2017/1/31

『フェルドマン博士の日本経済最新講義』  お勧めの1冊

『フェルドマン博士の日本経済最新講義』
ロバート・アラン・フェルドマン著、文芸春秋、2015年初版。著者は時々テレビにも出演し、非常にわかりやすい発言をされているのを知っているが、書かれた本もその面で非常にわかりやすく書かれている。

比較的新しい本であるが、すでに英国のEU離脱やトランプ大統領により、いくつかの情勢は大きく変わってしまっている部分もある。それほど、いま世界は不確実になったということだろう。内容ついては、全て納得だ、同感だというわけでは勿論ないが、論理はしっかりしていて参考にすべき点が多い。

この中で著者が中国のエネルギー担当者との会話の中で、彼らも現在の石炭依存が環境にストレスをかけていることについての理解は100%正しく、よく理解されていたと述べているくだりがある。これは大気汚染の健康被害についての理解も同様で、しかるべき立場にいる人は非常な危機感を持っていることを身近に経験している。
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しかしこの著者も述べているように、

『政策の中でどうやって解決していくかについては、がんじがらめになって動けない状態のようだ』

と述べているが、その通りだと思う。p37 「緩やかな坂道を転がり落ちるような」という表現は昔オスマントルコの興亡の歴史でも感じたが、問題が明らかであっても解決が難しいことは世の中にたくさんある。
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また日本の社会が外国人にとって住みやすい面として、「宗教差別がない」点を指摘されていた。p52 確かに日本人にとってはこの感覚はわかりにくいことかもしれない。あの米国ですら、驚くようなキリスト教原理主義的人物が普通にいる。

<データーベースとして>
2014年、大企業の1人あたりの平均人件費=709万円。中堅企業=409万円、p71
国家公務員=914万円、地方公務員=884万円。p72
公立小中学校の教員=1077万円! p137 ←これには驚きだ、本当なのだろうか?

著者は果たしてそれだけの能力の違いが存在するのだろうかと疑問を呈している。そしてその理由にある政治家が「公務員は優秀だと、理由に採用試験の倍率が100倍だから」と述べたことをあげ。p72 それは逆だと指摘した。つまりそれだけの人件費の差があるから倍率が100倍に上がるのだと。実に同感。

こうした是正ができない理由に、既得権益層がこうした給与体形を決めているからだと述べる。つまり「労働政策審議会」のメンバーは公益代表=都内の大学教授、研究員、弁護士。労働代表=組合員。使用者代表=経団連の会社の人。p73

なるほど、それではお手盛りの給与になるだろう。
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2017/1/30

『パナマ文書』  お勧めの1冊

『パナマ文書』
渡邊哲也著、徳間書店、2016年初版。

一時期、『パナマ文書』が話題になり、タックスヘイブンを使って租税回避をする企業や富裕層に対して厳しい批判があった。それはそれなりに理解できる面もあるが、実際は金融のグローバル化に対して税制がついていっていないことが全ての原因。多くは完全に合法なのだ。

国家が課税を行う場合は法律に則って行わなければならないという「租税法律主義」が基本にある。日本の場合は憲法84条(課税の要件)に依っている。従ってモラルハザードの面はあるにしても違法ではない。制度がついていってないだけだ。p49

リーマンショックについて巧い説明があった。それは、

『全国の色々な産地からリンゴを集め、箱づめにして出荷した。それを流通業者がサイズごとに分類し小分けにし、袋に入れて売り出した。ところがその中からある農家が禁止された農薬を使っていたリンゴが混じっていたことが分かったとする。本来はその農家産のものだけ回収すればよいが、ランダムに小分けにしたので全部破棄しないといけなくなった』p56

タックスヘイブンを使ったGoogleの租税回避の方法(すでに禁止されている)。
1) 米国Googleの海外事業についてのライセンスをアイルランドに設立した会社に付与する。
2) その会社の管理をバミューダ諸島の管理会社が行う。

米国税制上「登記上の所在地で法人の判定がなされる」。一方、アイルランド税制上、「管理支配基準で法人が判定される」つまり、Googleの海外事業はバミューダ諸島のタダのような課税の対象になる。p70

