征けるわが子
ダニーボーイ
わが子よ 鼓笛の音ぞ呼ぶ
谷険阻抜け 尾根降り居ぬ
夏去り 薔薇皆散れる日
征け汝(いまし) 我や堪へゐむ
戻らめや 草饐えむ地へ
諸枝に 雪笑む丘末
論失せ 待てる今日褒めつ
ああいとほし 御身の浮く瀬
わかこよこてきのねそよふたにそはぬけをねおりゐぬ
なつさりはらみなちれるひゆけいましわれやたへゐむ
もとらめやくさすえゐむちもろえにゆきゑむをかすゑ
ろんうせまてるけふほめつああいとほしおみのうくせ
アイルランド民謡ロンドンデリーの歌、多くはダニーボーイとして知られてゐるものを二弦歌(各音二回)にて訳してみました。
第一連はどうにか逐語的にこなせるものの、第二連は類語をいかに動員すとも仮名配りの都により牧場も谷も消えてしまひますが、季節を問はず生還を待ち受ける親の思ひは伝はるか。
第三連「論失せ待てる今日褒めつ」が最も苦しいでせう。かかる試練をお与へになる神をそれでも私は褒め称へつつわが子の帰りを待ちますの意としていただきたい。
「照る日も曇る日も私は此処に居てお前を待つて居る('Tis I'll be here in sunshine or in shadow )第四連に「ああいとほし」の句を残せたことでからうじて救はれませうか。
「(O Danny boy, O Danny boy, I love you so.)ダニーボーイやダニーボーイ私はこんなにもお前を愛してゐるのだよ」
続く第三第四は本日疲れましたので明日にでも試みます。2008/1/16 22.40
ダニーボーイの由来については
ドナドナ研究室 ダニーボーイの謎に委曲を尽くしてをられます。
O Danny boy
O Danny boy, the pipes, the pipes are calling
From glen to glen and down the mountainside
The summer's gone and all the roses falling
'Tis you, 'tis you must go and I must bide.
But come ye back when summer's in the meadow
Or when the valley's hushed and white with snow
'Tis I'll be here in sunshine or in shadow
O Danny boy, O Danny boy, I love you so.
戻らむ日 花皆末枯れ
或いは我 死にてゐめや
汝(いまし)來て 奥津城たづね
膝折り据ゑ 祈(の)らん聲よ
そと踏む 音にも温まりの
うち醒めん よろこべる墓地
えぞ有爲を 矢丈上げ搖せ
朧結ふ 見えぬわが瀬へ
もとらむひはなみなすかれあるいはわれしにてゐめや
いましきておくつきたつねひさをりすゑのらんこゑよ
そとふむねにもぬくまりのうちさめんよろこへるほち
えそうゐをやたけあけゆせおほろゆふみえぬわかせへ
第三四連も四連の前半まではかろうじて原意をなぞり得てゐるものの後半は仮名の持ち合はせの都合で全く抽象的になつてしまひましたか、が、全体として原詩の情調はとらへ得たかとおもひます。
それにしても明日追加訳といふところを一週間も遷延してしまひしわが身の怯懦よ。
2008/1/23.16.50
But if ye come and all the flowers are dying
If I am dead, as dead I well may be,
You'll come and find the place where I am lying
And kneel and say an Ave there for me.
And I shall hear, though soft, your tread above me
And all my grave shall warmer, sweeter be
For you will bend and tell me that you love me
And I will sleep in peace until you come to me.

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