:私の場合は、小学校高学年の頃、母に連れて行ってもらった演劇ですね。
母は若い頃グラフィックデザインの仕事に就いていて、私は母から芸術方面でいろいろ影響を受けていると思うんですが・・・連れて行ってもらったのは海外の劇団の公演で、「ガラスの動物園」(福田註:世界的に有名な戯曲作家テネシー・ウィリアムズの代表作のひとつ)という作品で。

F:「ガラスの動物園」!小学生で「ガラスの動物園」ってすごいなあ。
なんにせよ、ファーストインパクトは「演劇」だったんですね。

T:そうなんです。私は幼稚園の頃から舞台に上がるのが好きなこどもで。

F:学芸会とか・・・

T:大好きでしたねー。なので、中学校、高校と、クラブは演劇部でした。
高校の時は、オリジナル作品を書いて、演劇の全国コンクールの都大会までは行ったんですが・・・演目の制限時間60分、という規定のところを、61分30秒やってしまい、結局審査対象外、でした。

F:1分30秒オーバーで失格?きびしい!・・・でも、高校生でそこまで一生懸命演劇をやっていた、ということは、そのあとも・・・・

T:はい、多摩美にも、最初は演劇がやりたくて入学しました。演出も役者もやれる人になりたくて…ですがそのうち、映像の授業を受けたらそれが面白くて、転部しました。

F:うーん、ますます面白いなあ、「映画」に対するマニアックな感情とかは全然なかったんですね。ちなみに、子供の頃見て、これは!と思った映画はありますか?

T:中学校の時父親と見に行った、伊丹十三監督の「お葬式」です。途中で相当エッチなシーンがあって、子供心にとても恥ずかしくもあったんですが、それでもとにかく面白かった。ハマって、メイキングの「お葬式日記」とかまで読みました。

F:確かに「お葬式」は当時、飛びぬけて面白かったですね。シナリオがすごかった。
他の伊丹作品はどうでしたか?

T:「たんぽぽ」は好きです。マルサシリーズも見ましたが、好きなのは「お葬式」と「たん ぽぽ」だけですね。

F:その当時っていうのは、敢えて映画マニア的表現で言うと「日本映画不毛の時代」で、いわゆる角川映画の黄金時代ですよね(福田註:「角川映画の黄金時代」が「日本映画不毛の時代」、という表現には賛否両論あると思うが、少なくとも福田ははっきり「反角川映画派」なのでこう書く。)

T:でしたね。私も、スキとか嫌いとかではなく、とにかくみんなが見てるから、という理由で、薬師丸ひろ子の「Wの悲劇」とか原田知世の「天国に一番近い島」とか見に行きました。でも見に行ったのは覚えているんですが、中身はまったく覚えてない(笑)。

F:それがまさに「角川映画」でしょう(笑)。最近ではテレビ局がプロデュースしてる映画がそんなですね。「ゲゲゲの鬼太郎」とか・・・

T:あ、ごらんになったんですね。どうでしたか?

F:もちろん予想はしてたんですが、とにかく軽い、というか、薄い、というか・・・何カットかのSFXは思ったよりよかったですけど。とにかく、この映画は、見てた人たちが、映画が終わって場内が明るくなったとたんに「さー、終わった終わった、ごはん食べに行こ!」みたいに、ほんとになにごともなかったかのようにサワヤカに席を立っていく。これがもう全然ダメだなと。「映画が終わってしまったこと」に対して、見ている側が感じるべき喪失感がまるでない。

T:うん、喪失感ですね。そういう感覚の起きない映画は確かにダメですね。
お茶の間のテレビ番組と変わらない。

F:そうなんですよ。映像作品っていうのはもっともっとパワーがないと。
昔、東宝に、「マタンゴ」という映画がありまして・・・・
(この後、延々「マタンゴ」の話になる。福田が喋りまくっているだけ、かつ、長すぎなのでカット。)あ、でも「ゲゲゲの鬼太郎」は、今 富永さんが籍を置かれているピラミッドフィルムさんもCGで参加してましたね。

T:そうなんです。あと「蟲師」も。

F:「蟲師」!そうですかー。あれも、SFX以外はダメダメだったなあ・・・
(この後、延々「蟲師」がダメだった話になる。またもや福田が喋り捲っているだけ、かつ、長すぎなのでカット)

↓つづく

2007/5/25

富永まい監督 ロングインタビュー 03  インタビュー
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F:海外の映画で、子供の頃見て、これは!!と思った作品はありますか?