現在では「反社会的勢力排除条項」により2012年頃から暴力団が銀行口座をもつことはできなくなった。それゆえ、他人名義での口座作成が急増しているとか。p137 これについても対抗策が進められつつある。
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2017/1/29

『10万年の世界経済史』21  お勧めの1冊

『10万年の世界経済史』21
著者は正直に経済学が自然科学に比べ劣っていることを白状する。曰く、

『他の研究分野では、過去400年にわたって知識が着実に蓄積され、古い理論は不適切だったことが証明されている。しかし、古い理論にとってかわった理論は、旧理論を包含するものであり、これによって科学者は、より広範な条件のもとで結果をいっそう正確に予測できるようになった。一方の経済学では、経済の世界を予測する能力は、(マルサス理論により)1800年頃にピークに達してしまったようだ』p277

これが私の言う、「経済学はハードサイエンスではない」ということに関連する。
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ところが、『経済学者の活動の大半が役に立たないにもかかわらず、理論経済学者の給料ですら空前の水準にまで上昇している』と皮肉を語るが、p279 それはこうした経済学者が利益相反関係者だからだ
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著者は所得が伸びても幸福度が上昇しないデーターを示して(←これは日本のデーター!)

『富裕層への課税を増やせば、所得格差は縮小するかもしれないが、社会全体の幸福度が高まることはないだろう』と述べているが、p286

しかし逆に所得格差が広がれば貧困層の幸福度が低下することについては言及しない。「逆必ずしも真ならず」というのは正しいが、だからと言って格差を放置するのは誤った選択だろう。

この本は確かに著者が最後の最後に述べているように、

『世界経済史は、直感に反する因果関係や、驚き、謎に満ちている』p286

確かにこれは当たっていた、ここで述べられることには反発も感じたし直感に反する部分もあった。また著者の考えを十分に理解したとも思えない。しかしこれはこれからの私の問題であり、この本の価値を低めるものではない。

著者の考えに同意するしないにかかわらず、この本は間違いなく「お薦めの1冊」になりそうだ。
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2017/1/28

『10万年の世界経済史』20  お勧めの1冊

iPhone6で動画をQQに貼り付けられる。当然iPhone7でも出来るはずだが… これは今後の課題。

少しずつスマホのアプリを利用中。スマホの使用状況を簡単にチェックできるのはいい。これだと使いすぎもない。ただしミニマム契約(=ライトプラン)でも月5ギガ、2週間でまだ0.1ギガも使用していない。もっと使っても問題ない。

春節は故郷。大晦日は水餃子を食べるのが伝統?

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『10万年の世界経済史』20
表17.1で米国と英国、そしてインドにおける、1時間あたりの糸巻きの交換数を1907年から1998年のほぼ1世紀にかけてのデーターを示す。その結果により労働者の作業量を国際比較できる。それによればインドの作業量は米英の2割程度しか働いていないことを意味すると著者はいう。p255

こうしたデーターはインドの工業化が進まなかった原因に労働者の問題が指摘できるという。p265 そのほか、近代的な生産では大規模な分業が進められたため、成功率=(1-p)^nの関係で示される。ここでのpはエラーの生じる確率でnは分業の段階数。つまりこうした分業ではエラーの頻度のわずかな違いが成功率の大きな差となることをこの式は示している。p268

さて、ここまで読んできてあらためて気がついたことは、日本について。日本の労働者の生産率は著者の試算によれば欧米に比べかなり低い。よく日本人は勤労であると自認しているが、彼のデーターが正しければ、生産性が低いことになり。時間だけかかって生産する能力は低いということになる。なかなか厳しい指摘であるが案外そうかもしれない。

ようやくこの本も最後の章に入ることになるが、ここまで読んで、最後まで十分に理解できたという感覚が一度もつかめていない。どうもよく理解せずになんとか最後までたどり着いたというのが正直なところ。しかし、それでもよいと思っている。これまでの読書歴を思い出しても大抵、はじめて読む著者の本とはそのようなものであった。それでも懲りずに何冊かその著者の本を読んでいるうちに段々、判ってきはじめたような経験がある。

