2009/6/10

大切に削らせていただく  ラブフルート

  肉体的な限界に直面して作業を中断せざるを得なくなる..。どれほど気力があっても、動きが止まってしまう...。激しい痛みが続き、集中力が途切れる..。

 どれだけやらなければならないことがあっても、それを理由に全体のバランスを崩せば、やがてすべてにひずみが出てくる。それを何度となく反復確認してきたのですから、ここは慌てず着実な道を辿らなければと思っています。

 ある人が、この笛はコミュニケーションがあってこそ生まれてくると思うと話していました。作業の大切さは勿論なのですが、それはまず心の触れ合いがあって生まれてきます。一本の笛を何時間も手で削りながら、その人とのそれまでのやりとりを思い起こします。

 一日にたったこれだけしか進まないのか..と思うと、少し弱気になって機械に頼ろうか..と思うこともあります。しかし、自分は単に形を仕上げるために時間を費やしているわけではないのだと確めます。
見えなくてもそこにあった事実、時の中に封じ込められた命の息吹きが笛になるのだと...。その事実は、やがて時を経た時に浮かびあがってくると思うのです。

 息を吹き込む人が、大地に根ざし天に向かって育まれた樹木の響きに触れる瞬間。それは、その恩恵を感じつつ手を動かし、自らの歩みに心を寄せて作り上げた人の生きざまとの触れ合いの時でもあると思うのです。

 この木は、どこに生まれ落ち、どんな風に育まれ、どんな道を辿ってこの小さな笛作りの人間と出会うことになったのか。そして、これから誰の所に旅立ち、息吹きを注がれ、どんな歌を歌うのだろう。その笛は自分の死後も、きっとどこかで歌うのだろう。その響きは、この空と一つになって新しい流れを作る..。

 その時、手にした笛が何を語るかはわかりませんが、笛になるために注いだ労力と思いはどこかに潜んでいるような気がします。人が人を愛し、自然を愛し、喜びの中にいたことが..。

 待たせて申し訳ありません..。何度も心の中でお詫びしながらも、手がつぶれてしまわないようにしなければ、結果的にさらに遅れてしまう..。残された時間に限りはあるものの、機械で作っても構わないから、早く、安くという道に寄り道せずに歩みたいと思っています。

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