T:えーと、そう・・・・・「ダーククリスタル」(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%80%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%AB)ですね。

F:ジム・ヘンソンとフランク・オズの!あれは僕も好きです。何度見たか分からない。でもそれは納得がいきますねー。基本的に、物凄く緻密なセットを組んで、それをドーンと見せながらその中で役者が芝居する・・・まあ、「ダーククリスタル」は人形なわけですけど・・・・という構造は「ウール100%」と明らかに共通点がありますね。

T:私がよく批判されるのが、どうもこれは自分が演劇が好きだからなんですが、どうしてもこう、セットを引きで見せてその中に役者を配置して、正面から長く撮るというクセがあるんですね。
舞台的になる。

F:いや、それは批判されるべきことじゃなく、単に富永監督の美学と言うべきでしょう。「ウール100%」ではそれが大成功していると思います。かと思うと、うわ、このカットをわざわざ合成で撮るか、みたいな、特撮好きにはタマらん画も出てきて、実になんともバランスがいい。・・というか、その妙なバランスも福田のツボなんです(笑)。「ダーククリスタル」以外に好きな作品や、映画作家はいますか?

T:全然意外ではないと思いますが、ティム・バートンです。
ティムは本当に好きです。
嫁になってもいいと思うくらい(笑)。

F:確かに意外じゃないですねー(笑)。好きな作品は?

T:「シザーハンズ」「マーズアタック」「ビッグフィッシュ」です。ティム・バートン、「ウール100%」をリメイクしてくれないかなあ・・・

F:それは全然夢じゃないでしょう。物凄くリアリティあるなあ。ティム以外では?

T:テリー・ギリアム・・・ほとんどの作品が好きですが、去年、ひっそりと単館上映された
「ローズ・イン・タイドランド」
は凄くよかったです。凄く気持ち悪いんですが、それでも。あとは、デビット・リンチの「マルホランド・ドライブ」

F:・・・ほんとうにまったく意外じゃないですね(笑)。全て見事に納得が行くと言うか。
富永監督は、いわゆる映画オタクでも映像オタクでもないんだけど、いざ自分で作品を作ると素晴らしいものが出来てしまう、というタイプなんですね。それって、ここで今更わざわざ言うまでもないことですが、ほんとうに今の職業に天分がある、ってことだと思います。

↓つづく

2007/5/25

富永まい監督 ロングインタビュー 04  インタビュー
F:さて、富永監督は、大学で映像作品を作り始められたわけですが、それはもっぱら授業で?

T:はい。いわゆる「自主映画」というものは一本も作ってません。

F:それは逆に、ものすごく意外ですね。なぜでしょうか。

T:なんと言いますか・・・いわゆる「インディーズ」の映像作家の集うコミュニティ、というのは明らかにありまして、その空気感、というのがあまり好きになれなかったというのがあります。その作家さんたちは、単に「メジャー嫌い」というか・・・
卒業後、私は普通に就職したわけですが、そうすると、「あいつはメジャーにタマシイを売った」みたいな事を言う人もいました。

F:うーん、いるだろうなあ・・・それはなんとなく分かる。
では話を戻しまして、学生時代に最初に作ったのは?

T:一番最初は…、「くろこげ」という11分の16ミリ作品ですね。シナリオの授業で「恋愛物」というお題で書かされたホンでした。

F:アニメーションですか?

T:いいえ、実写です。学生時代はアニメーションには手をだしませんでした。

F:その作品を、当時見たときはどう思いました?で、今見るとどうですか?