従って20回にわたり読書感を書き連ねてきたが、間違いや誤解が沢山あると思う。しかしそれを記録に残しておくことは将来の役にたつとポジティブに考えている。教科書も1回読んだだけでは理解できないとの同じこと。
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2017/1/28

『10万年の世界経済史』19  お勧めの1冊

『10万年の世界経済史』19
ここでサスーン(=サッスーン)一族の話が出てくる。p193 バクダッド生まれのユダヤ人、デービッド・サスーン、その子供の1人が上海にサッスーンハウスを建てる。
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著者によれば、1800年の世界の格差は4倍程度だったのが、現在では50倍以上に広がっているとか。p199 そして結論から言えば、その原因は効率性の違いだという。p212 そしてそれを論証するのに使うデーターに1910年代の綿織物産業における生産量1単位あたりの労働コストと、労働時間あたりの賃金のデーターを示して議論する。p230 それは当時の綿織物が英国製の機械を用い、しばしば英国人技術者により運営指導されていたために比較が可能であるという利点がある。

同様な産業としてそのほかに鉄道があるらしい、それも同じく機関車が英国製で鉄道の管理職や運転手も英国人であった期間が長く、稼働率の指標に機関車1台あたりの年間走行距離を使えるからだという。p234 その結論として、両産業は貧しい国(インド)も豊かな国(英国)も同じ技術を使い、資本1単位あたりの産出高も同水準だったという結果だった。貧しい国では労働コストが極めて安いために雇用数が大きかったが、生産量は同じで労働コスト面での優位性を失ったとも。p235

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2017/1/27

『10万年の世界経済史』18  お勧めの1冊

『10万年の世界経済史』18
日本や中国と英国の違いの1つに、所得による出生率の違いが英国より小さいことを指摘する。すなわち社会階層の梯子を下って(=没落して)中産階級へ上流階級の態度や文化を広める現象が起こらなかったという論理である。p120

(産業革命が起こった)英国では1200年〜1800年にかけて文化的にもおしらく遺伝的にも、経済的成功者の価値観が社会全体に急速に広まったことに優位性があったと著者は主張する!p124 つまり著者の論理によれば、産業革命を促した力は知識の社会的な増大だというわけだ。p127

第3部でようやく「大いなる分岐」にはいる。つまり現代、グローバル時代は何で象徴されるか? 

<1つは情報の伝達速度>
AD54年から1500年まで、その速度はほぼ1マイル /時間であることを様々な史料から示す。p177 それが、徐々に上昇してくる。

例えばトラファルガー海戦時代(AD1805)には、2.7マイル/時間。
クリミア戦争(AD1854)やセポイの反乱(AD1857)で4マイル/時間。
リンカーンの暗殺(AD1865)や12マイル/時間。
それが突然、アレクサンドル2世の暗殺(AD1881)や日本の美濃地震(AD1891)では119, 246マイル/時間となる。p179

<次に輸送>
汽船の場合、225トンの貨物を大西洋を横切って運ぶのに640トンの石炭を使う。したがって汽船で運ぶのは特別な貨物。だいたい石炭は帆船で運んだ。p181 だからこそ列強は19世紀中葉、石炭補給基地と寄港地を求め日本などに開国を迫ることになった。
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2017/1/26

『10万年の世界経済史』17  お勧めの1冊

『10万年の世界経済史』17
著者はアンソニー・リグレを引用し『産業革命は、生物依存から、非生物依存の生産体制への転換』だという。確かにそれはよく分かる。p102 生物依存の世界では、技術革新がなければ生産性は低下する。そしていずれゼロに近づく。

そのことを説明するのに著者はアイルランドのジャガイモ飢饉を例に挙げるが、私としてはむしろカリブ海周辺でのサトウキビ栽培が典型例だと思う。そこでは数年のサトウキビ栽培後に土地は荒廃してしまい、場合によっては回復不可能の状態にまでなっていた。
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東アジアのような灌漑により施肥をしなくともある程度の栄養分が補給される水田耕作地帯とは違い畑作では急速に地力は低下する。

