2015/1/31

幻想ではなく飛行機で  試行,指向,志向、思考

この数日、ケペルの書籍を紹介する中で何度もToddを引き合いにだした。 そこで此処では、Toddがどのようなことをアラブ社会について「予想」したかを思い出してみたい。

Toddが若い時に書いた、荒削りであるが非常に判り易い本「世界の多様性」から紐解くと、彼はアラブ世界の家族構成を父系性非縦型社会だとして、文化的成長への傾向は下から2番目、上から5番目だとした。因に日本はドイツと同じ双系性縦型社会だとし、最も高い文化的成長への傾向を持つと予想する。
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ただし、彼は別にそれで「優劣」をつけているわけではない。重要なことはそれで「何が予想され、どのような対応が出来るか」という点が重要なのだ。それは昔、彼が家族制度でその民族(集団)の思想や将来の進展が規定されることを「運命論」だとの批判に対し以下のように述べた事が表している。曰く、

『我々が重力に支配されている、ということを認めたとしても、それは運命論ではない。むしろそれを認めることにより我々は空中遊泳が出来るというような幻想を抱かずに済むし、何よりも重力の存在を認めることはそれを制御する術を知ることとなり、飛行機で空を飛べる術を身につけることにもなる』 
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2015/1/31

過去の読書帳から 3  試行,指向,志向、思考

『ジハード』
著者はテロを行ったのは政治的動員力をますます失いつつあるからと述べ、ナショナリズムの時代の否定の時期だとも、さらに人口の爆発的増大したあとその子供たちが成人に達して時期と重なることも指摘する。 ここらの論点はEトッドが『原理主義とは何か』で述べたことと全く一致する。
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この時点で既にフランスの「郊外問題=ブール」が論じられる。ある意味、先日のフランスのテロを予言したとも言える。
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この時点(2007年)で『イスラムの郊外』という本が書かれている、邦訳はあの時点では無かった。今では日本語版出ているだろうか? これはまさしくフランス在住のイスラーム教徒の問題を取り扱ったものである。

著者はイスラーム主義が広まったのは、ナショナリズムの道徳的破綻や経済失政といった問題以上に、イスラム世界で抑圧と権威主義がはびこっていたためであるとする。つまり無宗教的メシア主義=共産主義や民族主義が息絶えたことがモスレムに精神的混乱を引き起こし、その空白を埋めるようにそこには新たなイスラーム主義が広がったとすることに繋がる。
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2015/1/31

今回の事件で明らかになったこと  試行,指向,志向、思考

<シャリーアによる捕虜の処遇>
1) 処刑
2) 奴隷
3) 身代金
4) 捕虜同士の交換
5) 恩恵による無条件の解放

…成る程、今まさしく所謂イスラム国がやっていることはイスラム法に完全に従っているわけだ。



<今回の事件で判ったこと>
1)日本政府にはイスラム国と交渉する能力を現状では持っていないということ。 
2)一方で安倍さんが公的な場で、

    『ISILと戦う周辺各国に総額2億ドル程度支援を約束します』

と云った以上、イスラム国にとっては明確な「敵国」となったということ。

安倍氏がイスラーム諸国支援に積極的に動いたことは正しい。しかし、人質を取られている時点でISILの名前を出すのは余りにも知恵がないし、これまでの日本と中東諸国との歴史を考えれば別の表現があってしかるべきだろう? しかし、お友達内閣の中ではそのような見解を異にする人の意見や知恵は耳に入らないのだろう。

<結論>
いずれにせよ、現段階では日本人がイスラム過激派に誘拐された場合日本政府には邦人救出する能力も情報力もないとおいうこと。それ故、中東に行く日本人はすべて「自己責任」でということか?

ん〜〜ん、異国の地で「子供を抱いた母親」を救出するという「邦人救出プロトコール」との落差の大きいこと。

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…それとも邦人救出の為に軍事力を使えるようにこれからするのか? 

その軍事大国アメリカですら、中東での人質奪還には失敗した。一方で、トルコやフランスは人質救出に成功した。その理由は?
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2015/1/30

『王昭君から文成公主へ』2  お勧めの1冊

『王昭君から文成公主へ』2
著者はザックリとした結論として、北魏の和蕃降嫁は近隣諸国への支配を目的とし、(途中北魏の東西魏への分裂で中断は起こったが)隋唐ではさらに恩寵という意味を持つようになったと。p72

さらに注目した点として著者がこの和蕃降嫁が『「北方的」と云える性格を有した』と言及するところ。今後、どのような議論が展開されるのかは不明だが、内心予想していた議論。このこととかつて宦官制度が北方遊牧民の性格を持つとした議論と関係があるか興味のあるところ。
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第四章冒頭、著者はこれまでの議論を纏めて以下のように述べる。

『五胡十六国の諸国においては政略結婚が行なわれ、それは北魏にも受け継がれたが、北魏の道武帝は前漢の高祖劉邦が匈奴に対して(屈辱的に)行なわされた和蕃降嫁を「良策」であると称し、あたかも漢に発したものであるかのような「読み替え」をおこなった。そこには、部族解放と連動して帝政強化を計る狙いが存在した… さらに隋唐時代になると恩寵的性質が新たに加わった』とする。p93

