2006/6/11

アイヌの笛  雑感

 アイヌの笛がありました。アイヌ資料ビジュアル版に掲載されていました。今ごろ知ったのかと言われそうですが、そういえばそれに近い小さな笛を頂いた記憶があります。それは、写真のものよりも発達した構造でしたが...か細く、かすかな音色がけれど、いいな〜と思って吹いていました。
 
 以前、二風谷の萱野氏宅をお尋ねしたときは、ワタリガラスの神話との関わりを調べることが中心でしたから、楽器の話は出ませんでした。また、いわゆるムックリとトンコリが知られているし、それ以外はないと思い込んでいましたので敢えて尋ねることも思いつきませんでした。

 ところが、笛があったのです。それは、あまりにも素朴な笛でした。笛と呼ぶには、あまりに原初的な姿をしていました。イタドリという何処にでも生えている植物の枯れて硬くなった茎を斜めに切り取っています。それだけです。

 しかし、よく見るとちゃんと節にあたる部分を底にして残してありますから、単なる突き抜けた管ではありません。どちらかというと、サンポーニャやパンフルートの一本を取り出したような印象です。ただし、歌口、吹き口の形状はかなり鋭角です。また、両側から切り落としていますから、ちゃんと口を当てて拭きやすいように工夫してあります。ただ、これを口にあてたまま転んだ子供は、ひょっとして血だらけだったかも...という形です。

 かなり素朴な構造ですが、アイヌに笛があるというだけで嬉しくなります。北海道の大地でイタドリの笛を吹くアイヌがいたというだけで、思い描く情景が変わってきますし、楽しいものです。やっぱり笛があったかと思うと、何故かほっとします。ムックリにもトンコリにも、歌にもない世界が笛にはあるからです。

 おそらく切り口の角度や管の長さや太さで音程は違っていたでしょうし、吹く強さでも変化はあったと思われます。とても、笛つくりのアイヌが規格品を作り、チューナーで合わせたものをお祭りで売っていることはなかったでしょう。すぐに割れてしまいそうな素材ですから、ひとときひたむきに咲いて散る花たちのように、その時だけの音色が周りで響いていたことでしょう。構造から想像すると、小鳥たちとひとつになるような響きだったのではないかと思われます。
 
 写真で紹介されている笛は、かなり短いものですが、中にはそれなりに太いものや長いものを見つけて鳴らしていたアイヌもいたかもしれません。どんな時代、どんな世界にもそういう人はいるものですから..あれこれ想像を掻き立ててくれるアイヌの小さな笛を知ったことで、南の国、薩摩の「天吹」にも通じる笛の道もあるような気がしてきます。

 竹製で歌口が逆切り込みになっている天吹、底を残した管を吹くアイヌの笛。ラブフルートがかつて、底のある笛だったという資料と合わせると、興味が湧いて来ます。こうなると、日本の中間地帯にバードという構造をもつ笛に近いものがあるかもしれないという都合のよい空想も生まれて来ます。

 今年の秋は、枯れたイタドリでアイヌ笛を作ることになりそうです...ひょっとしたらアイヌ式パンフルートの類ができるかもしれません。
1



teacup.ブログ “AutoPage”
AutoPage最新お知らせ