生物依存の生産体制は基本「再生可能性」の上にある為、ある限界を持つ。それに対し非生物依存はその限界を超えるが、同時に基本「反エコ的」である。

第13章の「産業革命はなぜ中国やインド、日本ではなく英国で起きたのか」という章はなかなか面白い。冒頭、著者は、

『人口の飛躍的増大や、貿易の活発化が偶然重なった為に突然の変化のように見えるだけだ』という。p107

その上で、最初にポメランツの仮説を紹介する。それによれば、「石炭と植民地」だという。p109 しかし著者は「市場経済のインセンティブに対し、人々が従来と異なる反応をした結果」だと述べる。p111 日本の場合、17世紀後半には鎖国にもかかわらず綿織物産業が広く成立し利用可能な水力(石炭に代わるもの)にも恵まれていたにもかかわらず産業革命は起こらなかった、少なくとも英国よりも足どりは遅かった。p112 それについて著者は17世紀半ばの大名への貸付利子率が抵当貸しであるにもかかわらず高く、12〜17%であること、一般人の識字率も低かったことを指摘する。p113 

これは実に面白い指摘である。利子率に注目するものは未来予測と計算力による。幼児は今日の1個のリンゴを明日の2個のリンゴより大切なものとする。ところが大人は今日の1個より明日の2個の方を選択する能力があるということである。

さて、これからどのような説を著者は展開するのか? 楽しみだ。
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2017/1/25

20回も殴ってない、2回しか殴ってない  試行,指向,志向、思考

<20回も殴ってない、2回しか殴ってない>
河村名古屋市長「南京大虐殺」改めて否定 
http://www.sankei.com/west/news/170123/wst1701230088-n1.html

日中歴史共同研究委員会は南京事件について報告書を作成し、これを外務省のweb上に載せている。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/china/rekishi_kk.html
極東裁判軍事法廷では 20万人以上、
判決文では 10万人以上
南京戦犯軍事裁判法廷では、30万人以上

一方日本側では、
20万人、4万人、2万人のそれぞれの説を記載している。
報告書のp271参照
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/china/rekishi_kk.html

<広島の原爆による犠牲者は29万人、14万人ではない>
1945年12月までの広島の原爆による死没者数は約14万人とされる。一方、現在までの広島の原爆死没者名簿によれば死没者数は29万2325人。それを日本人である貴方は水増しと言えるか? 

アルメニア人虐殺でも同じようなことが起こる。
http://blue.ap.teacup.com/applet/salsa2001/4154/trackback
http://blue.ap.teacup.com/applet/salsa2001/2676/trackback
それらが捏造だというなら原爆死没者名簿も捏造になるが?  

いずれにせよ、多数の非戦闘員が犠牲になったのは事実。それを「20回も殴ってない、2回しか殴ってない」という輩は私に言わせれば「恥知らず」


<追加>
ついでに言えば、1941年12月8日、日本軍は開戦と同時にマレーシア、シンガポールに侵攻し日本軍は1ヶ月足らずの間に大量の民間人(華僑)を5千人とも5万人とも殺害した。これもゲリラ掃討という名目の大量虐殺である。こうした事実も犠牲者の数よりもそうした事実があったということを日本人は認識すべき。
http://www.geocities.jp/yu77799/siryoushuu/Singapore/jiten.html
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2017/1/25

『ニュースで学べない日本経済』  お勧めの1冊

『ニュースで学べない日本経済』
『10万年の世界経済史』は難解に書いてあるわけではないが、内容が濃いので結構疲れる。それで休憩に流し読みできる本も安全のために入手していた。結論からいえば、大した内容が書かれているわけではない。こんなことをいうと著者に怒られそうだが。それがこの本。

『ニュースで学べない日本経済』
大前研一著、KADOKAWA、2016年初版。最近出版されたばかしの本で、パラパラと捲って読んだ分にはとても読みやすそうで、安全牌として入手しておいた。『10万年の世界経済史』は下巻の後半分くらいまで進んだが、少し疲れてきたのでこちらに乗り換え読み出した。

案の定、難しい本ではない。流し読みできる内容。ただし2〜3つメモに残すべき事として。
1) 日本の年金は、最終勤務年度の給料に比べて、約35%程度。
これはなかなか分かり易い説明だ。これは先進国では一番低く、2040年頃にはこれが30%程度まで落ちる。p003

