2017/11/11

『世界に分裂と対立を撒き散らす経済の罠』12  お勧めの1冊

給与所得者の保険料および扶養控除申告書が今年からweb提出になった。早速入力してpdfをダウンロード、保険会社の証明書を添付して早々に提出。最初の提出者になったみたいだ。

ちょっとわかりにくい入力システムの部分(入力済みの画面が途中で確認できず、最後のpdfでのみ確認可能)があるが、そこは今後改良すればよい。慣れれば簡単なものになるだろう。 ついでに保険会社の証明書も将来はwebベースでの認証システムを取り入れればよい。中途半端なクラウド化は不経済



『世界に分裂と対立を撒き散らす経済の罠』12
著者スティグリッツは「極度の不平等は経済の安定性だけでなく、社会と政治の安定性を損なう」と繰り返し主張する。

ここで「パルマ比率」という言葉を初めて知る。これは国民総所得における上位10%の取り分と、下位40%の取り分の比率らしい。p351 そして、これが1以下だと良しとする。この比率を満足しているのは北欧諸国だとも。そして、この比率は現在では適切な指標としてコンセンサスを得ているらしい。p354 

webで調べてみるとユニセフのデーターによれば、北欧が0.7〜0.8で合格。日本は1.02(2014年)で、もう少し。 ちなみに米国は1.64。韓国は実は非常に低く0.83なのは意外だった。これはどうしたことか? 下のURLの図10.1
https://www.unicef.or.jp/library/pdf/labo_rc14j.pdf

これまでも何度か書いたように、著者は資本主義社会において「不平等は必然ではない」と主張する。これは同じデーターを出しながら、「資本主義の本質である」と考えるトマ・ピケティーとは異なる(ただし、そうだとピケティが述べているわけではないが文脈から考えればそうなるということだ)。そしてこうした結果を導いたのはスティグリッツ氏によれば「政治」であるとする。そうならば、当然「政治でこれは変えられる」という結論となる。p361

80年代以降、こうした状態が徐々に酷くなった背景の1つにソ連の崩壊によりライバルがいなくなったことを指摘する。p362 

実はこのことは、漠然として私自身が感じていたことでもある。私はこのことを「緊張感がなくなった」と表現した。 素人でも感じるものだ。
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2017/11/10

『世界に分裂と対立を撒き散らす経済の罠』11  お勧めの1冊

『世界に分裂と対立を撒き散らす経済の罠』11
税金の問題について著者は以下のように語る。 

富の獲得には2つの方法がある、1つは国家経済のパイを大きくすること、もう1つは自分の取り分を増やすこと。p236 最上部の富裕層は後者をとっているという。例えばピケティーとサエズが明らかにしたように、上位1%は所得の20%を懐に入れているが、税は20%しか払っていない。つまり税の累進性はゼロ。しかも彼らが所有している富は40%にのぼる。p247 こうした1980年代以降のアメリカの状況は後者、つまり「レントシーキング」が成功している証拠を示していると述べる。p252

では、どうしてそれを可能にしているか? 著者はそれが米国ではキャピタルゲインの実現分しか税金がかかっていない(つまり利益が実現されない限り課税されない)。 さらに一部は富を海外に、特にケイマン諸島などに移し課税から逃れている。いや別にそんなところに移さなくてもアップルのようにアイルランドに移すだけで、利益を申告する国を自由に選べるだけで十分なのだ。p239 p256  彼らはその利益を国内に持ち帰る(本土送金)までは所得として申告する必要はない。そうしてこうした不公平な税制は『選挙資金を引き出すために、もしくは選挙資金のお返しとして制定されたもの』だと指摘する。p249 

『企業は付随する人権も持っているとした“シティズンズ・ユナイテェッド判決”は企業に道義上の責任感を授けてはくれず… 商品を売るときはどこにでも出没し、利益を申告するときはあらゆる場所から姿を消す』という例えには笑ってしまった。p254 そしてその例にアップルを挙げる。