ところでこの本は繰り返しが多い。初心者にはその方が判りやすいかもしれないが、ひとによっては冗長だと感じる人もいるかもしれない。

吐蕃により長安が占拠された(AD763)こともあったらしい。この時皇帝をたてたがこれは、金城公主の甥であたとか、初めて知った。p114

さらに細かくみていくと、唐代にも安史の乱前後で和蕃降嫁の持つ意味が変わって来ているとする。即ち、後期には和蕃降嫁を否定的にみる(漢代のような)見方が主流となり和蕃降嫁は減少し、唐の南朝化が進むとする。p128
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2015/1/30

過去の読書帳から2  お勧めの1冊

「ジハードとフィトナ」
彼の論理は原理主義を「近代性への過渡期のイデオロギー」と捉える、これはToddのそれと非常に似る。
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トッドはこの点に関して「人口学的移行期の危機である」と述べた。
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これはケペルがより政治思想的な側面に注目したとするなら、トッドは社会的変化に注目したと言えるかもしれない。さらに別の場所でケペルは『共産主義からイスラム主義への転向は容易だった』ともしている。
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これらのことは、今世界を震撼させているテロ組織というのが決して時代遅れの組織によって実行されているものではなく、極めて現代的な組織、しかも共産主義支持基盤からの転向組であったことを示唆する。 このことはイランのホメイニ革命ともよく似るが、ホメイニ革命はそれなりに成功した点で異なる。
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2015/1/29

過去の読書帳から1  お勧めの1冊

また「殺してみたかった」という事件。お手上げだ。
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立て続けに世界に衝撃を与えたイスラーム過激派によるテロ。むかしイスラーム過激派について書かれた本を思い出し。どのような理解をその時点でしていたか確認してみた。

本というのは「ジハード」「ジハードとフィトナ」それに「神の復讐」である。いずれも著者はジル・ケペル、当時仏国立学術研究センター研究部長の席にあった人である。 その後、2009-2010年にかけてはパリ政治学院の教授をされていたというのが現時点での最新情報。時系列としては「神の復讐」が1992年、「ジハードとフィトナ」が2005年、そして「ジハード」が2006年。

彼の当時の論調としては、

『イスラーム国家樹立を目指すイスラーム主義運動は衰退する。逆説的だが、過激なテロに走るのはそのなによりの証拠だとする』 

それから10年、果たして彼の論調は正しかったのだろうか? あるいは現在のテロリズムはその移行期に表れる過激な現象なのか? まず最初に「神の復讐」から。

「神の復讐」
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邦名は『宗教の復讐』となっているが、これではよく判らないだろう。原題にすべきだと思う。

著者は過去に無宗教的メシア主義=共産主義(そして多分、民族主義や見せかけだけの民主主義も含む)が息絶えたことが精神的に大きな混乱を引き起こし、その空白を埋めるようにそこにはイスラーム主義が広がったとする。そしてその運動の主体も段々知識層に広がったとする。

一方、キリスト教社会でも実は同じような事態が起こったが、こちらでは政治システムが比較的Openだったため、イスラーム世界の青年達に見られるような暴力的手段や、一元論的強い不寛容に訴えることが妨げられたとする。
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2015/1/28

ゆで卵を“生卵”に戻す方法  教育

http://news.yahoo.co.jp/pickup/6147457

A device for pulling apart tangled proteins and allowing them to refold



大腸菌でヒトの酵素を大量につくる場合はしばしば合成された蛋白が変性して使い物にならなくなる。この技術はそうした変性蛋白を元の活性のある蛋白に戻すことができる。

蛋白の立体構造は基本、アミノ酸配列で規定されるので原理的には変性しても元に戻るはずだが、蛋白の高次構造を決める非共有結合は多数あるため複雑で極小さい蛋白以外は元に戻らない(ゆで卵が生卵に戻らないと言えば判り易い?)しかしこの技術はそれをクリアーしたみたいだ。
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2015/1/28

『王昭君から文成公主へ』  お勧めの1冊

よい時代になったものだ。 今、『敦煌の民族と東西交流』という本を読んでいるが、本文の他に沢山の画像が載せてあり大変理解が進む。とはいえ紙面に制限があるので詳しく見たい画像も小さすぎて判りにくいところも多い。そんな時、webで検索すれば綺麗に大きく拡大されたものが見つかる。下の例は「胡商遇盗図」というもの本では判らない胡商の顔もここでははっきり拡大され、鼻が高く彫りが深いソクド人の特徴がよく判る。

http://auction.artxun.com/paimai-50092-250455752.shtml




『王昭君から文成公主へ』
「副題:中国古代の国際結婚」藤野月子著、九州大学出版会。2012年初版。
冒頭、著者は和蕃公主の降嫁が時代時代で全く違うことを数字を挙げて議論する。これは判りやすい導入。