2)ロシア人が観光でよく行く国=エジプト、トルコ、タイ。何故ならこれらの国はロシア人に対しビザを要求しない。例えばトルコには年間400万人のロシア人が観光で行く。p078

このことが何故、重要な情報かといえば、シリアのISを攻撃し始めたロシアがテロの標的になるとすると、こうした国で実行される可能性が高い。エジプト、トルコは遠いがタイは近く、日本人観光客も多いということ。

3)法人税率は20%を切らないと(現在32.11%)効果ない。いま30%を切るような動きがあるが何の効果も期待できないとp120 いずれにせよ日本は法人税が50%の時にでも活発に投資していた、下げれば投資するというのは逆というのが著者の意見。「投資したくなるような仕組みを作る」のが本筋。全く同感だ。むしろ著者はどうせ儲けた企業しかいまは税金を払わなくていいから、法人税は90%にすべきだという。そうすれば、国に税金を持って行かれるくらいなら投資や給料に出そうという気になるという。p124

アメリカのグローバル企業の多くはM&Aを通じて本社を他の税率の低い国に移し40%の法人税を逃れているが、現在これを取り締まる法律がないとか。その理由にこうした企業から政治献金がなされているとか。p127

現在日本の住宅の13.5%が空き家。p146
日本の個人資産は1700兆円。
国の借金は1300兆円。p181

著者はイタリアを見習えという、イタリア人は国家を信頼していない。実際国家経済は破綻しているが、地方が都市国家モデルを実現しているとかとか。p226

最後に著者は言う、『死ぬときは貯金ゼロでいい』。p263 もちろんそのつもりだ!
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2017/1/24

G4 fever  教育

ちっと最近ブルーな話題が多かったので、ここで気分転換。久々にある程度内容がわかる理系な話。ただし、専門外なので内容が間違っている可能性もあり。


最近、核酸のヌクレオチド配列=一次構造だけでなく、2次構造がタンパクなどに認識されていることを実証した仕事が多数出て来始めている。驚くべきことではないが、これまでそうした2次構造を十分に解析する手段があまりなかったので新たなブームとなりつつある。この論文ではRNAのG構造の例。


<背景>
TDP-43はHuman ALS-linked proteinで、神経突起へのmRNAのselective transportに関与するタンパク質と考えられていてALS(筋萎縮性側索硬化症)の原因遺伝子の1つと考えられている。

ALS(筋萎縮性側索硬化症)
ALSでは病域から回収されたmRNAの6~10%は酸化していることが報告されている。そのほかのALS-linked proteinにSOD1 (antioxidant enzyme Cu2+/Zn2+ superoxide dismutase)がある。SOD1G93A mutantをもつtransgenic miceの脊髄からのmRNAは30%(野生型の4%)が酸化している。このマウスでは、RNAの酸化はALSの神経変成の初期に一般的に起こる現象。症状の出る前に脊髄で検出され60-70日でピークになり90日(症状が出る時期)に減少しはじめることが知られている。

<結果>
TDP-43のnative dimerを使いSELEXでN30から特定の配列持つRNAを同定したところG4構造持つことが判明:G4構造がtarget配列か? (図1)

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G-quadruplexとは何かについては以下参照↓
https://ja.wikipedia.org/wiki/G-quadruplex

この配列をレポーターmRNAにつけてビオコアの系で解析したところ、確かに相互作用していることが明らかになった。(図2上)さらにこれを神経細胞で発現させるとmRNAが神経突起まで輸送されタンパクが発現させることを実証した。(図2下)

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ALS-linked proteinとして知られているTDP-43の変異型タンパクはG4構造持つmRNAとの相互作用が弱いことをビオコアの系で証明した。(図3)

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変異型タンパクはG4構造持つmRNAを神経突起まで輸送しレポーターの発現能力が低い。(図6、図7)

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以上は日本人の論文だが、最近のNature, Scienceにはさらに三次構造の研究成果が沢山でている。そこで群を抜いているのが中国。この分野ではいつの間にか世界最先端を走っている。

あと、20年後にはこの分野でのノーベル賞を続々と中国が取るかもしれない。
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