T:当時は、「あれ?映像っておもしろいかも!」という印象ですね。今改めて見てみると、「あれ?意外といまどきかも!?」という感じです。(福田註:この「くろこげ」はInternational Women Films Festival of Creteil(仏/1994)入選・香港国際映画祭/1994上映・ヘルシンキ国際映画祭/1994招待上映・PFFぴあフィルムフェスティバル(1993) グランプリノミネート。はじめて撮った映画でこれだから、天才ってやつはおそろしいw)

F:ピラミッドフィルムに入社されてからアニメーションを作り始めて、実に華々しく、いろいろな映画祭で受賞されていますよね。http://blog.pyramidfilm.co.jp/maitominaga/profilefilmography/
どのような勉強をなさったんですか。

T:個人的には、ロシアのユーリ・ノルシュテイン監督http://www.comicbox.co.jp/norshtein/のワークショップに参加したことが物凄く勉強になりました。ほんとうに現場で役に立つ、技術的、実践的な事をどんどん教えてくれるワークショップで、監督の作品をコンテで再現しながらの授業もあり、本当に得るものが多かったです。
特に、「映像は時間芸術であり、音楽を作るように映像をつくるべきだ」というのがユーリ・ノルシュテイン監督の持論で、それには本当に影響を受けています。

F:なるほど。「ウール100%」も、音楽がほんとうに素晴らしいです。単に「だらだら音が鳴ってる」っていうだけの映像音楽が多い中で、見事に映像と音楽が融合してますよね。こういう作品は、実は非常に珍しい。それだけでも、もっともっとたくさんの人に見てほしいなあ・・・・
例えば、この間、高視聴率で話題になった「華麗なる一族」の音楽の使い方がいかにヒドかったかは、「ウール100%」を見ればはっきり分かる、と思うんですが。
・・・ゆうばりのときにもこの話題になりましたが、音楽はサックスの矢口博康さん、何曲かある挿入歌は、福原まりさんが書かれてますよね。

T:おふたりとも、こちらが何も説明しなくても完璧に意図を汲み取ってくれるんですよ。
ほんとうに素晴らしいかたたちです。

F:いやあ、矢口さんと福原さんでしょ、それ、ほんとに100人力のメンツですよ(笑)。ある意味、怖いものなしですね。

↓つづく

2007/5/25

富永まい監督 ロングインタビュー 05  インタビュー
F:さて、「ウール100%」は、どういう経緯で制作が決まったのでしょう?

T:まず、私が、2003年、個人的に「サンダンスNHK国際映像作家賞」http://www.nhk.or.jp/sun_asia/というのにシナリオを出品したんです。

F:サンダンスNHK国際映像作家賞、というのは、シナリオの賞なんですね?

T:そうです。で、この賞は、「もし私がこの賞をもらったら、これこれこういう風に予算を集めて、ちゃんと作品が作れます」、という事も同時に申告しなくちゃいけないんですが、その時は自分の在籍する会社である「ピラミッドフィルム」が幾ら予算を出して・・・みたいに勢いよく書きました(笑)。そしたら、受賞してしまいまして。

F:それまで長編のシナリオっていうのは書かれたことがあったんですか?

T:いえ、初めてです。

F:凄いなあ。でも、ほんと、いいですもんねえ、「ウール100%」のシナリオ。
実制作はクロックワークスさん
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%82%B9ですよね?

T:クロックワークスさんは、私がサンダンスNHK国際映像作家賞した、というほんとうにそのポイントを評価してくださって、出資してくださいました。あとはもちろん、NHKからも予算をいただいてます。

F:僕がこの作品を見てまず驚いたのは、「インデペンデントのファンタジー映画」なのに、全然「チャチくない」ってことです。もちろん、ハリウッド映画なみに豪華!!という作品ではないけれど、非常にきちんと「作るべき世界」が構築されてる。見せるべきところが見せられている。美術もいいし、ポストプロダクションも素晴らしい。それは、もちろんセンスが素晴らしいからなんだけど、ある程度以上予算があったからなんですね。

