著作:浅田次郎
出版:2005年5月 集英社
先日読み終えたのが天切り松の第4巻、昭和侠盗伝。
相変わらず面白い本でした。
今回の舞台は昭和初期。
そして 『天切り松』 の二ツ名の由来が出てくるから、まだ読んでいない人はお楽しみにね。
『天切りの芸は大江戸以来の夜盗の華』
ということで、現代の建築屋から見た天切りの芸について、ちょっとだけお話してみます。
天切りってのは、屋根から忍び込む夜盗の手口。
屋根瓦を剥がして屋内に忍び込むんだね。
で、屋根瓦ってのは簡単に剥がせるのかというと、じつは剥がすだけならそんなに難しいもんじゃないんだ。
ただ、元に戻すのが素人じゃたいへんなだけ。
もっとも夜盗自身も瓦なんか、剥がしたままで逃げちゃうんだろうけどね。
そして瓦を剥がすと出てくるのは、瓦の下に敷き込んである屋根土。
だとは思うんだけど、じつは屋根土が有るか無いかはちょっと難しい。
東京近辺だと関東大震災のあとで、屋根土を使わない瓦葺きが広まったみたいだからね。
で、屋根土が有るにせよ無いにせよ、次に出てくるのはトントン葺きと呼ばれている防水層。
トントン葺きってのは、薄い杉板なんかを重ねて葺いて、瓦の隙間からの雨水の浸入を防ぐためのもの。
ちなみに 『トントン』 は杉板を竹釘で留めるときの金槌音みたいだよ。
なかなか愛嬌があるでしょ?
ここで写真。
こちらはトントン葺きに代わる、現代の瓦の下の防水層。
この防水層はシート状の形状をしていて、タッカー(ホチキス)で屋根下地(野地板)に留めていくんだ。
このときに響くリズミカルなタッカーの音。
『トントン』 と聴こえればよかったんだけど、どちらかというと 『タンタン』 もしくは 『タタタタ』 だね。
ちょっと残念でした。

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