2006/3/29

『聖書』『クルアーン』『古事記』『日本書紀』  お勧めの1冊

以上の書籍をもとに東西の異本・異説の取扱について考えてみた。

キリスト教世界では、度重なる公会議により異説(異端説)の類はかなり初期の段階で厳しく排除されていった。一方、イスラーム世界は、もともと「異端」という概念がなく、クルアーン(コーラン)の異本も初期には問題を起すことなく存在していた。ところが、10世紀頃にはじまるイスラーム法学の発達とマドラサの普及がこれらの異本を自然消滅させ、3代目ハリーファ(カリフ)であるウスマーン(〜 AD656)によって編集された正本に統一されていったのは先にみた通り。 ここで自然消滅という点がキリスト教世界と大きく異なる。

さて日本では、大和朝廷の正本である日本書紀ですら異本の類を破棄することなく並記していた。それぞれの文化圏で異本、異説(異端)に対する対処の仕方が大きく違っている。勿論、一神教と多神教といった基本的違いもあるが、同じ一神教の世界でもキリスト教圏とイスラーム世界では対応が違うことは注目に値する。

具体的に古事記、日本書紀本文、そして日本書紀異本の違いを「神功皇后伝説」を例にとり比較してみよう。

<登場する神様>
1)日本書紀第1の1書;向◯男聞襲大歴五御魂速狭謄尊、底筒男神、中筒男神、表筒男神
2)古事記;天照大神、底筒男神、中筒男神、上筒男神
3)日本書紀本文;◯賢木厳之御魂天疎向津媛命、稚日女命、於天事代玉◯入彦厳之事代主神、底筒男神、中筒男神、上筒男神  『日本古代の神話と歴史』p89より、

底筒男神、中筒男神、上(表)筒男神などの住吉三神は共通だが、あとの神様がそれぞれ違う。 中でも「日本書紀第1の1書」の神様(向◯男聞襲大歴五御魂速狭謄尊は田舎出の神様。 またこれまでの研究から時代順は <日本書紀第1の1書→古事記→日本書紀本文> と推定されているそうで、そうだとすれば地方の神様から次第に中央の、より普遍的な神様に登場人物ならぬ登場神が変化しているのが判る。 

これは 『九州者が大和朝廷の天下統一の片棒を担ぎ出世したことで、彼等の祭る地方の神様が日本の神様に昇格した』 ことを意味するとか。 ような九州者の1豪族に、後に大和朝廷の水軍を束ねた「阿曇連」がいる。 彼等が本拠地を関西に移してもなお、故郷を懐かしんだことが万葉集に詩われている。p154

「ちはやぶる金の岬を過ぎぬとも、われは忘れじ志賀の皇神」万葉集1230

彼等が祭ったのは志賀島にある小さな志賀海神社だろうと考えられている。 この島は奴国の金印が見つかった島。現在では砂州により陸続きになっている。
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