これまでアングロ・サクソン系の国で格差が、特に富裕層への巨額の資産の移動(産出ではない)が見られていると観察してきたが、著者も米国とイギリスで税制により不平等拡大が図られていると主張する。p256

最後に1つだけ歴史的事実を述べれば、アメリカの成長率が大きかったのは1980年以降ではなく、最高税率が最も高かった時代(=生産の時代)で投機の利益に対する税率が低ければ経済は生産ではなく、賭け=投機が増えるのは当然だとする。p251

スティグリッツ教授は明瞭に述べる。

『不平等の真のコストを背負わされるのは、アメリカの民主主義と社会だ』と。p264 そしての例としてデトロイト市の破綻を取り上げる。インフラと公共サービスに対する過少投資を続け、p268その代わりにデリバティブに手を出した。p272 その結果、貧困層とアフリカ系アメリカ人の共同体をラストベルトに取り残したと。p268 
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2017/11/9

『世界に分裂と対立を撒き散らす経済の罠』10  お勧めの1冊

<辛い現実>
効果がなければ辞める勇気が必要。教育は「自己満足」で終わってはならない。

自習用にweb siteをつくって10年、今年もアンケートをとって見た。いつも自習用に見るという学生はゼロ。あれだけスマホが生活の一部になり、中には中毒になっている学生もいるのに勉強に使う学生はいない。

良かれと思い、積極的にスマホを勉強に使ってもらおうと自習用サイトをつくっては見たものの、効果はなし。このサイトが有効だったと言う学生の試験の得点は役に立たなかったという学生より平均点で5点ほど高いが偏差をみると誤差範囲?  

残念だがこうした評価は必要。教育のための「試み」は自己満足で終わっては意味がない。効果がなければ即、やめるべき。

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注)「見たことがない」としている学生が「役に立った」「立たなかった」と申告している例があるが、数字は操作せずそのままの形で出した。




『世界に分裂と対立を撒き散らす経済の罠』10
リーマンショック後、400万人以上の人が自宅を失ったと著者はいう。さらに今後(2012年段階)350万人が差し押さえの対象となっていて、さらに含み損を抱える人は1350万人とか。p223 著者はこれが現下の法制度下で、「強者が弱者から搾取できる“法の支配”」が出来上がっているのが理由だとする。p222

驚いた、これだけの人たちが犠牲になっていることは知らなかった。現時点でどれだけの人が自宅をうしなったのだろうか? 

次の章ではアメリカの子供を取り巻く環境が語られる。子供の貧困率がアメリカ(19.9%)よりも高い先進国はルーマニアだけだという。そしてその多くが黒人(38%)とヒスパニック(30%)に集中しているとも。p228

これは先に挙げたグレート・ギャツビー曲線(The Great Gatsby Curve)で見事に示されている。
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そしてその原因に著者は、キャピタルゲイン税が引き下げられたため富の集中が起こったことによるとしている。p228

もしそうなら、もともとキャピタルゲイン税が「一律」20%で(一律というのは事実上の無税に近いユーアンスがあるらしい)、しかも相続税のない中国のような国で何が起こるかは明白だろう。
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2017/11/8

『世界に分裂と対立を撒き散らす経済の罠』9  お勧めの1冊

『世界に分裂と対立を撒き散らす経済の罠』9
著者は繰り返し「トリクルダウン理論」について、米国では過去30年でこの理論が機能しないことが歴史的データーとして証明されていると言う。p189 そして、消費に振り向ける所得の割合は、非富裕層の方が高いため、トリクルアップの方が可能性が高いと繰り返し述べる。p191

さらに過去30年の間に機会均等は破壊されているとも言う。p206 それはあのGreat Gatsby Curveを例に挙げれば十分だろう。
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そしてその原因の1つに貧困家庭の子供が高等教育へのアクセスを難しくしている現実をデーターで示す。曰く、

『学習到達度でみると、2001年生まれの富裕層と貧困層の子供の格差は25年前の子供より30〜40%拡大していた』p207

ここで著者は教育の無料化を提言している。個人的な考えとしてはこれには否定的だ、およそ大学教育にふさわしくない学力の学生を沢山見てきたものからすれば、すべての高校卒業生が大学に行くのは無駄、4年間のコストとその間に彼らが社会に提供できる労働力を天秤にかければもったいないというのが結論だ。

