2009/4/27

クロッカスの上に..雪  雑感

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クロッカスが庭に咲く。春の日差しを真っ先に感じて歌い出す大地の輝きのようです。大地が花を咲かせたような大きな花弁が印象的です。

 そのクロッカスの上に雪が降り積もりました。池の金魚も、大慌てで家の中に引き戻しました。あのしばしの陽気はなんだったのだろう...。

 春から次の冬に向かっているような錯覚さえありました。僕が居眠りしている間に、夏も秋も過ぎ去って、新しい冬が始まったんだと言われたら、信じたくなるような気分でした。

 終わったはずのこと、済んでしまったと思っていたことが、再び顔を現わす。そういうことが人生には少なくありません。克服したと思いこんでいたことが、やはり何も変わっていなかったと...。もう終わったと思っていたことが息を吹き返したように思うようなことも...。

 通り過ぎようとしていたことを、もう一度忘れていることはないかと問いかけるようにことがおこる。それは、明らかに次のステップに向かっていながらも時折やってくる不思議な語りかけのようです。

 過ぎ去った記憶を辿る雪として思い返すのか、季節を超えた新たな冬の兆しと感じるのか...。とっさに生まれてくる自分の感覚の中に、本質的な要素があるのかも知れません。

 工房前の芽吹き始めた柳の若芽に雪が積もり、その美しさを見つめながら、春を感じてやってきたカワラヒワのつがいもさぞ戸惑っているだろうなと感じました。

 水温が低くて動きが鈍かった金魚たちは、まるで温泉旅行のように居間の水槽に戻されて活発に動いています。仲間入りさせていた4匹は、残念ながら2匹になってしまいました。寒すぎて衰弱してしまったのだと思います。危機一髪で命拾いした金魚を眺めていると、自分も同じような道を辿ってきたな..と思います。
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2009/4/22

雪融けを待つ  雑感

  雪解けを待って工房を訪ねてくださった遠方の方々との出会いは、あたかも渡り鳥との出会いに似ているような気がします。

 彼らはどこに向かって飛んでいくのだろう...。人生のひと時、この水場に立ち寄って、しばし休息し、必要な笛を求めて訪れます。ここに来るまでの歩み、ここから向かう旅路。いつ、どこで、どんな時の中で笛を奏でるのだろうか...。あるいは、再びこの場を訪れることはあるのだろうか...。

 先日のライブの途中で見かけたハクチョウたちの中には若く経験の少ない仲間も見えました。天高く羽ばたく彼らは、鳴き交わしつつ、はるかかなたの地へ向かうのでしょう。

 僕らもまた、思い切って飛び立つときがあるのでしょう。その時、ふさわしい休み場があってくれたら、どんなに元気付けられ、安らげることでしょう。ひたむきに羽ばたくことは大切で、必要なことです。それと同じくらい必要なのは、休み場であり、水場でしょう。勿論、食べることも欠かせませんが...。

 弱った時、経済的に困窮しているとき、心が行き場を見失ったとき、思いわずらうことなく休息し、渇きをいやし、向かうべき方角を感じることができれば...。

 初めて吹いたラブフルートは、時を超えた空間で自分を包み込み、見えなくとも確かに待っている何かがあることをそっと伝えてくれたのだと思います。どんな心の状態になった時、自分が満たされ、安らぎと勇気を見いだせるのか...。

暗闇を突き抜ける一本の矢の道。

耳を澄まし、目を凝らし、その軌跡を追い、ひと時の眠りにつく..。
どんなに行き詰まった時にも、朝が待っている....。

天と地は、魂に必要なメッセージを惜しみなく注ぎ続けている...

一本の笛の響きは、自らに与えられた風から生まれる
その風はどこから来たのか..

今夜も、少しの時間
香炉から現われる煙の揺らめきに心を添わせ
細いキャンドルの明かりの中で
笛を吹き、眠りにつくことにします..
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2009/4/21

あたらしい池  雑感

一年前の春にやって来た10匹の金魚たちが旅行トランクの水槽で元気に育ち、生き残った6匹が居間の水槽で冬を越しました。彼らは、この日曜日に、新しい4匹の仲間とメダカ10匹と一緒に新しいちいさな池に移動しました。

 池の端には3年越しの水草も置かれました。居間の水槽生活の時に競って餌を食べていた彼らは新しい環境に慣れずに水の底でじっとしていました。水温の変化が激しかったのでしょう。さらには外の空間がもたらす気配を感じてのことでしょう。

 全員そろって身を寄せていましたが、お昼にのぞいてみると太陽の光と水温上昇に伴ってゆらゆらと水面近くに姿を見せていました。アメンボウがどこからともなくやってきたり、水草がゆらゆら輝いたり、小鳥が水を飲みに来たり、猫が水を飲みに立ち寄ったり....。周囲には新しい草花たちが日ごとに成長し始めています。