具体的に云えば、前漢では6件、後漢・魏晋南北朝はゼロ。一方、魏晋南北朝に重なる五胡十六国時代および北魏時代は合計21件(逆に近隣諸国王女の入嫁は16件で合計37件)隋唐時代は21件(近隣諸国王女の入嫁は1件)。その後、五代十六国および北宋時代は1件。この頻度の違いに何かの意味があると云う。p30

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さらに前漢の6件にも細かく見れば前期と後期には違いがあると。
最初の3件の匈奴への降嫁は漢王朝にとっては屈辱的なもので、出自はそれ故明らかにされていない。後の3件、内2件は匈奴を牽制するための烏孫への降嫁で出自が明らかにされ、さらに臣下として申し出た呼韓邪単于へは宗女ではなく後宮の宮女(王昭君)が降嫁された。p14, 44  彼は子を人質としても差し出した程。p43

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著者はこれまでの和蕃公主の降嫁研究が、降嫁が多数見られた唐代に集中し、こうした時系列での比較がなかったと指摘する。成る程、これは面白い視点だと思う。

大上段から総論的に歴史を語る本には余り興味を憶えないが、こうして読者に数字を提示して進める議論がやはり面白いね!
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2015/1/27

誰が何を指摘して、何を無視したのか  試行,指向,志向、思考

<誰が何を指摘して、何を無視したのか>
日経の記事によれば、2014年1〜11月に中国を訪れた人の数は1億1691万人で、前年同期と比べて1.1%減。13年は前年比で2.5%減、12年も同2.2%減っており、ざっくり計算すれば2011年から5.7%減ということになる。日経の記事はこれが一過性のものではない可能性が高いと述べる。

それともう1つ特徴として「中国を訪れる人」の外国人の比率は2割しかない。大半は香港やマカオからの訪問客で、それらが軒並み減っている点が大きいとも。つまり「同胞」と呼ぶ人びとも足が遠のいていることが重要とする。
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO82283780T20C15A1000000/

この記事の中で、中国社会科学院の世論調査の専門家、劉志明氏は「国家イメージの低下が、中国を訪れる人のここ2年の減少の主要な原因だ」と述べ、具体的には「深刻な環境汚染、貧富の格差の拡大、腐敗、治安の悪さ、食品安全」など挙げたとされる。 


しかし果たしてそうだろうか?

テロとかは別にして、観光客は何も政治腐敗などは気にしない。 また香港、マカオからの観光客が殆どであるとするならなおのこと。彼らは大気汚染や食品汚染は気にしないだろう。何故なら香港やマカオの同胞は同じ空気を吸い、同じ食品を食べているわけで本土よりより安全というわけではない。

私はなにより、為替レートの変動が大きいと思う。元・香港ドルの為替レート推移表は探し出せなかったが、元・USドルレートから

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ドルにペッグする香港ドルと元の変動は推察出来る。2011年段階の1元=0.15ドル段階から、2014年には1元=0.163ドル程度に右肩上がり。ザックリ言って1割程度の割高感となる。 

日本が最近の劇的円安で1ドル80円から120円に推移した結果、前年度比外国人観光客は3割増しになったのとは対照的で比率的にもそんなものかと思う。 つまり、日本が5割の割安感で3割増し。中国が1割程度の割高感で5分減。


さてこれからが問題だが、

劉志明氏がもしその事を敢えて指摘しなかったのだとすれば、それには劉氏自身の意図があったのだろう。逆に、劉氏がそれも含めて指摘したのに日経がそのことを無視したのか? 私にはそのどちらかは判らないが、いずれに場合にせよ

「誰が何を指摘して、何を無視したのか」 が判ればそれぞれの意図が判るというもの。

「数字でナンボ」が座右の銘だが、数字には偽装や嘘もある。数字の裏の意図を知る事は逆説的だが「いつも数字を見ていないと判らない」と思う。

以前これに関連して「統計の面白さ」として話題にしたことがある。これもいつも「複数の数字」を見ていないと判らないこと。
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http://blog.goo.ne.jp/bigsur5252/e/497e6947e54900d9f3978735bc0bef9c
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2015/1/26

『東アジア世界の形成』4  お勧めの1冊

『東アジア世界の形成』4
南北朝時代、両方の王朝に朝貢するものが多かったなかで倭国は南朝だけに朝貢したのは少数派。倭国は大陸における対立が国家の命運に関わることがなく、朝鮮半島における対立に限局されていたから。p228

6章で円仁のことが書かれてあった。ここでも山東の新羅社会に円仁が受け入れられ、彼らの助けで五台山へ、さらには長安への道が開かれたことが記載されていた。何故、新羅はそれだけの力を持ち得たのか? いずれにせよ、円仁の前から山東と日本の間には商人と僧侶の手によって早くから結ばれていたことが明らかになる。p282

またこの時代、僧侶は諸民族の居留地を越えて遠隔地との交流を果す役割があったとか。ここら辺は実に西欧中世の修道士や僧侶の関係とよく似ている。p283
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傲慢なことを云えば、文献中心の歴史書には物足りなさも感じたが、それなりに勉強になった。



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