そのほか、著者は教育バウチャー制度の非効率をあげ、貧困層の学校に直接投資した方が効果は大きいはずだと述べている。実に同感だ、これについては以前、一方で「競争」させておいて、同時に「教育の機会均等」というのは自己矛盾にならないか? と問うている。
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そのほか、著者は略奪的教育機関に対して支援を打ち切る政策が必要だと述べている。ここでいる略奪的教育機関とは利益第一主義の学校のことで、その目安として、1)卒業生の35%以上が学生ローン債務を返済している。2)平均的卒業生の推定返済額が卒業生の年収の12%を超えていない。3)学生ローンの返済額が可処分所得の30%を超えていない。この3つの基準のどれは1つを合格しなければならないとする。 実に素晴らしい政策だと言える。つまり、この意味するところは卒業生が然るべき就職先があり、かつ十分な収入を得るだけの能力を提供できないような大学は政府の支援は不要だということだ。
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2017/11/7

『北京レポート』  お勧めの1冊

最近では中国でも生の野菜を普通に食べる。冷たいビールや氷水も普通になった。まだなのは「生卵」くらいかな?

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『北京レポート』
副題:腐食する中国経済、大越匡洋著、日本経済新聞社、2016年初版。

どこかで読んだことのある話ばかりだと感じた。二次出版ではないか? 日経関連のどこかに出したものを、本の形にまとめたのではないだろうか? もしそうなら二次出版ときちんと書くべきだろう。 それとも、単にどこにでも出ているような内容を本に集めたということか? いずれにしても少し失望した。

それはともかく、副題から予想されるような「中国崩壊論」の1つというわけでは必ずしもない。しかし表題はそのように感じさせている。その方が、本が売れるからだろう。世の中はこの10年、明日にでも中国経済が崩壊するかのようなことをいう自称経済評論家が多い、最初は北京オリンピック2008年の後で、次は上海万博後だった。次は何時なのだろう?
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勿論、中国の経済に問題がないわけではない、否、大変な問題を抱えているのは素人の目でも判る。今、どの大都市に行っても夜電気のついていない鬼城を目にする。誰の目にも明らかな不動産バブル。その背景に官僚の腐敗、格差拡大、環境汚染がある。
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しかしどうだろう、バブルがこの10年以上にわたり囁かれ続けているが、いまだに大都市部の不動産価格は上昇している。なぜバブル崩壊しないのだろう?

理由の1つは、海外投資が制約されている中、投資の対象となりうるものが「不動産」と「株」しかないこと。キャビタルゲインに対する課税が弱く(一律20%)、相続税がない中国では不動産は信頼できる富の蓄積場でもある。また固定資産税がないので不動産を所有してもお金がかからない。

さらに、あまり議論されないが、中国ではまだ核家族化が進んでおらず、今後も潜在的には住宅が必要とされているということだろう。統計によれば、核家族化は2050年まで進行し、世帯数は現在の1.5倍以上に増える。2011年の2.4億世帯から2050年には3.8億世帯に、つまり1億4千万世帯増加する。これは2010年の日本の総世帯5195万の2.7倍に相当する。
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そうしたことを考慮すれば、日本で見られたバブル崩壊をそのまま当てはめて考えない方がよいかもしれない。第一、中国は政治経済体制が異なる国。

<データーべースとして>
官僚の月収は国家主席でも1万1400元、日本円では20万円程度。そんなはずはない灰色収入があるはずというのは中学生でも判る。それで腐敗防止は難しい。

地票=都市開発を進める権利:農民が使用権をもつ土地から集合住宅に移り住めば帳簿上農地が増える。その増えた面積分だけ「地票」として不動産開発できる。p124

「3つの1億人」1、農民工の都市定着。2、内陸部での都市化。3、老朽住宅の再開発でそれぞれ1億人の移住を進める。p128
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2017/11/6

