2006/1/17

手作りのラブフルート  ラブフルート

2005年5月10日(火)徒然笛日記より転載

ここのところ職人たちの生き様に関する本を続けて読んでいます
時代にもよるのですが、知名度が上がるまでの困窮した生活が印象に残ります

困窮した生活だけは一緒だな〜と納得してしまいます(^^;)

あれこれ読んでみますと、職人たちの持つ
物を作り出すための強烈な探究心と集中力、創意工夫が深く心に残ります

何度も壁にぶつかりながら
ぎりぎりのところで切り抜けたり
思わぬ助けがあったり..

そうした生き生きとした感覚を楽しめることと
作られたものが売れなければ生活できないという緊迫感
その両面から学ぶことが多くあります

合理的な量産が生産の基本的なスタイルになってからでしょうか
ものを大切にするという感覚が希薄になってきたのは..

どこにでも、いつでも、たくさんあるという状態では
だれしも一つのもののありがたみは感じられなくなるのだと思います

もののありがたみどころか
有り余ったものをどう処理するかでお金がかかるのですから..
皮肉なものです

そんな時代の中で
製材所ではさっさと捨ててしまいそうな端切れのような材料を
頂いたり買い求めたりしながら笛を作っています

笛は飛ぶように売れるどころか
8分ほど仕上て保管され、眠り続けています

求める方々の希望を取り入れるために7〜8割程度で
作業を止めていることが多いのです

工房を訪ねてくださる方の中には
作るときに旋盤を使わないのですか?と尋ねられる方もおられます

確かに旋盤を使うと早くて綺麗に仕上がるのです
そういう合理的な作り方をしたフルートがアメリカでは沢山売られていました

当然価格も比較的安くなります
もちろん高級品・高価な手作りフルートもありましたが..

何故か機械加工したものはどことなく味気がない
所有する喜びが乏しい..
高級品は工芸品にはなっても実用性が乏しい..
それが率直な感想でした

折角作るのなら
持っている喜びが生まれてくるようなものにしたい..

自分が欲しいな〜と思うようなフルート
生活の中に根付いた暖かいフルートが欲しい
それが基本的な思いです

それは同時に生計がなかなかおぼつかないということになります

一本のフルートのために費やす時間と労力
それを考えると、単純に今の2倍〜3倍の価格になります
しかも肉体的には、毎朝手が腫れ上がり、指が激しく痛む..

では、旋盤を使えば...どうか
現在の6割程度の価格で仕上がります
そして、あちこちで販売してもらうことも出来ると思います
極度に身体に負担がかかることもなくなります

一緒に作業をしている仲間の姿をみていると
時折切なくなることがあります
一本の笛をひたむきに手作業で磨き続けているのです

そこまでしなくてもいいよと声を掛けそうになります
機械作業で済ませられるのに...

では、なぜ?

頑固な職人のこだわり?
意固地なだけ?
大変さを売りにしてる?

ちょっと違います

心底、心のこもったものが欲しい...
それによって心が動き出すようなものが欲しい...のです

限られた命、限られた肉体を惜しみなく使う
心を込めて削り、手に触れ、手触りを確かめる

音色に耳を傾けては再び削る
削っては耳を傾ける
この笛と出会う人たちの事を思い描くことがエネルギーなのです

取り出された木々の事を考えてみる..
自然の営みのあれこれを思いながら作る...
ラブフルートととの出会いから生まれた
新しい人々との出会いを思い返しながら作る...

そのためにはじっくりと作るのがいいのです

ちっぽけな身体で出来る限りの事をしてみるのがいい..

いつの日か
「こういう笛が欲しかった..」という出会いが来る..

それを思うと
やっぱり手作業で笛を作ることになるのです

勿論、単に手作業だから良いということではありません
手作業には、それに費やす貴重な時間と同時に
心の動きがあるのです

この目に見えない心の思いの有無が
ものの大切さに繋がっているような気がしています

凝りに凝ったもの、こだわりのあるもの
それもまたものの価値の一つなのでしょう

しかし商品価値を高める様々な要素を持つことと
心を込めて作ることとは少し違うと思うのです

心を込めて生きる意義が人生にあると感じていること
人と関わることの大切さを深く感謝し、喜んで生きていること
それが土台なのだと思うのです

心の思いがあって、ものがあるのだと思うのです
心を満たすのは、心なのだろうなとも...おもいます
地味で、根気の要る手作りものというだけでは満たされないのです

この笛との出会いが、それを静かに教えてくれたのです

ですからごく自然に

そういう笛との出会いの場が出来ればいいなという思いが生まれました

その思いが現在の工房の原点です

それは身体が動いてくれる限り
何度も何度も確かめていくことになるのだと思っています
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