T:もちろん潤沢にあったわけではないですし、HVで撮った映像をフィルムに落とし込む時、通常の「キネコ」というやり方ではこの作品のテーマである「赤」がうまく出ず、ワンフレームをフィルム一こまに焼いていく、という、非常にお金と手間のかかるやり方をしたために、宣伝予算が大きく削られました。でも、この手の作品としてそれは勘弁して、というような低い予算ではないと思います。

F:ほんとうに自由に撮られてるなあ、という気がする作品です。


↓つづく

2007/5/25

富永まい監督 ロングインタビュー 06  インタビュー
F:プロデュース側の反応はどうでしたか。

T:「全部お任せするので、自由に撮ってください」とクロックワークスさんから言っていただいたので、ほんとうに好きに作ったんですが・・・・試写の後は愕然としたみたいです(笑)。担当の方に「富永さん、この映画、私には分かりますが、普通の人には全くわからないと思いますよ」と。

F:そのお話はゆうばりのときにも伺いましたね。
福田的には、なにが「分からない」のか、さっぱり分からないんですが・・・・(笑)。逆に、むしろ、説明しすぎなくらい丁寧に感じます。

T:この作品は、どうも、受けとられかたが両極端らしく・・・「全然わからん!」と言うかたもいれば、福田さんのように「すっごくよく分かる。ちょっとベタなくらい」と言うかたもいます。私としては、例えば10人に見ていただいて、9人が0点でも1人100点をつけてもらえるならそれでいい、むしろそっちのほうがいい、という感じではあるんですが・・・・

F:でも、ほんとに、難解でもなんでもない映画ですよ。
ただ、「ゴミを集めてるおばあさん二人を主人公にした、いろんな物の怪もでてくる、実は胸キュン系のラブストーリーファンタジー」ってあまりにも変わってるので(笑)、確かにそこでみんな面食らう可能性はありますが。
この主人公たちの「モノ」に対する執着、ということに関しては、なにかご自身のなかの精神面が反映されていたりしますか?「モノ」にはなにかが宿る、というコンセプトも含めて。

T:自分でははっきり自覚しているわけではないですが、ひょっとしたら、ずっと三人姉妹で育って、家の中に「これは私のモノ」という「所有権の明確なもの」を持たずにきた、という経験が、逆に、モノに対する執着、モノから人への執着、という表現の後押しをしているかもしれませんね。

F:なるほど。その「執着」というか「モノたちとの相思相愛」が破壊されていくプロセスの描きかたを見て、「少女マンガを読み始めた男子第一世代」に属する福田としては、久々に女性でなければ絶対に構築できないタイプの世界観に接したなあ、と。永遠に再生するヴァージニティ、というテーマを、ここまで印象的な色彩と、そのうらはらな切なさで表現するというのは、絶対「男性」には出来ない。真の意味での完璧な女性映画、だと思います。ものすごく個人的な言い方をすると、大島弓子さんの「いちご物語」以来の感動でした。

T:ありがとうございます。この「ウール100%」のシナリオは、ある意味自動書記的なイキオイ感でばばーっと書きまして・・・で、全く後で気がついたんですが、「ウール」って「羊の毛」ですよね。それって、要するに、羊膜、っていうコトバに符合する!と。

F:おー、確かに!(福田註:なぜここで「羊膜」というコトバをことさらに取り上げているかは、本編を見れば分かる)

T:で、これがなんと英語では「AMNION(アムニオン)」だったんです・・・

F:つまり、「ウール100%」の最大のモチーフである「編む」「編みなおす」に、音的にひっかかってる。それはあくまで偶然?

T:偶然です。自分でも、うわ、これはちょっとヤバいかも、と思いました(笑)。

F:それほど、監督の中でいろんなものがばしばしっと符合して出来た映画なんですねえ。なるほどなあ・・・・・これ以上内容に踏み込むとただのネタバレ大会になっちゃうので、もうちょっと「映画の外側」の話をしましょう(笑)。

つづく・・・・実は、この先、まだ原稿起こしが出来てないので、もうちょっと待ってくださいませ!