『長春真人西遊記』3  お勧めの1冊

今日トランプ大統領が来日した。私は安倍首相もトランプ大統領も嫌いだが、2人には頑張ってうまく切り盛りしてもらいたいと思っている。日本にとって現状では米国以外の選択肢はないし、日米同盟は国防の根幹という点は揺るぎないからだ。特に今後の東アジアの安全保障には米国との同盟を抜きには語れない。


今日ようやく、1月くらいかけてスティグリッツ氏の本、『世界に分裂と対立を撒き散らす経済の罠』を読み上げた。邦題は長ったらしいので、やはり原題の『The Great Divide』の方がよい。

それはともかく、最後のところが一番勉強になった。それは生産性向上には大きなリスクがあるということを今まで知らなかったのが、この本でよく理解できたからだ。教授はそれを1920年代の大恐慌時代に起こった事実として説明する。

すなわち、当時は労働者の2割が農場で働いていた、そうしなければ必要量の食料が生産できなかったからだ。ところがそこに生産性の劇的向上、農業革命が起こった。機械化が進み、種子や肥料、農業技術が改善された。現在ではわずか2%の労働人口でそれまでの食料を生産できるようになった。そうすると何が起こるか? まず農業から大量の失業者が生まれる。彼ら農業労働者を急には首を切るわけにはいかないので過剰生産が起こる、つまり食料価格の低下が起こり、ますます農業従事者の収入を低下させる。収入の低下は需要の低下を引き起こし結果としてデフレを起こす。この状況は現代、つまり製造業で生産性の向上が起こる状況とよく似ている。否、それどころか、現代ではこれにグローバル化で海外へのアウトソーシングが輪をかけて事態がさらに劇的に変化する。大恐慌時代のことを理解することは重要だ。


『長春真人西遊記』3
先に円仁の『入唐求法巡礼行記』ほどではない、など書き込んだが、読み進めるうちにとんでもない、非常に興味深い内容をもつものであることが判ってきた。そして長春真人の人柄も、近代人的な非常に合理的な人物であることが判ってきた。それとこの本には多くの漢詩が載っている。こちらにそれを理解する能力がないので飛ばして読んでいるが、漢詩の素養がある人にはこれも魅力だろう。

チンギスハンのこの西征には際してチャガタイ汗は48の橋をかけたとか。その橋は車を並べて通りうる程広さをもっていたことなどが書き込まれている。p338 あるいはシムダリアやアムダリアには浮橋 (船橋)がかけられてたことなど、p341 p342 当時サマルカンドには遠く中国から漢人の職人がいて城内に雑居していたとか、インドから孔雀や象までもが送られてきていた等。p343 歴史学者や考古学者にはたまらないだろう。

それだけではない、天文学上の重要なイベント、5月1日の日蝕も記載されていて、それがケルレン川での観察結果と、金山での時間と蝕のレベル、さらにサマルカンドでの観察結果(時間と蝕のレベル)を突き合わせ地理学的考察を行うなど長春真人は非常に近代的感覚を備えていたことが判る。p344

またここでチンギスハンからの有名な問答、すなわち長生きの薬があるかとの問いに対して、
『衛生の道はあるも、長生の薬はない』と直言するところなどの逸話も語られる。p348

さらには当時のサマルカンドではほとんど穀物は栽培されているが、蕎麦と大豆は栽培されていないなどの記録もある。p353
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2017/11/5

『世界に分裂と対立を撒き散らす経済の罠』8  お勧めの1冊

近所の病院で高齢者用肺炎球菌ワクチン(ニューモ NO12932, Exp.2019.02.09)を接種する。希望者のみで代金4,000円也(自費)アネフラキシーに対する注意のため、接種後病院で15分以上待機。何も反応なしで退院。これから先、5年間は同じワクチンは打てない。90種類ほどある肺炎球菌のうち、病気を起こしやすい23種の混合ワクチンとのこと。


『世界に分裂と対立を撒き散らす経済の罠』8
著者は、『不平等は政治の産物であってマクロ経済力学の産物ではない』と主張する。またグローバル化により生じたという言説も否定する。その証拠として、著者は同じグローバル化の下にありながら同時期、所得格差の大幅な改善に成功した国があることを挙げる。p164 

