2007/8/16

ひとつの旅立ちを終えて  ラブフルート

 ここ1ケ月の間に14〜15本のラブフルートが旅立ち、工房のフルートは寂しくなりました。製作や仕上げにそれなりの時間をかけて様々な思いが詰まっていますから、みんな旅に出てしまうとどことなく気が抜けた感じです。

 それでもまた、ゆっくりと製作のための連絡が入り始め材料の切り込みが始まっています。30度を超える外気を承知で小さなプレハブ工房に閉じこもっての作業はなかなか厳しいものがあります。周囲は住宅地ですから騒音が少しでも漏れないように閉め切りますので、内部は軽く40度を超えます。数時間閉じこもって汗と埃にまみれていると様々な思いがよぎります。気がついたら夏休みがないな〜とか、こんな暑さの中で大変な作業をしなくてもいいかも....とも思うのですが、次に控えている仕事との関係で、今手を付けて段取りを整えないとフルート製作はかなり遅れてしまうことになるのです。

 フルートの原型になる切り出しの段階で、それぞれの木の性質が直接伝わってきます。かなり時間をかけてもまとまらない木もあれば、嘘みたいにすんなりまとまる木もあります。この時の切り出し方が、最後まで影響しますから、地味な作業ほど根気と集中力が必要になります。

 どんなものでも共通していると思うのですが、美しいものや存在感のあるものには人目に触れない地道な工程があるのでしょう。激しい機械の音の中で切り出され、削られていく、さらに内管が削りだされ、細かな作業が続く間は生まれてくる美しい音色とはまったく別の世界です。一枚の金属プレートもまた、切り出され、叩かれ、磨かれて重要な役割を果たします。

 いわば騒音にの中を潜り抜けてラブフルートが生まれてくるというわけです。大地に芽を出し、成長するまでの長く厳しい道を経て、やがて切り出された樹木たちは、いったいわが身に何が起こったのか混乱するというプロセスをたどるのです。

 樹木はその存在そのものの中から語りかけます。それを受けて、人は心をこめて笛になるまでの工程を忍耐強く辿ります。さらにその笛を手にする方との繋がりを大切にし、まだ見えないそれぞれの旅路を思い巡らします。

 真夏の厳しい作業を終え、この小さな工房との出会いをされた方々のことを思い返しながら過ごす時間には、言葉にならない密かな思いが巡っています。
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