2006/3/21

「中世都市と暴力」  お勧めの1冊

ニコル・ゴンティエ著、白水社 1999年出版 著書紹介には『喧嘩、殺人、決闘、復讐、強姦、反乱、カーニヴァル……13〜16世紀のヨーロッパ各都市を席巻した様々な暴力現象と治安維持の様相を、豊富な史料を元に活写するユニークな社会史』とある。 

かなり面白い、いや面白いというよりも、あの『オイレンシュピーゲル』や『薔薇の名前』で描かれる背景が何となく判ってくる気になる。オイレンシュピーゲルが親方をコケにするのが、何故同時代人にもてはやされたのか? この場合の背景というのは階級闘争や異端運動について。

『・・・職人たちの兄弟団は騒動の温床となった。 こうした職人層に、異端セクトの平等主義的な教義が広まると、宗教的熱狂に支えられて政治的な暴力も増大した・・・』p45

その他、日々の暴力の場としての「居酒屋、淫売屋、風呂屋」についての記載がある。

『14世紀のアヴィニオンでは66軒、・・・すなわち住民100人につき1軒という具合である。 それにしても1416年のドールでは、住民56人につき1軒という驚くべき数字がみられ・・・居酒屋は人々を高揚させ、空威張りや度を超した行動を招いた』p104 〜105

もしこの数字が事実だとしたら非常に多くの居酒屋が都市にはあったということになる。しかし当時住み込みの職人は基本的には夜、親方の家から外に出れなかったはずだから居酒屋に行けた人は普通の町の住民ということか? このような環境の中で「オイレンシュピーゲルの話し」が人々にもてはやされたとしたら、それが幅広い支持層に支えられ中世末期に農民戦争をはじめとする階級闘争への雰囲気が、このような居酒屋を場として産み出したとしても不思議ではない。

なお、この中でアジールについての記載がただ1行だけだがある。p170これまで、阿部氏の本の中では再三出てくるテーマ。

最後にこの本を読んでいて感じたことの1つに、「中世の漂泊の旅人たち」に対する2つの見方を感じた。  すなわち、阿部謹也氏の「テイル・オイレンシュピィーゲル」に代表されるような、差別される「中世の漂泊の旅人」側からの視点と、今回のように逆に都市の側から、放浪の旅人に対する恐怖や猜疑心を伴った視点。この本は中世における「都市」という特殊な場を通じて、中世の暴力を概論するという、とてもユニークな本と云えそうだ。 
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