 庭にほんものの池があるとか、川が流れていたらいいな...。トンボの幼虫が羽化するのも見られるし、小鳥の水浴びも見られるだろうな...。

 昔々、祖父の住む深い山奥を訪ねたとき、そこはまるでおとぎ話の世界のようだったことを思い出します。こんもりとした山が家のすぐそばにあって、すぐ脇には湧水があって、それが小さな小川になって流れていました。祖父は猟師をして暮らしていました。

 もし、そこに生まれ育っていたら、風の匂いや気配を感じ、獣たちの動きを肌で感じながら生活していたかもしれません。学校には行かず、祖父の物語を聞きながら、野山を自由に動き回っていたかもしれない...背中に手作りの笛を背負って...好き勝手な言葉を思いつくままに口にしながら歌ったり、空や雲の変化を楽しみ、夕暮れの美しさを堪能していたような気がします。

 一輪の花に見とれたり、虫たちの動きに魅力を感じて時間を忘れてしまったり、どうして小鳥たちはあんなに美しく囀るのだろう..と考え続けていたように思います。生き物たちの生態に興味が湧くというよりは、彼らが何故自分たちと一緒に存在しているのだろう...と問い続けていたように思います。

 あたかも、水の中を自在に動き回り、限られた世界に置かれているのに、置かれた場所で生き生きとしている魚たちのように、心や思いを羽ばたかせていただろうなと思います。それで、十分幸せを受けとっていられただろう..と。

 昼過ぎのわずかな時間、小さな池の傍で浮かんだ自由な思いを楽しみながら、工房に向かいました。小さな空間で色んな方々と出会い思いを交わす今の生活の豊かさを感謝しながら、新しい笛の音との出会いが始まっています。

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2009/4/16

早春のさんぽ  雑感

 森や林の中でフルートを吹くと小鳥たちが反応するという体験はしばしばありました。しかし、今回は春のさえずりに忙しい小鳥に触発されて、思わず自分の方がフルートを奏でるという体験をしました。それはほとんど本能的な反応ともいえるものでした。

 気分転換をするために時間を気にせず、自由に歩いた時のことでした。やるべき仕事が飽和状態になり、一つのことを集中して受け止めきれず、意識が散漫になっていました。こういう時は、無理やり状況を切り抜けようとせず、気分を変えるのがいいだろうと思ったのでした。

 一見不合理だけど、急ぐ時ほど静かな自分だけの時間が必要だと...。やらなければならないことを思い起こしただけで、気持ちがいっぱいになってしまう...。何もしていないのに、疲れてしまう...。これはちょっと一休みしなければ...それが気ままな散歩につながりました。

 どの道を選ぼうと自由で、どこで止ろうと誰もとがめない、どんなスピードで歩いてもいい。どこを見ても、何を感じてもいい....。そんな散歩です。

 すっかり枯れた植物たちを押し上げて、新鮮な芽があちこち顔を出し始めていました。そんな様子を眺めているうちに、自然と自分がどうすれば良いのか感じ始めていました。

 わずかな残雪に出会うと、厳しいはずの冬が妙に懐かしく感じました。冷たい風と暖かい日差しが、季節の入れ替わりを象徴しているようでした。

 小鳥が全身を震わせて鳴いた瞬間、とっさに手にしたフルートから生まれた響きは、あたかも自分が小鳥になって応答しているような錯覚に陥りました。

 この散歩は、ちょっとしたCD製作の話が持ち上がっていることとも関連がありました。自然と同化した時、何が起こるのだろう、笛を吹くって何なのだろう...。そんな原点に向かって歩き始め、そこに生まれてきた新しい感覚の中で、笛に触れてみたいと思っていたのです。

 人間と小鳥という視点が、一瞬消え去り、生き物と生き物という関係になっていた。その瞬間に垣間見た世界は、不思議なものでした。人間中心の世界観が、存在している世界の豊かさを随分とゆがめているんだな..そんな感覚がありました。

 自分たちの考えや価値観が正しく、良いものだという前提に立った人間たちが、どれほど多くの苦悩と矛盾を引き起こしてきたのか...それを静かに思い返しながら歩きつづけていました。言葉巧みに、自分を擁護し正当化し理想を掲げるという繰り返しは、一時的な権力の行使と、対立する存在への抑圧を生み出してきたような気がします。

 それは人と人が関わる身近な世界にも、少なからず生じていることなのかもしれません。そんな中で、自由と安らぎと喜びに触れる..。限られた人生の旅路の中でその片鱗に触れたとき、ゆるぎない心の平和を感じるのかも知れません。

 散歩の途中、その歩みをずっと見て来たであろう老巨木を見上げた時、自分がどこに帰っていくのか、かすかな予感が風のように通り抜けたような気がします。

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