2007/5/25

富永まい監督 ロングインタビュー 後半 01  インタビュー
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おかげさまで、DAIZ SHOPでは文字通り「瞬く間に」完売した「ウール100%」
それで妙に安心してしまったのと、忙しい上に体調を崩していたせいもあり、
なかなか後半のインタビューを掲載するに至らなかった。
しかし、「ウール100%」はもっともっと売れて欲しい!
というわけで、体調も元に戻りつつある福田、襟を正してロングインタビューの後半をお披露目!これを読んだら、まだ見てない人はすぐにレンタル屋か、HMVとかTower Recordに走れ!!

F:「ウール100%」の製作期間はどのくらいだったんでしょう?

T:実写部分撮影期間は5週間、ポスプロ(福田註:ポストプロダクション。アフレコやCG合成等、撮影したフィルムに対して行う全ての処理。)が二ヶ月くらいでしょうか・・その後、オープニングのアニメーションを製作側の意向で追加制作することになり、それに三週間くらい だったと思います。なんだかんだで、2004年の冬に撮影して、完成は2005年の初夏でした。

F、オープニングのアニメは、最初は無かったんですね?

T:はい、試写を見たあと、クロックワークス側の意向でつけました。あまりにもワケがわからないので、最初に設定を説明して欲しい、というようなことで。

F:あくまでも個人的な意見ですが、そのプロデュースはある意味正しいかもしれませんね。あのアニメで、相当「入りやすくなってる」とは思いますし。登場する「ゴミ屋敷」ですが、あれはセットですか?それとも実在の場所?

T:茨城の「畜産試験場跡」というところです。きっと、おどろおどろしい実験がくりひろげられたであろう、研究所のような建物でした。それをベースに壁やヒロイモノなど飾り付けてもらいました。原型はとどめていません。明治時代の木造の建物で、老朽化でいまは撮影できないそうですが、いろいろな映画や、仮面ライダーなんとかでも登場しているようです。電気も水道もなにも来ていない状態だったので、スタッフもキャストもなかなか大変でした。

F:途中、素晴らしい2Dのアニメーションが登場しますが、あの中に登場するモノノケたちのキャラクターは、全部富永監督が作られたんでしょうか。

T:劇中のアニメーションのキャラクターは、松成真理子さんとアニメーションディレクターの坂井治さんと私の三人の合作です。パンフレットなどに登場するのは、私が制作スタート時に描いた、イメージ画ですね。海外のかたがたに「妖怪」の概念が伝わらないかもと思い、米国の授賞式に「ヒロイモノ妖怪台帳」と称してキャラクターブックのようなものを作ってもっていきました。本当は、それごと絵本として商品化したいなあ、とか思っていたりもしたんですが(笑)。

F:(笑)なかなかうまく行きませんよね。僕も自分のゲームを作ったときは、メッチャクチャいろんな「商品企画」を考えましたけど、結局ひとつも実現せず(笑)。まあ、そういう事は置いておいて。この作品のキャスティングですが、とにかく、主演が岸田今日子さんと吉行和子さんのコンビ、というのがすごいですね。びっくりしました。僕の世代だと、岸田今日子さんと言えばもうとにかく「傷だらけの天使」の印象が強烈で強烈で、役者さんとしては別格中の別格のかた。惜しくも映画としてはこの作品を最後に亡くなられましたが・・・岸田さんの「遺作」というだけで、実は福田としては案外ヤバい。

T:岸田さん、サイコーです。ロケの時、思い切って「実は私は役者志望だったんです」とカミングアウトしたら「あらー、あなた監督になれたんだからよかったじゃない!監督が一番面白いに決まってるんだから!」とおっしゃっていただけて、嬉しかったですね。(福田註:DVDには、岸田さん、吉行さん、富永監督の実に楽しいインタビューが収録されている。必見!)

