2006/3/8

<カリブ関係書籍>  お勧めの1冊

『越境するクレオールーマリーズ・コンデ講演集』マリーズ コンデ (著) 岩波書店、2001年出版。カリブのフランス海外県グアドループ出身のコンデは,カリブ海とフランス,アフリカ,アメリカをつなぐ,多言語的なディアスポラ・カリビアン文学を代表する小説家であり、同時に黒人解放運動家でもある。本書は出版社の宣伝によれば「クレオールの新しい可能性について再考を促す刺激的な論集」ということらしいが、私にはむしろその限界を示したものであるように感じられた。

『マルチニック・モナムール―カリブ海クレオールの風にさそわれて』渡辺 真紀子 (著) 三元社 2003年。マルチニックは、ラフカディオ・ハーンやゴーギャンが愛し、エメ・セゼール、F・ファノンを育んだ島であるがその歴史と文化、生活を紹介する本。著者のマルチニックに対する「愛」が感じられる。

『クレオール語は滅ばされた先住民族の語彙の痕跡の上にアフリカ各地の奴隷の言葉と17世紀の標準化される前のフランス西部の方言よりなる』越境する…より p12
『現在マルチニックのベケ(白人農場主)の人口は島の人口(40万)の1%程度で、しかもベケ同士しか結婚しない』マルチニック…より p131

と両書にあるが、これはフランス中・近世史やトッドの歴史人口学に繋がる。フランスの文化的統一は17世紀以降で。しかも北部が「平等主義核家族」に対し、それを取り囲む部分は「直系家族」の地域。その時代の西部からの移住であれば彼らは人種間混淆婚を認めにくい地域ということで上記の記載に一致する。 世界は思わぬところで繋がっていることを感じた。

『カリブ海の音楽;副題―MUSIC COMPANION Music companion』平井 雅 (編集)、長嶺 修 (編集)、冨山房、1995年。なかなかコンパクトにまとめられた良書。著者は述べる。

『NYのサルサ、Parisのズーク、Londonのレゲエ、これらの音楽はいずれも移民達が犯罪、麻薬、貧困が蔓延する日常の中で自分達のアイデンティティを求めて生み出した』p78-81 これについてはサルサについての私の実体験とよく合う。

カリブの音楽とダンスを学ぶ過程で、カリブ地域が文化人類学のフィールドに最適な場所だと感じた。狭い領域に沢山の島があり、しかも支配された宗主国の関係で島毎に異なる言語と人種そして文化。 他方でそれらは距離的にも近く歴史的にも浸透しあった過去をもち同じような植民地支配をも受けた。 特に歴史的に最初に荒々しい重商主義と資本主義、そしてグローバリゼイションの洗礼を受けた地域であることは特筆すべき。

『陶酔する文化;副題―中南米の宗教と社会』中牧 弘允 (編集)。平凡社、1992年初版、
カリブ海沿岸諸国の文化を語る上で忘れてはならない行事の1つがカーニヴァルである。

著者はカーニヴァルが、ブルーゲルの有名な絵画『謝肉祭と四旬節の戦い』↓
http://www.d1.dion.ne.jp/〜norigen/art/brg3.html
に象徴的に示されているように、社会的矛盾をカモフラージュし、神秘化する両議的な象徴様式だとしたが、p125 それが一番よく顕われているのはカリブのカーニヴァルかもしれない。
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2006/3/8

『経済幻想』  お勧めの1冊

エマニュエル トッド (著)、藤原書店、 1999年。家族制度が社会制度に決定的影響を与えると主張する著者には、米英アングロサクソン型個人主義的資本主義と日独型統合的資本主義を、「グローバリズム」の名のもとで一律に論じることへ異論を唱える。その主張には賛否両論があるだろうが以下の点には同感。

『階級闘争と国家意識の共存は一見矛盾するように錯覚されるが、実は補完的に進む』p337

流石に西欧中・近世史家ならではの洞察力。 彼はその例を14世紀の英仏百年戦争とジャックリーの乱、16世紀の宗教改革とドイツ農民戦争。それにフランス革命を挙げている。私としてはさらに15世紀のフス革命も挙げたい。

<フス革命>
チェコの歴史を学ぶと、彼等が歩んできた厳しい民族の歴史がわかる。強大な周辺諸国との関係、特に西のドイツ文化圏。チェコ人自身も、文化とか芸術とか技術とかいうもののための言葉はチェコ語ではなくてドイツ語なのだというふうに近世までは考えていたそうだ。それが18世紀から19世紀にかけてチェコの知識人がチェコ語を復活させるという仕事に取り組むことになり、その一環として歴史学者のフランチシェク・パラツキーという人が1836年に『チェコ民族の歴史』というのを最初ドイツ語!で書き(チェコ語での出版は1848年)そこでフスの時代を大きく取り上げたという。

この18世紀末から1848年頃までのチェコ人の歴史は「民族覚醒期」とか「民族再生期」とか呼ばれている。「再生」というのは、過去に偉大な歴史(カレル4世の時代や、フスの時代)があって、チェコ語やチェコ文化も生き生きしていた時代があり、それをもう一度取り戻すという意味。

我々が今日『フス革命』を学ぶ時、実はその背景に近世以降現代まで綿々と続くチェコの民族主義的運動があるわけで、実は15世紀の歴史を学んでいるようで同時に近世から現代までの歴史も学んでいる。歴史学のこういった二重性というものは、考えれば考える程難しいものだと思った次第。 

…その応用問題で考えると、今中国で起こっている愛国=反日運動はまさに階級闘争に繋がるということか?
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