ましてピケティーが言うようにこの不平等が市場資本主義の本性だという主張p174 も否定する。そうではなく、政治の問題なのだと。p176、p169

それについて、「21世紀の民主主義」と題する『プロジェクト・シンジケート』という2014年出版の文章で議論している。p167  この中で批判の対象にしているのはピケティーの「考え」だが、
彼、ピケティーの結果については完全に同意している。違いはそれが市場資本主義のせいなのか政治の所為なのかの1点である。

ピケティーは急激に富が上位の富裕層に集まったことを膨大な資料の解析から明らかにしたが、標準的な経済理論では資産・産出高比率の大幅な上昇は「資本利益率」の下落と賃金の上昇が伴うが、現状はその逆。資本利益率は下落せず、賃金はむしろ下落している。p168

著者はこの一番わかりやすい解釈数字上の富の増加が、生産資本の増加を伴っていないという説明であり、論より証拠に、富の大部分は不動産価値の上昇、バブルからきたわけで、この事実はデーターを説明できるとする。p168

それならば、この不公平は、キャピタルゲイン税と相続税の引き上げ、教育投資などで解決可能だとする。p169  さらに、ピケティーの提唱するグローバル富裕税は政治的に実現される見込みはなく、
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むしろ覚悟さえ決めれば、国内的に税制の改善で不平等は解決できるとする。p172

畢竟、著者は、

『世界が直面している問題は、21世紀の資本の問題ではなく、21世紀の民主主義の問題』 
だとする。p170

いかにもケインジアン的だと思うがどうだろう?
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2017/11/5

『長春真人西遊記』2  お勧めの1冊

以前、「東大生のノートは美しい」という話が真しやかに囁かれていた。しかし、果たしてノートの美しさ、整理のよさは学力に関連するものだろうか? 以前から疑問に感じていた。
http://www.bunshun.co.jp/toudai_note/rule/index.html

それは、そうでない例を山のようにみてきたからだ。東大生というわけではないが、優秀な院生や研究者が必ずしもノートが綺麗というわけではない、否、むしろゴチャゴチャしてよく分からないノートをとる人が多かったが彼らは間違いなく優秀だった。そこで、思いついて担当している学生のノートを資料にして調べてみることにした。毎回ノートチェックを行っているので材料は十分揃っている。
http://blue.ap.teacup.com/applet/salsa2001/4981/trackback

横軸に3回の定期試験の成績の積算値を100点満点でとり、横軸に主観的ではあるが、ノートの綺麗さをとり相関を見たのが下の図。見てわかるように成績とノートの美しさの間に相関は認められなかった。先の「東大生のノートは美しい」というもの、本当に統計的なデーターがあるのか、あるという話を聞いたことがないので、案外眉唾かもしれない。

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*判定不可というのはその時点で欠席やサボりでノートを提出していない学生がいたことによる。


『長春真人西遊記』2
円仁の『入唐求法巡礼行記』ほどではないが、それでもかなり詳しい紀行文である。ただ、残念なことに添付の地図はあるが、旅の最初のところで出てくる川や山がどこに当たるのかさっぱり判らない。もしかするとまだ同定されてないのかもしれない。後半に少し対応がつきはじめたが漠然とした位置関係しか判らないのは残念だ。この本が出された時点ではもしかするとまだ不明だったのかもしれないが、内容は比較的詳しい記述なので今では、地理学や考古学研究で場所が特定されているのかもしれない。

オリダ(行宮)では麦粉は天山山脈の反対側から2,000里の道をラクダに積んで運んでくるとか、それだけに80斤で50両するとか。p329 確か中国の1里は500メートルではなかったか? だとしても1,000キロもある。麦粉は草原のシルクロードではまさに贅沢品だった。途中、一行は囚われた金の章宗の二妃と涙の対面をしたとか。p330

ところでこの長春真人という人物はかなり合理的な考えをもつ人物だったことが逸話からわかる。例えば山の妖怪(精)の話がでても黙して答えなかったとか、p332 有名なところでは、チンギスハンに不老不死の薬について聞かれると、『長寿の薬はないが養生の薬はある』とか。こうしたところに合理性を感じるがどうだろう?
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2017/11/4

『長春真人西遊記』  お勧めの1冊

いまやスマホは学生さんの生活の一部。板書も過去問も写メで済ます。書いた方が記憶に残るはずだが、そんなことをいう「おじさん」は時代遅れ? 