F:吉行さんは・・昔から、なんてきれいなかたなんだろうと・・・単純に福田、ファンです(笑)。

T:吉行さんは、ほんとうにおきれいでした。カメラをのぞいていても、どうしても少女にしか見えないときが何度もあってビックリしました。

F:でしょうねえ(陶然)・・・

T:かつ、意外と天然キャラで(笑)。ロケ先でも、あの草原の中をふら〜っと一人でさんぽしてたり、一人で廊下歩きながら、軽くスキップしてるのも目撃しました。
ある日、天気がすごく良くて、岸田さんや北浦愛ちゃんとみんなで外でお弁当食べたんですけど、吉行さんだけいないんです。
岸田さんが誘ったら、「あら、なんで外で食べるの?」「だって、外で食べたほうが楽しいじゃない。」「あら、なんでご飯食べる時に楽しくなくちゃいけないの?」とか、普通におっしゃるらしいんです。(笑)

F:ヤバいですね、かわいいですねー!!(萌え萌え)

つづく

2007/5/25

富永まい監督 ロングインタビュー 後半 02  インタビュー
F:「ウール100%」の後、映画製作の予定は?

T:「煙突男と風見鶏」http://blog.pyramidfilm.co.jp/maitominaga/works/short_movies/
という実写短編を撮りました。

F:えっ!あれって「ウール100%」のあとの作品なんですか!(註:この時点で、福田はWEBで鑑賞済み)

T:はい、今のところ、あの映画が最新作、です。

F:ものすごくタッチが違う、というか、ドライでシニカルなコメディですよね、あれ。福田、何カットか大爆笑しましたが・・・そうか、「後」なんだ・・・芸域、広いなあ(笑)ある程度予想してたこととは言え・・・・非常に臨機応変というか。富永監督はいわゆる「方法論至上主義」じゃないんですね。

T:自分がどういうタイプの創作者なのか、自分ではよくわからないんですが、
福田さんがおっしゃるとおり、おそらく「方法論至上主義者」ではないと思います。

F:自分が表現したい事を表現するには、どんな「手法」が最も適してるか、を冷静に考えられるんでしょうねえ。発想の基点には、やっぱりビジュアル的なものが多いですか?

T:そうですね・・・まず、なんらかのビジュアルイメージ・・・「ウール100%」でいえば、ゴミ屋敷のニュース映像なんですが、そういうものからシゲキを受けて妄想がはじまって。実は、TVバラエティの「黄金伝説」・・・「よいこ」の浜口さんが、ゴミおばさんと同居するっていう回があって・・・あれは実に参考になりましたねえ。なぜこのおばさんはゴミを拾ってくるのか、というと、やっぱり「寂しい」からなんだ、って言うのが、物凄くよく分かりまして。あの番組には感謝してます(笑)。

F:面白い話ですなー(笑)。でも、例えば、その「寂しい」という感情に拘泥して、単純にセンチメンタルなお話を作ろう、とはならないのが監督の個性ですよね。クールだと思う。

T:物語ができて、その物語を構築していく段階でなんらかのルールを決めたりはします。「ウール100%」でいうと、亀さん、梅さんたちの幼少期は「ドールハウス」で表現しようと決める。決めると、そのルールが物語をまた新しい方向に導き始める…するとルールはルールじゃなくて、物語の中できちんと機能する表現になっていく…というような感じです。いうなれば、イキアタリバッタリ派でしょうか?

F:やっぱり、臨機応変型、というべきでしょうね(笑)。さて、では、まとめのようなそうでもないような質問を一つ。映像作家 富永まいにとって、「譲れない一線」というのはなんでしょう。なんだか抽象的ですが・・・・・・・例えば、「日常的なリアリズムを、自分の映像作品の中であえて表現しようとは思わない」みたいな感じでも結構です。あ、もし「譲れない一線」がないのであれば、ない、でももちろん結構ですが。

T:譲れない一線…う〜ん。強い信念をもって決めているようなことはありませんが…。「自分がいままで見たことがないものを創りたい」という欲求は常に持っていると思います。創作していて何かの選択肢にぶつかったときは、「見たこと無い方」を取るようにはしています。でも、「見たことが無いもの」を表現するには、文化や国籍を超えたしっかりとした骨格をもたないと、ただの自慰行為に陥ることもあるので・・・・実はそのへんのバランスを さぐるのが毎回の課題になってきてます。修行中です。

つづく

2007/5/25

富永まい監督 ロングインタビュー 後半 03  インタビュー
F:さあ、それではほんとうにマトメ、です。
今後のご予定をお聞かせください。

T:「本業」のCMでは、ベネッセの「ねこのきもち」を撮りまして・・・出演した子猫ちゃんを引き取りました(笑)。もうすぐ放送になります。
それから、実は埼玉県富士見市の市民文化会館で「キラリ☆ふじみ」という劇場主催の演劇公演の演出をやります。シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」を公募で選ばれた三人の演出家が幕をわけて演出するという企画で、応募したら受かってしまって・・・

F:またですか!(笑)ほんとに、「応募したら受かる」人だなあ・・・。
それにしても、演劇の演出とは・・。やはり、「故郷」に帰った気がしますか?

T:そうですね、実は「私はいつか劇場という空間に戻るのかもしれない。」という気持ちが
心のどこかにずっとあったんです。こんなに早くそのチャンスがくるとは思ってなかったですけど。

F:なるほど。福田としては、今後も是非、映画を撮り続けて欲しいですが(笑)。
今度、監督の演出する演劇も見にいきたいです。他に、リリース情報等ありますか?

T:「"短篇.jp"から生まれた18つのショートストーリー!『ハヴァ、ナイスデー』」
の一本として7月25日に、ジェネオンエンタテインメントからDVDが発売されます。「煙突男と風見鶏」が収録されます。

F:では、最後の質問です。いきなりですが、食べ物の好き嫌いはありますか?

T:キライな食べ物がまったくないんですね。くいしんぼうなので、なんでも食べてみます。
特に好きなのは…おだしの味が好きなので、茶碗蒸しや、出し巻き卵はあれば頼みます。
あと、はんぺん
お風呂いっぱいくらいのサイズがあったらいいなと思います。

F:では、どうぞ!!(ほんとうに風呂オケサイズのはんぺん登場)

T:わあ、いただきまーす!!

富永監督、はんぺんに飛び込む。
飲み込まれる監督。
いったん、手を出して軽く挨拶。
「ではまた!!」
はんぺんの中に消える手。
一瞬ぷるっと震え、静まるはんぺん。


おしまい

2006/5/2

島口哲朗:シマグチテツロウ ロングインタビューvol.1  インタビュー
ご好評につき、というよりは、単に福田が個人的にハマったというかw。
「他人の人生は面白い」がテーマ(そういうテーマに決めました)のロングインタビュー、
今回は当ブログではもうすっかりお馴染みの、「劔伎衆かむゐ」のリーダー 島口哲朗くんが主役。間違いなく面白い話が聞けるだろうから、酒を飲みながらだと楽しすぎて収拾がつかなくなるに違いない、と思い、出版関係の打ち合わせによく使われる新宿の「椿屋」という珈琲屋(ちょっと前までここは、談話室滝沢、と言い、OMRの打ち合わせでもさんざん利用しました)で、延々2時間半にわたり、それはもう根堀り葉堀り聞きまくり。その結果、やっぱり「島口くんの人生もすげえ面白い」事が判明。

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島口くんのブログもあり!→http://moon.ap.teacup.com/tkamuis/

さあ、というわけで、

なんたってあの「KILL BILL」に出演した俳優

劔伎衆かむゐのリーダー  http://www.k-kamui.com/

そして稀代の天才殺陣師(と福田は信じてます)、島口哲朗
だーれも知らない過去がいま明らかに!
(ものすごい物量なので、順次公開していきます。よろしく。以下 島口哲朗はTS)

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ルーシー・リュー姐さんから「ソードマスター島口」への直筆メッセージ


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