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『長春真人西遊記』
耶律楚材の「西遊録」にはがっかりしたが、長春真人の「西遊記」は数ページ読んだだけで噂に違わぬ内容が期待できる。最初のところでゴビ砂漠を超えてオトチギン(チンギスハンの末弟)の陣営に行くまでの行程は添付の地図と対応がつかず不満が残ったが、陣営を出ていよいよ西行する段階で地図との対応ができ、かつ描写が細かくなった。例えばこういう文章がある。

『(ケルレン)川の南岸に沿って西に進んだが、時に野生のニンニクをとって食した…』 
これなどは、珍しいことだから記載があるわけで、そうした植生があったことがわかる。また、

『5月1日正午に日食があり』 の記載からは正確にこれが何時の出来事なのか現在でも解析可能な情報だ。p327  あるいは、

『両岸には丈の高い柳が多かった。蒙古人はこの柳を取って天幕をつくるのに用いている』
この文章も情報一杯だ♪

さらにその地の蒙古人が、『黍一石五斗を献じた』のに対し、長春真人らが「棗一斗をお返しに贈った」ところ蒙古人は大喜びし『このものは初めてです』とお礼を言ったなど。これで、黍がこの地でも採れること、また棗はこの地では得られないことなどが判る。

まさに求めていた書であることを確信した。
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2017/11/3

『世界ノンフィクション全集4』 耶律楚材「西遊録」2  お勧めの1冊

大学基準協会がだす、「じゅあ」という10ページ程度のパンフレットがある。
http://www.juaa.or.jp
その中の1記事に豊田工業大学の紹介記事があった。この大学はトヨタの社会貢献活動の一環として企業の技術者のみ受け入れる大学として1981年に設立され、その後変遷をへて大学院や高校新卒者も受け入れ今日に至るらしい。

この大学1年生は全寮制で、上級生1名を入れた8人1ユニットで高校卒も社会人も一緒に暮らし、各ユニットは共同スペースがあり自炊なので、文字通り「同じ釜の飯」を食いながら勉学するらしい。なかなか面白い取り組みだと思う。こんな大学があるとは知らなんだ。
http://www.toyota-ti.ac.jp/newcampus/news/2017/170929.html



『世界ノンフィクション全集4』 耶律楚材「西遊録」2
紹介では「中央アジアの情勢についても貴重な史料」ということだったが、実に簡単なものでとても参考になるようなものではない。かつて、円仁の『入唐求法巡礼行記』 を読んだが、比べるべくもない。正直な話、ちょっと失望した。
http://blue.ap.teacup.com/salsa2001/3323.html

それと、訳者があまりに「べらんめい調」で耶律楚材が語るように訳してあるので、これもいただけない。もし普通に訳されていたらまた印象も変わったのでは? それと後半は耶律楚材が道教に対して悪態をつく内容であまり読んできて気持ちのいいものではない。特に彼がモンゴルの宮廷では長春真人と親交を深めていたということなので、それが長春真人の死後、手のひらを返すように悪態をつくのはどうかと思う。陳舜臣氏はそのことをフィクションで両者が内心では心を通わせながらも同じ目的のため、表面上は敵対関係になったとするが、それはやはり作り話だろう。

最後に長春真人の「西遊記」の訳者である、岩村忍氏が解説を書いている。それによると耶律楚材の「西遊録」は旅行記というより道教攻撃の書に近いとかかれている。同感だ。

また、紀行としては「西遊記」の方が格段に優れているとも。まだ長春真人の「西遊記」は読んでいないが、そうならば是非読まねばならない。
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